LPGC WEB通信  Vol.50  2018.05.10発行 

LPガス国際セミナー2018 開催報告(後編)

3月6日(火)~7日(水)にわたり東京/大手町の日経ホールを会場に開催しましたLPガス国
際セミナー2018の二日目の講演内容をご紹介します。

 (会場の様子)


<2日目(3月7日)の講演>>

8.講演:GEアビエーション社(韓国)
    アドバンスド・リード・エンジニア ビョン・ヨル・ペク氏
    テーマ「LPGを燃料とする船舶の導入」
 
【略歴】
 同社は航空及びマリン・ガスタービンの最大のメーカーである。彼の所属するチームは海
軍/商船向けのマリン・ガスタービンを担当している。同社はシングルサイクル・マリン・ガ
スタービン及び船舶用CGESと名付けたコンバインドサイクル・マリン・ガスタービンを供給
している。
 ペク氏は韓国海洋大学の海洋エンジニアリング学士であり、韓国海洋大学のグリーンシッ
プ・エンジニアリング修士課程に参加している。同社での経験は、シップエンジニアを4年、
造船所のマシナリーデザイン及び新設販売を8年、新造船スーパーバイザーを4年、現在のマ
リン・ガスタービンのエンジニアとして4年である。

【講演内容】
●GEの海事関係は、発電用のガスタービンや軽油ジェネレーター等を提供するビジネスであ
 る。
●GEの船舶用ガスタービンは全て航空用エンジンを活用しており、同じ工場で製造するの
 で、同じ技術、同じ品質、同じ信頼性を維持している。
●利用しているのは推力を得るためのCombined Gas turbine, Electric and Steam(COGES)
 システムである。これはLNG推力を統合した技術である
●COGESはメインテナンスが容易で、エンジン交換が24時間で可能である。
●GEのガスタービンを活用したLPG燃料船舶として、韓国のフェリーの開発状況とVLGC、小
 型船舶、コンテナ船の事例が紹介された。
●LNG燃料船舶とLPG燃料船舶の比較がなされ、LPG燃料船舶の方が既存の施設が使えるので
 コストに優れていることが紹介された。


9.講演:三菱造船(日本)
    マリンエンジニアリングセンター開発技監・環境技術担当部長 雲石隆司氏
    テーマ「LPG燃料適用による環境負荷低減VLGC」
 
【略歴】
 1917年に設立された三菱重工が、造船事業を2018年1月1日に分社して同社を設立した。三
菱重工の100%子会社である。
 雲石氏は松江工業高等専門学校を卒業後、三菱重工に就職。船舶設計と造船に43年間の経
験があり、その内25年間を三菱重工長崎造船所の機械設備装置設計部門、18年間を三菱重工
本社の造船/開発部門で過ごした。特に様々なマリン推進システムの設計に造詣がある。ま
た、VLCC/LPGC/コンテナ船/クルーズ船/LNGC等にプロジェクトマネージャーとして携わっ
てきた。

【講演内容】
●二酸化炭素排出量の22%は輸送で排出され、そのうち外航船が2.2%(800百万トン)を占
 め、無視できない影響を持つ。このまま放置すると2050年には1,200~2,800百万トン増
 えると予測される。
●IMO規制は、Nox、二酸化炭素、硫黄に関して施行される。
●対応策としては、燃料を低硫黄の石油系燃料に変える、燃料を変えずにスクラバーを取り付
 ける、エンジンをガスエンジンに替え燃料をガスにする、という3つの方法がある。それぞ
 れのメリットとデメリットが、装置、エンジンタイプ、使用燃料の価格動向、供給面におい
 て説明された。
●三菱造船が建造するLPG燃料のVLGC(84,000m3)について、燃料効率、船体構造、燃料供
 給システム、ベンチレーションシステム等に加え、LPG燃料VLGCの利点が説明された。

10.講演:ローフス・ガス社 (バングラデシュ)
      ダイレクター兼CEO モハメド・サイドゥル・イスラム氏
      テーマ「バングラデシュでのLPG革命」

