LPGC WEB通信  Vol.17  2015.08.10発行 

IHSアジアLPGセミナー 講演紹介 part.1

 本年の「IHSアジアLPGセミナー」は速報で紹介したように23名の講演者を招き、
6月16日~17日にシンガポールで開催されました。今月号と来月号の2回に分けて講演
者のプロフィールと講演要旨を紹介いたします。 

 「グローバル経済とエネルギー・マーケット」

【プロフィール】シニア・ダイレクター兼アジア・パシフィック・チーフ・エコノミスト。IHSに入るまでは
エコノミスト・グループの東南アジア担当ダイレクターであった。その前はUBSで国際公共政策とグループ・
エコノミック・リサーチのダイレクター兼シニアエコノミスト、アジア・パシフィックのカントリー・リスク
担当イグゼキュティブ・ダイレクターを歴任した。日本政府のための貿易・投資問題に助言していた経験もも
つ。100を超える論文を執筆した。ロンドンスクールエコノミックスで学士、ロンドン大学で修士・博士号
を得ている。

【講演要旨】
1.世界の経済発展は米国、EUと日本の復調に後押しされているが、新興国のマーケット
  は減速している。
2.中国はハードランディングのダウンサイド・リスクを伴う明らかに経済減速の中にいる。
3.日本は2014の緩やかな景気後退から回復基調にあるが、上昇機運を高齢化社会と国
  の高債務が抑止している。
4.インドの成長は徐々に改善され、インドのGDP成長はBRICSの牽引する。
5.東南アジアは世界最速の発展地域であり工業投資を強力に誘致している。


 原油 転換点


【プロフィール】シンガポールが本拠のIHSエナジーのVP。石油精製と石油化学における多岐に渡る25年の
経験がある。以前はエクソン・モービル・シンガポールで11年勤務。その前にはインドのヒンダスタン石
油で勤務した。石油化学の学士号とMBAを取得している。

【講演要旨】
1.OPECによる原油の生産維持の決定でOPECへの要求は入り組んだ計算でー米国産
  原油への要求ーに取り換えられる。
2.この変化で、価格に最も敏感な米国の原油生産は中期の世界のバランスと価格に影響を
  与える。米国玉がスイングとなる。
3.石油の需要アップが需給バランスを早い段階で締める。
4.予測ではブレントがバレル$65から2019年までに$95まで上がる。
5.長期の原油高はベース下落に合う限界供給を引き出さざるを得ない。


 世界のLPGマーケット展望


【プロフィール】IHS天然ガス液(NGL)グループ上席リサーチダイレクター。ヒューストン・オフィス
を本拠とし2006年パーヴィン&ガーツに入社。IHSは2011年にパーヴィン&ガーツを買収した。独
自の分野はビジネス分析・戦略、市場研究、予測、査定、法的支援である。主としてNGLとライトナフサの
分野で就業しているが、石油化学、代替燃料、バイオ燃料でも顕著な経験をもつ。世界的マルティ・クライエ
ント研究を部分執筆し、ワークショップの講師、セミナーを開催、トレーニングコースを開設する。パーヴィ
ン&ガーツに入社前は、ユニオン・カーバイドとダウ・ケミカルで14年、オーエンズ・コーニング・ファイ
バーグラスで2年働いた。プロセス・エンジニアリング、テクニカル・セールス、R&D、金融と戦略計画に
在席した。学部レベルで教えている。1986年ノートルダム大学よりケミカル・エンジニアリング学士。チ
ャールストン大学よりMBA。ウェスト・ヴァージニア大学よりケミカル・エンジニアリング博士号を受ける。
公認プロフェッショナル・エンジニアでガス処理協会と米国化学工業会のメンバーである。

【講演要旨】
1.原油の低価格は米国LPG生産ペースを下げるが、輸出が低調になるわけではない。米
  国は依然世界一のLPG輸出国である。
2.中南米は米国LPGの仕向地である。
3.ヨーロッパはLPGの競合が激しいマーケットで、ロシアの供給がLPGのフローの鍵
  となる。
4.中東のLPG輸出は東へ向かうことになろう。
5.アジアのマーケットは世界のLPG生産の伸びしろをほとんど吸収する必要がある。



 変わるグローバルLPGダイナミックスとカタールの位置づけ


【プロフィール】2009年入社、企画・運営担当ダイレクターを経て、現在はビジネス分析担当ダイレクターで
ある。タスウィークの前は米国バレロ・エナジーで15年プロセス・エンジニアリング、プロセス安全等を担当し
た。世界最大のLPG輸出国の1企業であるタスウィークで世界のマーケットの注視を継続し信頼できる競合価格
での出荷に尽力する。ヒューストン大学で化学工学、ワートンスクールでMBAを取得している。

【講演要旨】
1.カタールのLPG概要
  ・ノースフィールド900兆cfのガス埋蔵量・最大の輸出国77百万トン/年
  ・原油生産73万b/dコンデンセート70万b/d
  ・ラスラファン出荷3500隻/年
2.LPG供給増加とアジアへの影響
   まず石化の消費を牽引しアジアの家庭業務用・輸送の需要を引き上げる。
3.裁定経済の比較
   LPGは裁定取引の開始・終了に接続するようになり、長期輸送と天候が供給に影響
   する。
4.出荷ダイナミックス
   短期の激しい価格乱高下は隻数限度と石化経済が原因



