LPGC WEB通信  Vol.44  2017.11.10発行 

東北・近畿地方液化石油ガス懇談会の概要

 10月2日に東北地方懇談会(青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県)、及
び10月13日に近畿地方懇談会(福井県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和
歌山県)を開催しましたので、概要を報告します。
 本年度は今回を含めこれまで6場所で開催しましたが、毎回、消費者委員/事業者委員/
行政間で、LPガス料金透明化・取引適正化に係る国の措置への取り組みや進捗等を中心に
活発な意見交換が行われ、学識経験者委員に総括していただいています。
 行政による立入検査も進みつつあり、回を重ねる毎に当該状況の進展が感じられます。
 中国(10月31日 広島)、四国(11月16日 高知)、九州(11月24日 福岡)の
各懇談会開催概要については、引き続き次号以降で報告してまいります。

液化石油ガス懇談会の概要
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  平成29年度は全国を9ヵ所に区分し開催する。
(3)参加者 消費者委員…………(消費者団体の幹部等)
       事業者委員…………(都道府県LPガス協会の幹部等)
       学識経験者委員……(知見を有する大学教授等)
       自治体委員…………(都道府県、市町村等)
       経済産業省…………(経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部)
       オブザーバー等……(業界関係者等)
       報道関係


議事次第
(1)開会挨拶
    (東北地方懇談会)東北経済産業局 資源エネルギー環境部     瀧川 利美 部長
    (近畿地方懇談会)近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 丸山 力 電源開発調整官
(2)資源エネルギー庁からの説明
 「LPガスが消費者から選択されるエネルギーとなるために」
 ~LPガス料金の透明化に向けた液石法省令等の改正、取引適正化ガイドラインの制定~
    (東北地方懇談会)資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 目黒 浩 課長補佐
    (近畿地方懇談会)資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課   谷 浩 企画官

(3)産業保安監督部からの説明
   (東北地方懇談会)「管内の液化石油ガス一般消費者等事故について」
            関東東北産業保安監督部 東北支部 保安課 菅原 達也 課長補佐
   (近畿地方懇談会)「ガスを安全に使用するために」
       中部近畿産業保安監督部 近畿支部 保安課 伊藤 信一 液化石油ガス監督官

(4)自治体からの説明
  消費者からの相談事例及び対応について
                                各府県消費生活担当部署
  料金透明化・取引適正化に関する立入検査・帳簿検査実施状況及び今後の予定について
                                各府県LPガス保安担当部署

(5)懇談(消費者委員からのプレゼンテーション及び各委員との意見交換)
 東北地方懇談会
  本年度の懇談会では、消費者委員に対し、毎回次の6項目について事前に質問・意見を求
  めています。
   ①エネルギー自由化時代にLPガスを選択してもらうためには?
   ②料金透明化・取引適正化への国の取り組みで実感した変化は?
   ③LPガス料金への疑問・不満、販売店に期待することは?
   ④LPガスの契約・取引についての疑問・不満、販売店に期待することは?
   ⑤消費者団体で行っている啓蒙活動は?
   ⑥その他自由意見
  今般の東北地方懇談会では、これに対し各委員より約60件の回答があり、各県の事業者
  委員、行政との間で活発な意見交換が行われました。
  消費者の回答内容は、①から④のそれぞれの観点では、どれも事業者による更なるPR、
  情報提供の必要性を強く訴える意見が大勢を占めました。特に②の国の取り組みに対する
  実感はまだなく、しかるべき機関による監視が必要との意見、また③についても料金が高
  いのか安いのか良く分からないのでより多く情報がほしいとの要望です。
  ⑤については、LPガス研修会や防災学習会の開催や、諸パンフレットの配布等にて、事
  業者や自治体との連携により実施しているとの内容でした。
  尚、情報提供に関連して、弊センターが発行し消費者団体に配布した「LPガスのある暮
  らし」をご覧になった消費者委員より、「本日の質問に対する答えが全部これに書いてあ
  り納得した」との有難い評価もいただき、今後も更に便利でわかり易いLPガス情報を発
  信していく所存です。

  資源エネルギー庁目黒課長補佐からは、料金の高い安いについて国は一切コメントしな
  い。事業者はその中身を説明し、消費者は納得して契約するというのが基本スタンスであ
  り、書面を交付の上、基本料金・従量料金、設備経費についてきちんと説明するという
  「透明化」を進めることが国は望ましいと考えている、との提言がありました。
  更に、事業者に対しホームページの積極活用を促しました。
  また、今般の措置は作って終わりではなく、既にその遵守状況について足を使ってチェッ
  クするフェーズに入っている。自治体による保安立入検査では、取引適正化の観点を含め
  て検査し、経済産業局は管轄事業者に、経済産業省は行政管区を跨ぐ事業者に対しそれぞ
  れ同様に取引に関する立入検査を開始している、との状況が明らかにされました。
  各自治体からの立入検査状況では、山形県において価格に算定根拠を示していない事業者
  に対し、改善を指導したとの事例が報告されています。

