LPGC WEB通信  Vol.53  2018.08.10発行 

LPガス懇談会がスタート!(南関東地方)

 経済産業省の委託事業「石油ガス流通合理化調査」として、当センターが実施する「LPガス
懇談会」を、去る7月19日に東京都中央区にて開催の「南関東地方LPガス懇談会」より開
始しましたので、概要を報告します。
 本年度は、エリアマーケットの観点から、南関東地方/北関東地方で一部対象県の入れ替え
を行い、南関東地方の対象を、埼玉県(旧:北関東地方)・千葉県・東京都・神奈川県・山梨
県・静岡県とし、長野県を南関東から北関東地方へ移行しました。
 また、従来は主に県別に各委員間で意見交換を行っていましたが、本年度はより一層議論が
深まる様、予め設定したテーマに基き、自県を超えて議論する形式としました。
 その結果、各県同士のやり取りではなく、圏内全域の共通課題について、文字通り一堂に会
した意見交換となりました。
 以降、他の地方懇談会においても同様の展開とし、北関東(7月27日 東京都中央区、既
開催済)、北海道(8月17日 札幌市)、東北(9月3日 仙台市)、近畿(10月5日大阪
市)、四国(10月下旬~11月上旬)、中国(11月下旬)、九州(11月中旬)の各地方
にて順次開催してまいります。


LPガス懇談会の概要
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事次第
(1)開会挨拶(北関東・南関東共通)
      関東経済産業局 資源エネルギー環境部 長嶋 繁 地域エネルギー振興企画官
 エネルギー自由化に伴う動きの中で、LPガスが選ばれるエネルギーとして、料金公表等の
 透明化を更に進め、業界全体が評価されるべき。この懇談会での議論が成果ともなってお
 り、率直に意見を交わしてほしい、と述べました。

(2)資源エネルギー庁からの説明
              資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷 浩 企画官
 LPガスは、災害対応の観点から他に代替できないエネルギーである。LPガス料金の公表
 は全体として進んでおり、今後は各県に委ねるが、切り替え等の取引適正化については更に
 推進し、業界健全化を一層進めるべき、と警鐘を鳴らしました。

(3)産業保安監督部からの説明
 「液化石油ガスの保安を巡る状況」
                  関東東北産業保安監督部 保安課 白井 守 課長補佐
 昨今の事故の傾向や、供給設備と消費設備の区分について、また販売事業者・保安機関によ
 る保安業務の時期と頻度等について説明があり、LPガス保安については、事業者だけでは
 なく、消費者も注意してほしい旨のメッセージがありました。

(4)懇談
テーマ1.相談事例における切り替え問題について
「LPガスの消費生活相談事例から販売方法を中心に」
     消費者委員:(公社)全国消費生活相談員協会 エネルギー問題研究会 林弘美代表

 林委員からは、全体の消費生活相談事例の内LPガス関連の構成比は0.24%と少ない
が、電気や都市ガスの勧誘活発化に伴い微増傾向にあるとした上で、主に切り替え時のLPガ
ス取引トラブルにかかる相談内容と対応について説明がありました。
 低料金の勧誘で契約後高くなっていた事例、切り替え時に設備料金を請求された事例、執拗
な勧誘事例が紹介され、消費者が選択できるよう料金公表し、勧誘は特商法順守の下に行い値
上げ時は説明を、また料金を下げられないなら納得できる付加価値をつける、等が消費者に選
ばれるために必要であるとの指摘があり、日頃の密なるコミュニケーションによる消費者の信
頼関係構築を求めました。
 これに対し事業者委員からは、切り替え問題は事業者個々のモラルの問題であり信頼への努
力が必要であることや、県協活動の一環として会員に対する法令順守の啓蒙状況のホームペー
ジへの掲載等について説明がありました。
 さらに他の消費者委員(消費生活相談員)からも料金や契約に関する相談事例と対応、及び
LPガスが選択されるための提案が紹介され、これを受けて事業者委員より、日頃からの付き
合いや緊急時の駆け付けによる保安の重要性等が示され、今後の活動方針等の表明がありまし
た。
 これらの意見交換に対し、谷企画官より、販売事業者は保安の見えない部分での貢献も重要
であり、集中監視もその一つ、また切り替え時における料金や取引の問題については、ガイド
ラインではなくより重い制度を考える必要があるとの示唆がありました。


テーマ2.LPガス料金公表の実態
「LPガス料金公表事業者及び公表予定事業者リストの電話調査」
            消費者委員:NPO法人 神奈川消費者の会連絡会 今井澄江代表理事

