LPGC WEB通信  Vol.21  2015.12.10発行 

第28回世界LPGフォーラム報告 Part.2

 本年の世界LPG協会(WLPGA)主催「世界LPGフォーラム」は9月28日~10
月1日、シンガポールのサンテック国際会議・展示場で開催されました。今月号は9月30
日フォーラムの講演内容を中心に報告します。


 基調講演

B・アショク(インド石油公社CEO インド)
「エクセプショナル・フュエルとしてのLPG: 広がる地平」

●インドは世界4位のLPG消費国である。2014年は17.6百万トンであった。
●家庭まで容器別配達に特徴がある。5Kgと14.2Kgが家庭用、19Kgと47.5Kgが産業用で
 ある。
●PaHalという補助金制度は世界最大の家庭向け補助金振込みプログラムとしてギネスに認
 定された。
●今後7年で需要は3000万トンに達しよう。
●2018年には輸入キャパを14.15百万トンまで向上させる。
●インドのエクセプショナル・フュエルLPG普及促進は新興国のモデルとして最適である。


 ラウンドテーブル:広がる地平
ウォルト・ハート(IHS 米国) 
「LPG需要展望」


●米国プロパン輸出は需要と相反して堅い成長を示す。ブタンも同様である。
●アジアと中東の需要の伸びが顕著である。
●地域別需要はセクターが異なる。インド、東南アジアは家庭業務用、中東は石化用。
●家庭業務用の成長は堅調(2.9%)だが、石化用の伸びは最速(6.2%)である。
●北東アジアの石化用需要は、2010年―2014年で15%から20%へと伸長。



 セッション1:アップストリームを解読する
ブレット・J・シュナイダー(BPシンガポール・シンガポール) 
「アップストリームを解読する」


●米国シェールは形勢を逆転させた。
●米国プロパン価格はNG価格に収斂し、サウジCPは原油に連動して下落。
●世界のプロパンの価格差とプロピレンとの価格乖離は縮まる。
●VLGC フリート齢は10.4歳、オーダーブック 78隻(引き渡しフリートの44%)、
 2015 15隻 2016 48隻 2017 15隻
●遠距離化はVLGC需要に追い風
●シッピング 2015と2016は年20%以上のVLGCフリート増加、LPG価格 第2四半期油価
 低迷と比べると維持、生産 米国生産増は6%、輸出 米国LPGは2017末には4千万ト
 ンに届く。



へレン・リャン(広東油気商会・中国)
「今日の中国LPGマーケット」

●2014年生産8%の伸びで26.6百万トン、輸入は7.1百万トン。
●輸入内訳 米国2013 3%から2014 11%へ急進、価格的には優位性なし。
●セクター別消費 家庭用66.6%、石化用5.0%、オートガス2.7%。
●PDH 10プロジェクト 2015規模5,990千トン、プロパン需要7,188千トン。
●従来の市場 輸入玉・精製玉の価格差が縮まり、輸入玉のシェアが拡大した。
●中国では油価急落以降、LPGがLNGより価格の下げが早かった。LPGは価格に敏感
 なユーザーにはLNGより「安く」クリーンな燃料である。


ジィウォン・チュン(OPIS・シンガポール)
「WLPGA2015」


●OPISは1980より卸価格コンサルタントの先駆けとなり、25年間NGL価格のベンチマーク
 となる。
●モントベルビュー 14分留装置で1.6百万b/dの名目能力となる。
●各社輸出能力 エンタープライズ16百万b/m(2015) タルガ5.5-6百万b/m(2015)
 フィリップス664.4百万b/m(2016) スノコ・パートナーズ(2015)
 ウィリアムズ ブロードウォーク(2016) オニオク(1Q2017) オクシ(by2017)
●パナマ運河工事の遅れで2014年のフレートは20年間で最高となり、依然上昇機運にある。
●輸出合戦が始まった。
 2013米国83%アップ、中東18% アルジェリア8% 西アフリカ20% ダウン。
●エタン生産量、2015上半期11百万トンに達する。マーカス・フック、エンタープライズ、
 BASF、トタール。テキサスに10,000bb/hrの輸出プロジェクトあり。欧州が主に輸出先
 となる。極東アジアにはエタンクラッカーがなくインドへ向かう。リライアンスとバラー
 ト石油が輸入する。



