LPGC WEB通信  Vol.58  2019.01.07発行 

中国地方LPガス懇談会の概要

 11月30日に中国地方LPガス懇談会(鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県)を広島市にて開催しましたので、概要を報告します。
 この懇談会では、
  ①料金透明化・取引適正化の現状と対応
  ②災害対応の現状と課題
 の各テーマについてそれぞれ事業者委員よりプレゼンいただき、テーマ毎に消費者委員、事業者委員、学識経験者委員、行政間にて活発な意見交換が行われました。
 この中国地方をもって、本年度全てのLPガス懇談会が終了致しました。次号にて全懇談会を通し振り返ることと致します。


LPガス懇談会の概要
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等
       報道関係

議事次第
(1)開会挨拶
               中国経済産業局 資源エネルギー環境部 斎藤 秀幸 部長
 20年ほど前に資源エネルギー庁でLPガスを担当し、この懇談会にも出席したが、まだこの議論を続けているのか、の感である。米国からの輸入が増え中東依存度が低減したこと、災害に強く優れた特性を有するというメリットがありながら、電力・都市ガスの自由化の中で料金や取引の不透明性でLPガスが消費者に支持されないとすれば大変残念である。
 行政による指導には限界があるが、消費者はSNSで容易に情報発信と拡散が可能である。消費者が主役となり声を上げ、これに応えることで選ばれる事業者となってほしい、と述べました。

(2)資源エネルギー庁からの説明
            資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 目黒 浩 課長補佐
 電力・都市ガスの自由化がトリガーとなって、LPガスの料金透明化・取引適正化への取り組みが進み、都道府県LPガス協会の尽力で料金公表率も全国的に高まり、中国地方各県は全国平均を上回った。しかしながら、消費者サイドの料金に対する認識が益々高まっている中で、集合住宅ではLPガス事業者による住設提供を前提に建設が進み、結局は消費者に費用を請求することもLPガス料金の不透明性の一因であり、消費者に選ばれようとする努力の一方で、選ばれない要因を抱え続けている。SNSで実態が広まれば事はさらに悪化し、信頼の回復は容易ではない。保安業務をサービス提供と考え、営業の一環として高い信頼を得てほしい。
 また、総務省北海道局によるLPガス取引適正化についての北海道経済産業局等に対する行政評価で、(取引適正化が進んでいない部分があることから)行政間の連携強化が必要と指摘されたが、この動向は北海道に限らないと思われ、12月に各経済産業局に対し説明する予定である、と述べました。
 災害対応については、ここ数年でLPガスによるGHPや発電に対する認知が高まり、議員からも関心が寄せられている状況である。長期保存でも劣化しない特性や学校空調等もPRを強化すると共に、過疎化も商圏の広がりと捉え、支援は惜しまないので、繰り返し発信してほしい、と業界を応援し、さらに、現在342カ所の中核充填所でカバーできていない地域もあり、この強化についても検討している、との示唆もありました。

(3)産業保安監督部からの説明
 「最近の液化石油ガス保安行政について」
            中国四国産業保安監督部 保安課 杉浦 克紀 液化石油ガス監督官
 昨今のLPガス事故の傾向について、ガス漏れや火災・爆発等の事故発生状況の概要から、その原因者と内容、具体的な注意点と対策、またCO中毒事故防止策について説明がありました。

(4)懇談
テーマ1.料金透明化・取引適正化の現状と対応
「中国地域における液化石油ガス料金の透明化及び公表についての取り組みについて」
                  事業者委員:広島県LPガス協会 石井 幸次 会長
 石井委員は、事前に用意された資料に加え、全国LPガス協会策定の「LPガス販売指針」を当日配布し、まず販売事業者として守るべき5原則に集約される適法・適正性の内容について説明後、中国地方5県の協会連合会及び広島県協の取り組み状況について、次の通りプレゼンしました。