 冒頭の谷企画官による、料金公表が約76%まで進んでいるとの状況説明に対し、今井委員
はその実感がないとして、神奈川県内のLPガス販売事業者に対する電話調査結果を紹介しま
した。
 同氏によると、ホームページ公表がされていなかったり閲覧ができない場合、店頭へは出向
かず電話での問い合わせが大半と思われるが、実際に電話で予定を含む料金公表事業者
約250社に対し料金照会したところ、約半数より回答拒否があり、中には同業者によるなり
すまし調査と疑われたケースもあったとのこと。「料金公表」はどのようなツールでも行われ
ていることが重要であるとし、ガイドライン順守への改善を求めました。
 事業者委員はこれに対し、ブローカー等による切り替えのターゲットとなることを恐れ公表
を控える事業者が多いのが実態だが、保安大会等で会員が集まる機会に取り組み強化を説得す
ると表明しました。
 他の消費者委員からも、公表状況と実感との食い違いや請求情報の不透明性等から、料金の
高い安いのみの判断に繋がってしまうおそれがあるので、他に選ぶ根拠を示してほしい、また
行政も引き続き見届けてほしいとの意見や要望、さらに地域の社会資源として「見守り」の分
野でも頑張って、とのエールもありました。
 谷企画官は、電話による問い合わせでも適切に対応するよう呼び掛けているが、この状態だ
とさらにLPガスの人気が落ちてしまう、として販売事業者による真の公表に向けた取り組み
を要請し、事業者委員は今後の努力に対する姿勢を示しました。


テーマ3.LPガスの保安対策と災害対応LPガスバルクシステムの普及について」
「埼玉県の災害対応型LPガスバルク供給システムの普及について」
                   埼玉県 危機管理防災部 化学保安課 森田健司主幹

 埼玉県庁のホームページでは、防災広報の一環として災害対応型LPガスバルク供給システ
ムの県内導入事例が紹介されています。
 今般、同県危機管理防災部化学保安課からは、本来業務である保安対策業務に加え、危機管
理対策業務の一環として、2年前から現地取材した災害対応型LPガスバルクの設置事例を
ホームページでの紹介により、医療機関や福祉施設、自治体指定の避難所への導入促進に向け
た広報活動を行っている旨の説明がありました。
 これを受け事業者委員より、各県での設置事例、とりわけ小中学校等の教育施設への導入や
これを使用した自治体との連携による炊き出し訓練等について、さらにLPガスGHPの設置
事例も含めての紹介があり、これに対し消費者委員よりさらなる普及に向けた期待の声が上が
りました。
 谷企画官からも、7月の豪雨災害で猛暑の中、避難場所の体育館に、資源エネルギー庁とし
てスタンドアローン型のクーラーを緊急配備した広島県の直近の実例紹介から、このような環
環境下においてもLPガスGHPの活躍が期待でき、既に導入していた大阪府箕面市の35の
小中学校は、6月の大阪北部地震の際役に立った例を挙げました。
 さらに、東日本大震災の際にやはり活躍したLPガス自動車を、神奈川県及び大分県が公用
車として積極導入した例を加え、避難所のGHPとLPガス車は、生命を守るために必要であ
り、災害対応型LPガスバルクと併せ自治体に対し導入を働きかけてほしい、と述べました。


(5)総括コメント
               南関東懇談会 東京理科大学大学院 経営研究科 橘川 武郎 教授
 LPガス懇談会は、消費者・事業者・行政が一堂に会して話し合うこと、そして地域ごとに
開催することに、大きな意味がある。南関東と北海道の懇談会に出ているが、南関東の場合は
「切り替え」の問題、北海道では設備付き供給が課題となり、話題が全く異なる。
 今回は、従来の対話型からテーマ型となり、また地域の実態に合うよう長野県と埼玉県を入
れ替えたのも良いこと。
 ブローカー問題については、経済産業局(消費者庁ではなく)が扱う特商法ベースにチェッ
クを入れ議論すべき。事業者が消費者を訪問する際は、社員証を付ける等ブローカーが動きに
くくする等対策し、訪問勧誘を受けた際も、消費者がブローカーか否かを見分ける力も必要で
ある。
 料金公表については、「他社に知られたくないから料金を公表できない」は、モノを売るの
に料金を知らせないということであり、おかしな話。市場メカニズムが働いておらず、競争が
ないことが、背景にあるからであろう。
 電話での問い合わせは、消費者と話ができるビジネスチャンスと捉えるべきで、料金透明化
のポイントはここにある。
 また、南関東は都市ガスエリアが広く、防災の観点では日本一脆弱と言える。大都市の屋外
熱需要において、分散型エネルギーのLPガスしかできない大きな市場を開拓すべき。さら
に、高齢者にはオール電化を勧める一方で、熱需要にはFRP容器のLPガスでの対応も可能
であることをPRすることも必要である。災害時に最後の砦となるLPガスの供給について、
学校への普及が始まっていることは良いことであり、GHPも病院、大型スーパーで広げてほ
しい。
 尚、豪雨の場合は容器流出の問題があるので、この対策について議論する必要がある。


開催風景・南関東地方LPガス懇談会

東京都中央区で開催した南関東LPガス懇談会での会議風景(7月19日)


関東経済産業局 資源エネルギー環境部 長嶋地域エネルギー振興企画官の開会挨拶

昨今のLPガス事情について説明する、資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 谷企画官

調査結果についてプレゼンする消費者委員

取り組み状況を説明する事業者委員

 
災害対応についてプレゼンする自治体主幹

テーマ毎に総括コメントする橘川教授

(広報室/野村 晃久)