アレクセー・マルコフ(シブール・ロシア) 
「ロシアLPGマーケットとアジア太平洋州への輸出潜在力」

●ロシアの生産は世界の4.5%(12.3百万トン)、シブールはシェア4.2%(5.1百万トン)。
●ロシアの石化需要は世界の4%(3.1百万トン)、シブールはシェア50%(1.5百万トン)。
●ロシアのオートガス需要は世界の2.6%(3.9百万トン)、シブールはシェア15%(0.6百
 万トン)。
●ロシアの輸出見込み8.7百万トン(2018)、シブールは最大のエクスポーター。
●輸出先は今のところ欧州だが、北東アジアはよい代替地になりえる(期待している)。
●シブールは国内に26生産拠点、25千人の従業員、9百万トンの生産量、1400の大口顧客
 をもつ。



ガリー・イレソン(CEFA・オーストリア)
「オーストリアの視点」


●ガス資源 需要は東海岸、未開発ガス井存在、2020に向けてLNG絡みで急伸しよう。
●生産3百万トンはオフショアガス井から。輸出1.8百万トンは日本、中国、韓国向け、輸入
 0.4百万トンは中東から。
●オートガスの急減をはじめ、需要は停滞している。
●イクシス&ブラウズ開発による生産増分で2017年以降輸出量が倍増となる。


ケヴィン・キム(SKガス・韓国)
「韓国からアップストリームを解読する」

●SKガスの取扱量は7百万トン(国内3.6百万トン、トレーディング3.4百万トン)。
●輸入障壁の除去 米国輸出インフラの整備(40百万トン+輸出)とパナマ運河拡張(12百
 万トンLPG通航)が鍵を握る。
●2014下半期の原油急落がLPG価格に影響、歴史的安値と無季節性を現出。
●セクター別需要と価格敏感需要が牽引するも、NG発電転換需要が実現化。
●CP独占の牙城が米国LPGによって崩れる。



 セッション 2a:配送変革
カーク・スミス(UCバークレー 米国)
「世界の貧窮者のLPGと健康」


●バイオマスを燃料とする調理は、たばこ700本/時間分の煙を出す。
●インドでは25-50%、世界では14-30%の有害粒子が家庭用燃料から出てくる。
●煙害による死者は年間400万人以上である。
●世界の6割は電気とガスを使用するが、女性は昔のバイオガスに戻りたくない。
●LPGは価格と入手し難さが障害となっている。
●貧困家庭こそ煙害の被害が大きい。
●すべてのバイオマス燃料をLPGと置換するのも一考の価値あり。



ブレィズ・エジャ(オリックスエナジーズ スイス)
「サブサハラのLPGアクセス革新」

●アフリカの成長は、エネルギー需要を牽引する。
●アフリカでは、60万人/年が家庭の煙害で死亡する。
●LPGを入手しやすくすることが問題解決である。


ラクシュミ・ナラヤナン(IOC インド)
「直接利益移転によるLPG補助の効果的活用」


●インドは40年前から家庭用LPGに補助金を支出してきた。
●LPGは補助金付管理価格で販売しているが、世帯数が増えるにつれ補助金が増加してい
 る。補助金の「漏れ」を防ぐためのメカニズムを導入する。
●フェーズ1-3の作業提案 
●フェーズ1:シリンダーのキャッピング(AADHAAR2012年9月スタート)
●フェーズ2:直接利益移転(2015年4月完全実施)
●フェーズ3:対象世帯に限り補助(ギブ・イット・アップ・プログラム進行中)


イルト・ぺトゥルス・ギンティング(プルタミナ インドネシア)
「インドネシアのモデル 灯油からLPG転換計画その後」

 
●57百万の灯油消費者をLPG消費者に変えた。
●何千という職種を創った。
●87%は3キロシリンダーで販売、2014年の補助金はUS$34億(400億円)。
●上流から下流までモニターする統合情報システムが開発された。
●シリンダーの差別化が進行中である。
●政府はLPG補助を削減させる行程表を作るが、直接補助・閉鎖的配送は困難な問題だ。



バリス・サンリ(トルコ政府 トルコ)
「より良い生活のためのLPGとエネルギー貧困緩和:学校LPGプロジェクト」


●トルコのオートガスマーケットは健全である。2014全体需要は370万トン。
●バルクとシリンダーは減退が大きい。
●LPGの影響が大きい部門を見つけようとした。学校の暖房をLPGで賄う。
●学校LPG利害関係者との話し合い。文部省、技師、販売業者、衛生行政、開発省
●経済的動機が存在した。
●パイロットプロジェクトを始めて、結果を追跡した。
●災害時の避難所として学校を活用した日本の例を紹介。


(調査研究部/岩田稔)