  事業者委員からは、消費者委員の質問・意見に回答する中で、防災協定の締結状況、防災
  訓練の実施状況、災害対応バルク及び中核充填所整備等の災害対応状況、また料金透明
  化・取引適正化への取り組み状況については、各県事業者団体主催による自治体とタイ
  アップした説明会等における対事業者啓蒙状況、更には県との見守り協定による一人暮ら
  し高齢者安否確認、子供への火育・食育活動、等々の取り組み状況について説明がありま
  した。加えて、ホームページでの料金公表促進については、(不当な)勧誘にも繋がり注意
  は必要であるが、相互にコミュニケーションを十分取った上で納得して(公開する情報を)
  利用いただくことが事業者の責任であること、また地震・原発の問題を抱えた地域では、
  当初はLPガスの優位性が叫ばれたが、時間が経ち再度オール電化の傾向になっており、
  エネルギーのベストミックスを訴えながら、あらためてLPガスの利点PRを強化してい
  くとの表明がありました。

 近畿地方懇談会
  近畿地方懇談会でも、消費者委員より約60件と多くの質問・意見が寄せられました。
  料金透明化・取引適正化については、全く変化を感じられないとの意見もありましたが、
  事業者より詳しい説明があった事例や、自宅のLPガス料金の領収書には7月から基本料
  金が記載された例が紹介され、事業者の意識向上が感じられるとのコメントもありまし
  た。
  産業保安監督部による、液石法における設備の所有者範囲(ガスメーター出口で消費者/
  事業者を区分)についての図解説明を受け、消費者として保安責任区分の認識を深めたと
  の意見、14条書面の所持の有無についての認識不足は消費者側の責任と反省等の意見もあ
  りました。消費者意識に関する諸課題ではありますが、何れも、事業者のより一層のPR
  も必要であるとの示唆でもあります。また電気や都市ガスの消費者懇談会は盛んで勉強の
  機会が多いが、LPガス業界では状況が異なるとの意見もあり、更なる情報提供と意見交
  換の機会が求められています。
  また、生協連の調べで、都市ガスの自由化は近畿で認知度が89%と高く、関心が高まり
  正に家庭用エネルギーを選ぶ時代の到来といえるが、LPガスは都市ガスと比べ料金が高
  くばらつきも大きいとの他地区懇談会と同様の報告がなされ、LPガスに対し、まずは料
  金透明化を進め取引適正化と保安の確保の徹底を求めました。

  事業者委員からは、使用量・料金内訳・供給設備点検結果等が明記された検針票である
  A4判の「納品書」を協会が作成し会員に紹介している事例(奈良県LPガス協会)や説明
  会の実施等、料金透明化への事業者団体としての取り組み状況が紹介されました。
  また、消費者委員からの数多くのFRP容器普及への期待に未だ応えられていない実状につ
  いて、谷企画官及び事業者委員より、保安規制上の問題等を弊センターによる実証事業に
  より確認した上で、推進していきたいとの表明と共に、事業者委員からは、LPガスは災
  害対応力や消費者宅を訪問できる等の優位性があり、消費者に対する勉強会や火育等を積
  極的に開催し、更なるPRに努める意向を伝えました。

  谷企画官からは、電力・都市ガス自由化の動きと同時にLPガスは改革を進めないと立ち
  遅れる。都市ガス自由化は、料金よりもサービスでの差別化による競争となっている。ガ
  スシステム改革の審議会において、都市ガスは自由化でLPガスの様にブラックボックス
  の中で価格が上がることにならぬ様にと言われており、LPガスは悪者イメージを払拭す
  る必要がある。
  また、LPガスの標準的な料金メニューの公表においては、戸建向けのみならず賃貸型集
  合住宅向けも掲載が必要であるし、またどちらも従量料金が異なるのは合理性が無く、国
  の立入検査でも消費機器等の初期コストが含まれていないか確認している。これらについ
  ては、「Q&A」ではなく「ガイドライン」の改訂で明確にすることを検討している、と
  LPガスの料金透明化・取引適正化に対し厳しい指摘がなされました。