【略歴】
 ローフス(LAUGFS)ホールディングスは1995年に設立されたスリランカ最大の様々な事業
を展開するコングロマリットの一つである。LAUGFSホールディングスは現在20の産業に事
業を拡張しており、スリランカの電力、エネルギー、小売販売、産業販売、サービス、レ
ジャー、ロジスティクスの分野でリーダー且つ開拓者として強い存在感を示している。バング
ラデシュにあるLAUGFS GAS社はLAUGFS Holdingが100%保有している子会社である。
イスラム氏はバングラデシュのLPガス産業に17年以上も携わってきた。同氏は、豪州の
Wesfarmers Energy社とマレーシアのElpiji Malysia社の合弁会社であるWesfarmers
Kleenheat社に2000年6月に入社した。2015年にLAUGFS GAS社が同事業を取得した際に、
ダイレクター兼CEOに就任した。同氏は多くの国でバングラデシュLPG産業と関連するトピッ
クスについて講演を行ってきた。同氏はバングラデシュのLPG開発と多様化におけるキーパー
ソンの一人である。同氏は様々な技術組織、民間組織に従事しており、また数多くのエネル
ギー関連記事を寄稿している。同氏はバングラデシュ工科大学をメカニカルエンジニアとして
卒業し、ダッカ大学及びシンガポール国立大学のMBAを取得している。同氏は4ヵ国語を話す
ことができる。

【講演内容】
●バングラデシュは面積147千km2、人口は169百万人、GDP成長率7.2%、人口増加率1.2
 %。
●天然ガスの消費は2016年が966BCF、2020年には1,000BCFを超え、2041年には8,000
 MMCFDに なると予想されている。2041年は3,500MMCFDのLNGが現在建設中のLNG
 ターミナルから輸入される。1,300-2,300MMCFDは国産の天然ガスが供給される。既に
 CNGスタンドの許認可は停止されており、政府は、LPGオートガススタンドを全国で置き
 換えることで、2021年までにCNGの使用を完全に停止したいと考えている。LPG事業許可
 は48出され、43充填所が建設され、建設予定の23LPG輸入ターミナルにさらに16追加され
 る。
●バングラデシュでは15社が44,380MTの貯蔵能力を持ち、輸入ターミナルは2017年の12が
 2025年には30となる予想である。充填所は14である。
●需要構造は家庭用が81%、産業用が14%、オートガスが1%、石化用が1%となっている。
●輸入量は2017年の65万トンが2025年には250万トンを超えると予想されている。
●サプライチェーンは、現在12社が65万トンを供給しておりマーケットに参入する企業は今
 後増えていく。シリンダーはマーケットに20百万本以上流通している。
●国内の天然ガス埋蔵量が枯渇しつつあるので、LPGの需要が高まっている。ここ数年は様々
 な分野でLPGの消費が毎年30-50%伸びている。2.5百万戸の天然ガス消費家庭が2025年ま
 でにLPGに転換され、オートガスがCNGに置換され、GDPの上昇に伴う個人所得の増によ
 りLPGのような代替エネルギーが魅力的になる。

11.講演:クラークソンズ・クラトウ社(英国)
      ダイレクター ニコラ・ウィリアムズ氏
      テーマ「世界のLPG海運市況の現況と見通し」
 
【略歴】
 同社は1852年に設立された総合シッピングサービス会社であり、21ヵ国に49オフィスと約
1,400名の従業員を擁している。LPGの海上輸送量は約7千万トン、扱っているLPG輸送船は
約1,300隻である。
 ウィリアムズ氏は世界最大のシッピングサービスを提供するクラークソンズ・プラトウ社
のダイレクターである。ケンブリッジ大学のPolitics & Economy of Developing Economics
の大学院過程を終了後、1995年にクラークソンズに入社した。当初はクラークソン・リサー
チのタンカー・アナリストとして働き、ガス部門に1999年に配属されてからガス輸送船/
LPG/アンモニア/石油化学ガスマーケットに関わる全セクターのマーケット・ファンダメンタ
ルとフレイトの分析の責任者である。同氏はLPG/アンモニア/石油化学の国際会議やワーク
ショップで講演するとともにロンドンのInstitute of Charters Shipbrokers and Regent's
Universityの客員講師でもある。