 日本のLPGマーケット概観

【プロフィール】2002年三菱商事入社し石油原料部でナフサのトレーディングを担当。2009年よりアストモスへ
出向し、供給・トレーディング部。2014年シンガポール支店に配属。

【講演要旨】
1.日本のLPG需給
  ・需要 16百万トン弱で推移(2013年以降) 
  ・供給 12百万トン弱 米国玉が13.7%を占める 
2.エネルギー基本計画
  ・LPGの地位向上
  ・LPGの施策 
3.傾向と概要
  ・産業用、都市ガス用、石化が伸びる。
  ・競合エネルギーとの競争
4.アストモスの挑戦
   中東ソースは日本平均85%に対し、アストモス50% 



 米国のNGL輸出とタルガの出荷設備



【プロフィール】1996年ワレン石油の西部地区輸送貨車のロジ管理でキャリアを開始した。ワレン石油とディ
ネギでマーケティングに従事する間、西部でブタンとより重い製品に重点を置く製油所のサービスに直接係わ
った。タルガでは国内プロパン販売を担当し、ノースダコタ・ウィリストンガス盆のバッドランドでガス処理
と粗LNGを支援する。

【講演要旨】
1.タルガの概要
  ・処理能力8Bcf/d
  ・ガス処理プラント39
  ・パイプライン25,000マイル
  ・NGL生産293MBbls/d(2015)
  ・原油と製品出荷3ターミナル(貯蔵2.5MMBbls)
  ・ガス処理施設17 
  ・分留キャパ570+MBbls/d
  ・LPG出荷キャパ7.5MMBbls/月
2.米国のシェール革命:休火山か死火山か
  ・リグ数は2014年の4Qから15の1Qと激減しエタンは550MBbls廃棄す
   るもリグの効率は向上
  ・水平堀は最高生産化 
  ・多層生産化
3.米国のNGL・LPG生産:抑制か衰退か
  ・フィールド生産は伸展
  ・製油所は減産、プロパンを自家燃消費
  ・リグは53%ダウンだがプロパンは7%アップ
4.ガルフ出荷:数字が語るのは
  ・ガレナパークLPG出荷キャパ7MMBbls/月は、潜在キャパ8割以下の実行値



 日本のLPGマーケット 価格と概観

【プロフィール】化学工学修士。石油産業に18年の経験を有す。原油、石油製品、LPGのマーケットの
供給事業・トレーディング・市場分析と価格評価に従事している。

【講演要旨】
1.日本はアジア最大のLPG輸入国だが、ここ数年は消費量の伸びが停滞気味
2.日本マーケットを俯瞰し、LPGトレードの実際と価格メカニズムを検証し、アジア他
  国と比べ日本の需要の変化を見る

3.2004年の米国からの輸入1%が2014年には12%に急増
4.日本は9割がターム、1割がスポット
5.Rimアジアインデックスは 日本2時点CFR+中国2時点CFR÷4 で算出している

 世界LPG会場輸送とVLGCマーケット


【プロフィール】イタリアのペルージャ大学で歴史・文学の学士号取得。王立ノルウェー海軍大学卒。ウェス
ティンホテルの受付を経て、石油ブローカーとしてキャリアを始めた。ジョアキム・グリーク、ノルセイ、N
SO、ファーンレー各社の要職を歴任し1997年ローレンツェン・ステムコ社に入社。

【講演要旨】
1.LPG完全冷凍船の現況 VLGC高フレートは大型、中型、小型船までもタイトマー
  ケットに巻き込む。LPG海上油送は2014年74.5百万トンから2018年の9
  4百万トンへ8%増加する。
2.米国LPG輸出 ダイナミックなトレーディング・マーケットが現れ米国の輸出が
  「西」とスエズ以東の玉繰りを制御する。裁定取引・トレーディングが海上輸送で非効
  率をつくりだす。 


 アジアのオートガスマーケット概観


【プロフィール】ワシントンDCを拠点とする。2007年PFCエナジーの国際ガスグループに加わった。
2013年6月、IHSがPFCエナジーを買収してからはIHSのNGLリサーチ・コンサルティング・グ
ループに所属する。アジア向け伸びるNGL供給、需要と価格分析を担っている。コンサルティング・プロジ
ェクトとIHS長期NGL需給分析にも貢献している。PFCエナジーの前には北京で4年間コンサルティン
グ会社に勤務。ブラウン大学より東アジア学士、タフト大学フレッチャー校より法律・外交学修士を取得した。
修士論文は中国エネルギー需要拡大への経済的・地政学的影響。

【講演要旨】
1.アジアは900万トンのオートガス用LPGを消費する。韓国とタイでこの2/3の需要が
  ある。
2.マーケットの展望は国によって大きく変わるが、アートガスを他の燃料より優先して使
  わせる政府の政策に依存している。
3.ほとんどの国はガソリン・ディーゼルが9割以上であるが、ゆっくりとではあるが状況
  は変わるだろう。中国など一部の国ではCNGとして天然ガスがガソリン・ディーゼル
  の人気の代替燃料となっている。
4.概してわずかな成長が見込めるが、政策支援が強いタイの主導がある。韓国は最大のオ
  ートガスマーケットだが、2009年から需要が下降している。



 10人目のマイケル・ケリー(WLPGA常務)から23人目のデブニル・チョウドリー氏
(IHS 北米NGL ダイレクター)までの講演概要につきましては、次回の9月号に掲載
いたします。

(調査研究部/岩田稔)