 中国地方連合会の活動として、石油流通課谷企画官より、LPガス情勢及び料金透明化・取引適正化について講演いただき、5県350名の事業者が聴講した。また、料金公表状況については、全県とも取り組んだ結果、前年及び全国平均を上回り一定の前進となったが、十分とは言えず今後も努力を継続する所存である。
 広島県での取り組みとしては、昨年度の中国地方懇談会において、3割の消費者が契約書面を未受領であるとの委員報告を受け、県協会としてもお客様相談所委員の3消費者団体による協力のもと、同様の実態調査を実施した。その結果、171件の回答の59%が未受領または受領不明であったことが判明し、書面保管への方策や、書面内容の表現方法、交付方法について検討を進めている。
 また、同調査の記述回答では、ガス料金(の絶対値)に関する意見が3割、安全・災害に関する意見が3割、その他ガスの情報、ガス器具、サービス等の順に意見が多かった一方、料金透明化・取引適正化、エネルギー自由化に関する意見は少なかった。
 これらの意見を受け、料金に関しては透明化活動を継続していくとともに、共同充填や共同配送等によるコストダウンをさらに進め、固定費低減を図る努力を進め、安全の確保については、自主保安活動の継続と4年に1回の保安点検、及び供給設備の期限管理の徹底や集中監視システムの導入により、事故の未然防止に努める。
 最後に、料金透明化・取引適正化にこれまで以上に取り組む一方で、料金を如何に下げるか、事故を如何に未然に防ぐか、万一の事故・災害に如何に迅速に対応するか、LPガス協会として事業者とともに積極的に取り組んでいく所存である、と述べました。

 プレゼンに続き、他の事業者委員からも同様に、書面交付や内容改訂等の改善や、料金公表率の更なる向上を含む透明化促進の取り組み等について説明がありました。

 事業者委員のプレゼンや説明に対し、消費者委員の広島県生活協同組合連合会高田専務理事は、昨年の当懇談会で同生協連の調査報告で14条書面交付の不備を訴えた際、行政より事業者は指導通り実施しているとの発言があったことに関し、この議論を広島県LPガス協会が真摯に受け止め独自の調査を実施したことを評価した上で、次のように述べました。

 料金透明化については、未だ低いレベルであるとの実感、消費者団体での啓発活動は限られたものであり、行政の力も借り消費者全体への啓発が必要と考え、苦情・相談等の窓口の充実を図りたい。
 また、総務省の北海道経産局に対する行政調査では、LPガス料金透明化の実感がないとの評価であった。適正な競争とならなければ自由料金の意味も少ないが、事業者はどのように考えるのか。

 この問い掛けに対し、石井委員は、地域や事業者により料金が異なることはやむを得ないと考えており、協会として料金の絶対値に触れることもできないが、料金の公表については十分でないのが実態であり、この改善と併せ住宅設備費用をガス料金に隠さず3部制として明記する等の対応策を検討中である、と回答しました。

 さらに高田委員より、同一地域で事業者により料金が異なることは問題ではないか、集合住宅での料金価格差問題もあるのでは、との問い掛けがあり、これに対しまず事務局より、「公表」とは自宅の料金レベルが地域でどんなポジションにあるかを知れ、知った上で自由に選択ができる状態にあることであり、また住宅設備費用の持ち分についても説明しなければ請求できないこととなった、との論点整理を行った上で、目黒課長補佐がさらに次のように説明を加えました。

 LPガス料金に設備費用を含むこと自体は問題ない。しかし、消費者がそのことを知らない状態で料金を払い続けることが問題。料金の内訳を明示し、消費者が納得して支払うことが前提であり、従量料金に消費設備費用を溶け込ませることに消費者の納得が得られるとは言えず、納得がいかない場合、消費者は事業者をスイッチする権利がある。

 さらに、北海道での総務省の調査結果についてはどう受け止めるのか、との高田委員による問い掛けに対し、目黒課長補佐は、総務省に対する回答はこれからであり、現時点では確たる言及ができないとしましたが、議論がやや平行線となったため、今後もこの懇談会やその他の場で意見交換を重ねていくことを確認し、次のテーマに移りました。

テーマ2.災害対応の現状と課題
「災害対応の現状と課題について」
                 事業者委員:岡山県LPガス協会 藤田 尚徳 副会長
 藤田委員によるプレゼンでは、本年7月に中国地方を襲った豪雨による河川氾濫、浸水、土砂等の災害について、岡山県におけるLPガス販売事務所や充填所等供給設備の浸水・損壊及び容器流出等の被災状況と、同協会による対応について次の通り説明がありました。