【講演内容】
●ここ12か月で重要な変化は船舶発注件数の減少である。VLGCの船齢別数の分布は、0-14
 年が一番多く200隻、表でハイライトしている25年以上が29隻、この古い船舶は厳しくな
 る環境規制への対応もあり、最新の経済効率の良い船舶に置き換えられることが予想され
 る。
 2020年までの新造計画34隻。2018年-2020年に廃船は12隻が予定されている。
●VLGC AG-Japanフレイトマーケットは2014-2015年の150ドルをピークに急落し、2017
 年-2018年が底で30ドルを切っている。
●海上輸出取引のシェアは米国の伸びが大きく、2017年では中東湾岸が36.2%、米国が
 29.7%。輸入はアジアが60%(中国18.1%/インド11.2%/日本10.6%)。
●最近のVLGCのフレイトは米国-千葉が68ドル、中東湾岸-日本が31ドルとなっている。裁定
 取引数量が増加していることも重要である。
●米国-アジア航路をケープ経由とパナマ運河経由で比較すると、2017年平均でケープ経由が
 17%まで減少している。
●VLGCの需給バランスを見ると、2014-2015年は稼働率が70%超だったのに、2016-2017
 年は50%を割っている。今後の廃船が高いケースで推移すると2020年の稼働率は60%に近
 付く。
●環境規制の変遷が時系列にそって説明された。
●環境規制への対応策として、MGO、Scurubber、LNG、LPG/Ethaneの各ケースの内容が
 説明され、LPG利用の優位性が挙げられた。

12.講演:インド石油公社(インド)
      チーフ・ジェネラルマネージャー プラデイップ・クマール・ジャ氏
      テーマ「インドにおけるLPGのロジスティクスとインフラ-困難と好機」
 
【略歴】
 インド石油公社はインド最大の石油・ガス・石油化学・代替エネルギーを扱う総合エネル
ギー企業(売上654億ドル)で国内シェアの5割を占める。インド全土にビジネスの拠点をも
ちLPGを普及促進している。
 ジャ氏は土木エンジニアリング学士である。IOC入社後、デュガプール、バラソール、
シッキムのLPG充填所建設プロジェクトの担当となり、その後LPG充填所運営の責任者とな
る。全国のバルクLPGロジスティックスとLPGインフラ開発を担当した後に、ユタル・プラデ
シュ州のLPG責任者となり、5ヶ所のLPG充填所/3つのエリア・オフィス/900の販売事業者
/6百万の消費者を管轄した。現在は、全国のLPGオペレーションのトップとしてバルク及びシ
リンダーLPGのロジスティックス/インフラ開発、LPG機器調達、LPGプラント・オペレー
ションを管掌している。

【講演内容】
●インドのエネルギー需要構成は、2014年が石炭46%、石油22%、ガス5%、原子力1%、
 水力1%、バイオ24%、再生可能エネルギー0.5%であるが、2040年は石炭48%、
 石油24%、ガス8%、原子力4%、水力2%、バイオ11%、再生可能エネルギー4%となる
 見込み。
●LPGの需給状況は、2010年の国産9.6百万トン、消費14.3百万トンから2017年は国産11.9
 百万トン、消費24.0百万トンに増加している。輸入量は2010年の4.7百万が12.1百万トン
 に急増している。今後の予想は、2018年の国産12.6百万トン、需要25.5百万トンが、
 2023年には国産17.5百万トン、需要32.2百万トンに、2039年に国産19.1百万トン、需要
 44.8百万トンになる。輸入は2018年の12.9百万トンが25.7百万トンになる。2017年の国
 別輸入比率はカタール36%、サウジ28%、UAE13%、クェート10%の順である。需要構
 造は2017年も2031年も大きく変わらず、家庭用90%、商業用6%、産業用2.5%、
 輸送用1%。
●供給面では、製油所22、ガス抽出プラント9、輸入基地16、輸入基地能力は6.7百万トンで
 今後4箇所計5.1百万トン/年の増設が計画されている。
●P/B比率はここ数年大きく変わらずブタン58%、プロパン42%。輸入において港湾混雑の
 ためVLGCの利用は変わらずMGCの利用が増えている。
●国内の供給は車両が63%、パイプラインが32%、鉄道が5%になっている。目標は2021年
 にパイプライン比率を50%にする。充填能力は2018年の16.7百万トン/年から2021年には
 は25.8百万トン/年に増設する。貯蔵能力は、2018年の881千トンから2021年には988千
 トンにする。
(調査研究部/亀川 泰雄)