(6)総括コメント(学識経験者委員)
 東北地方懇談会       東北大学大学院 経済学研究科 吉田 浩 教授(今回初就任)
 ①料金透明化は、取引における信頼の基本であり、新しい法律やガイドラインができたの
  で、事業者、消費者、行政の三者それぞれの立場での運用の確保が、スタートの1年間と
  して重要である。
 ②消費者事故は数年来減少傾向にある中で、本年度は増加しており、緊張感をもってこれ以
  上事故を起こさないよう消費者に対するアドバイスしていくことが必要である。
 ③透明性の確保を進めることで、良い品質の燃料がうまく使われることになると思われ、こ
  れからはエネルギーを選んでいくにあたり、「契約に強い消費者」となることが必要。
 ④懇談の中で、経済学で言う「消費者主権」を強く感じた。生保業界がかつて契約トラブル
  で信頼を失ったことで、今では生保会社々員が契約者一人ひとりを訪問したり、契約内容
  を年1回郵送することが当然となったが、LPガス業界も信頼とビジネスの基盤をもう一
  度固めることが求められる。
 ⑤販売事業者の高齢化、大手と小手の二極化、事業者数の減少による遠隔地配送の困難化等
  の懸念事項があり、安定供給についても価格面と同様、注視していく必要がある。

  東北のエネルギーを担う重要な柱の一つとして、LPガスが皆の力で良い形で受け入れら
  れ、事業が続くことを期待している。そのために必要な知見があれば精一杯協力してい
  く。

 近畿地方懇談会                  甲南大学法科大学院 土佐 和生 教授
  LPガス料金が定まっていない、明示されていない、と話したのが6-7年前。やっと本
  番となり、仏は作られたがどう魂をいれていくかは、(事業者・消費者・行政の)三者の努
  力による。
  事業者は、経営サイドはガイドライン等を理解されているが、従業員は如何。書面の交付
  プラス説明がガイドラインの要請であるが、実際に行うのは従業員であり、料金改定作業
  の段階でもシステム変更や周知書類の作成で、フォントの種類や大きさ、色の指定等は担
  当者が行う。この実務担当の方々に対し、経営サイドは是非ガイドラインの趣旨・精神を
  伝えてほしい。
  また、標準料金メニューの作成については特に中・小規模のLPガス企業においては経営
  の近現代化が必須であり、コスト管理に基づく戦略的な価格設定を行っていくために、役
  所や消費者から言われるからではなく、わが身の問題として是非取り組んでほしい。

  次に自治体には、(立入検査等を実施する液石法担当部署である)保安セクションと消費生
  活セクションの交流や議論を行う回路を作ってほしい。保安セクションより、(立入検査
  で)14条書面の交付の点検を行なっているとの報告があったが、交付して捺印があるか
  の点検・指導ではなく、ガイドラインは説明まで求めているのだから、一歩及んで説明の
  有無について検査すべきである。この確認には、保安と消費生活両セクションが時には帯
  同する等、相互共有が必要であり、ガイドラインの有効化方法を探求してほしい。

  消費者団体には、(LPガスだけではなく)エネルギー全般の小売りに関する勉強会を勧め
  る。電力も都市ガスも国からガイドラインが出ているが、より分厚く厳しいものとなって
  おり参考となる。消費者団体のネットワークをフル活用し、契約法対応を含めたエネル
  ギー消費生活に関する勉強会等により、選ぶ段階で全てを同等に見ることで、LPガス取
  引に関する物の見方、光の当て方の工夫を提案する。

  社会や経済の大変革が想定される中、料金透明化・取引適正化というような話にかかず
  らっている場合ではない。スマート(賢い)社会に向け、事業者はその先にある便利さや消
  費者利益に資する産業事業の提供と存続、また消費者は自ら選ぶという行為を通じ、一生
  懸命な事業者を応援する、このようなことがシビアに問われる段階であり、それぞれの活
  躍を祈念する。


開催風景・東北地方液化石油ガス懇談会

東北経済産業局資源エネルギー環境部瀧川部長による開会挨拶。左へ順に東北大学大学院吉田教授、
資源エネルギー庁目黒課長補佐、右は関東東北産業保安監督部東北支部保安課菅原課長補佐


挨拶及び基調説明する資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 目黒課長補佐

消費者相談事例や立入検査等の状況を報告する自治体委員

地域の実状を伝え事業者や行政に要望・質問する消費者委員

消費者委員からの質問・意見に対し取り組み状況を踏まえ真摯に回答する事業者委員

 
学識経験者委員初就任の吉田教授。LPガス業界に対し期待を込めた総括コメントをいただきました。

開催風景・近畿地方液化石油ガス懇談会 

 
 近畿経済産業局資源エネルギー環境部丸山電源開発調整官による開会挨拶。
右へ順に甲南大学法科大学院土佐教授、資源エネルギー庁谷企画官、
左は中部近畿産業保安監督部近畿支部保安課伊藤監督官


 
 挨拶及び基調説明する資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷企画官

 
 消費者相談事例や立入検査等の状況を報告する自治体委員

 
料金透明化等への事業者と行政の功労を称えると共に更なる徹底を要望する消費者委員 

 
消費者委員からの質問・意見に対し真摯な取組状況を説明し理解を求める事業者委員 

 
スタートラインの料金透明化に「魂を!」と各委員に求める甲南大学法科大学院 土佐教授 

(広報室/野村 晃久)