 全協会員一致団結の下で災害対応に当たり、被害の著しかった真備町浸水地域の消費者避難後の留守宅の応急点検も気温36度の炎天下で行われたが、復旧は緒に就いたばかりで(懇談会当日現在)、完全復旧はまだ先の見通しである。
 容器流出の回収は、四国を含め近隣県からの応援もありほぼ完了しているが、今後の大規模災害においては復旧への協力体制が大きな課題であることを痛感した。LPガス業界の人材として外国人登用の検討も必要と思われる。
 被災者支援の一環として、避難所での炊き出しやその他のLPガス機器類の設置を行い、中でもLPガス衣類乾燥機が有効であった。さらに、日本赤十字社に対する義援金150万円の贈呈も実施した。
 今後の課題として、BCPの策定、大規模災害に備えた職員確保や勤務体制、通信・連絡手段の確保についてさらに検討を重ねる所存であり、特に人材と通信の確保については行政にも相談していきたい。

 続いて他の事業者委員より、災害対応策の一環として、県協会による災害対策講習会の開催、中核充填所防災訓練、緊急通報出動訓練、高齢者保安点検、避難所設備点検等の取り組み状況が紹介されました。

 また、昨年末年始に2週間の停電が発生した豪雪地域に住まう消費者委員からは、オール電化に変えて大変困った例の紹介や、安全面からオール電化を家族から勧められる高齢者に対して、LPガスの安全さを改めて伝えたいとの意見、さらに防災訓練を見学する機会があり、行政に対し避難所へのLPガス炊き出し設備設置への要望意見や、消費者団体の会員で災害対応バルクを設置した実例が紹介され、災害時のエネルギー対策に対しLPガスへの大きな期待が寄せられました。

 目黒課長補佐からも、本年度災害対応バルク予算は既にこの9月で消化となる勢いであり、来年度予算について増額要請中なので、是非設置について検討願いたいと呼び掛けました。

 さらに、充填所等のLPガス設備損壊や容器転倒及び流出があったが、二次災害に至らなかったことは、LPガスは災害に強いとの立証である、との学識経験者委員の意見を受け、県協会としても二次災害を防止すべく消費者に対しPRを実施したことにもよるが、元来LPガスは容器より放出があった場合でも、50kgで約30分程度と短時間で放出完了となり、また降雨によりガスは拡散されるので、幸い二次災害に至らなかったものと思われる、との説明を事業者委員が加えました。

(5)総括コメント
            広島経済大学 経済学部 メディアビジネス学科 北野 尚人 主任教授
 学識経験者委員である北野教授は、主役は消費者であり、前向きな変化を促す役割を有しているので、この懇談会は大変意義のある意見交換会であると考える、とした上で次の通り懇談会を締め括りました。

①テレビや新聞を見ず、殆どの情報をスマートフォンから得る学生たちや、「LPガス」と「液化石油ガス」が同一のものであることを知らずこれからエネルギーを選ぶ若い消費者に対し、如何に情報発信していくかが課題となってくる。
②情報発信には、方法論とコンテンツの両面があり、この掛け算で進んでいく。方法論としては、ウェブサイトでの料金公表の発信や、SNSでの事業者や取引に関する評価情報が大きな要素となる。ホームページのない企業は、存続を許されない。協会がホームページビルダーを斡旋しては如何か。
 またコンテンツとしては、人口減少や過疎化、エネルギー自由化等で競争環境が変化し激化していること、また入学する消費者もあるが卒業もあることを事業者は十分理解した上で充実させていくことが必要である。
③LPガスは劣化しない、二次災害が起きにくい、応用範囲が広い等の好条件についてPRが少ないと感じる。是非積極的に情報発信してほしい。
④選び選ばれるウィンウィンの関係を、この懇談会で構築していってほしい。

と述べました。

開催風景・中国地方LPガス懇談会
広島市南区で開催した中国地方LPガス懇談会での会議風景(11月30日)
開会挨拶は中国経済産業局 斎藤資源エネルギー環境部長

 
昨今の状況を説明する資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 目黒課長補佐

プレゼンは、事業者委員広島県LPガス協会 石井会長(左) 及び岡山県LPガス協会 藤田副会長(右)

取り組み状況を説明する事業者委員(左) 及び熱心に意見する消費者委員(右)

総括コメントする北野教授
(広報室/野村 晃久)