LPGC WEB通信  Vol.66  2019.09.10発行 

令和元年度LPガス懇談会がスタートしました!(北関東地方)

 経済産業省資源エネルギー庁の委託事業「石油ガス流通・販売業経営実態調査」(過年度の同調査及び石油ガス流通合理化調査の両事業が統合)として、当センターが実施する「LPガス懇談会」を、去る8月20日に東京都中央区にて開催の「北関東地方LPガス懇談会」より開始し、対象の茨城、栃木、群馬、新潟、長野各県の消費者委員及び事業者委員、学識経験者委員、行政が出席しました。
本年度のテーマとして予め設定した、
①料金透明化・取引適正化の現状と対応
②災害対応の現状と課題
の各テーマについてそれぞれ資源エネルギー庁からのプレゼンテーションの後、テーマ毎に活発な意見交換が行われました。
本年度も、テーマに基づき自県を超えたエリア全域の共通課題に対し、他県の事例も参考としながら、従前にも増して議論が深まりました。
また、本年度は司会進行を学識経験者委員にお願いしたこと、会議資料はタブレット端末を使用しペーパーレスを図ったこと等、会議運営方法の一部に新たな試みを加えました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
(1)開会挨拶
      関東経済産業局 資源エネルギー環境部 関根恵子 地域エネルギー振興企画官
 料金透明化については、まだ多くの事業者の料金公表は店頭表示にとどまり、ホームページで広く閲覧できる状態になく、事業者は工夫して消費者に伝えるよう改善を望む。
また、集合住宅入居者のLPガス料金は高く、設備費用転嫁等の実態を認識していないとの経済産業省調査結果があるので、取引適正化を果たす上で、事業者は消費者への丁寧な説明が重要である。
昨今災害が多い中、災害に強いLPガスを補助金活用してLPガスをもっと使ってほしい。懇談会での意見は関連行政に活かす所存、豊かで賢いLPガスの世界を構築したい、と述べました。

(2)懇談

                司会・進行:青山学院大学 総合文化政策学部 内山 隆 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」

          説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
2016年の液化石油ガス流通ワーキンググループの審議を受け、2017年以降の液石法省令改正及びガイドライン制定・改正を経て、LPガスの料金透明化・取引適正化を進めてきた。しかし、昨年度の集合住宅入居者向け調査では、約7割の入居者が料金が高いと感じ、約5割が料金の見直したいと回答、また事業者を切り替えたかった入居者の76%が大家側に断られた、と回答した。さらに設備費用をLPガス料金へ転嫁している場合、それを認識していたのは約13%で約3割は説明を受けていない、との結果となり、商慣習上の構造的な問題はあるが、事実は確り説明することが必要である、との説明がありました。

この説明に対し消費者委員より地域の実情が報告され、消費者に調査してもLPガスが高いことやトラブルにあった等の声はなく、むしろ対応が良くオール電化からLPガスに戻る動きもあるとの意見(新潟県地域支え合い体制づくりひまわりの会・木村委員)がありました。しかし一方で、14条書面の交付が当初無く請求から交付までに1年半要した例より、事業者の対応に不透明さを感じるとの意見(群馬県消費生活相談員・飛澤委員)、料金を比較したいが切り替え業者のインターネットでの3割安の情報には疑問を感じる(茨城県消費者団体連絡会事務局長・鈴木委員)との意見があり、一部のLPガス事業者に対し疑問を呈しました。

さらに、長野県消費者の会連絡会会長の織田委員は、松本市での2015年及び2019年消費者調査の結果を発表し、2015年調査では基本料金の記載がない請求書の例が約4割、契約書の保持が確認できない例が約9割、設備の所有区分を認知していない例が8割、自由料金制であることを知らなかった例が約7割あったことを報告、2019年調査でも大きく改善されていないことが示されました。小規模事業者ほど古い体質が続く傾向があるが、小規模事業者が統合されると、価格が上昇するのではとの心配があるとの指摘もありました。

このような意見の中で、複数都県に跨る事業者を管轄する関東経済産業局資源エネルギー環境部資源・燃料課の新田課長より、関東液化石油ガス協議会における管内事業者に対する料金透明化・取引適正化に関する説明状況や、都県自治体担当者会議(産業保安)での情報共有についての説明に続き、群馬県総務部消防保安課の大下課長補佐からも、事業者・事業者団体・行政(国・自治体)が一体となって取り組む状況が報告されました。
経済産業局や自治体の取り組みは、昨年、総務省北海道管区行政評価局より示された、LPガス行政における地域連携(経済産業局管内)の推進であり、全国反映の形で強化されています。
(参考)総務省ホームページ「液化石油ガスの取引適正化に関する調査結果」http://www.soumu.go.jp/main_content/000600548.pdf

事業者委員からは、料金内容や14条書面等について消費者に対し説明や対応不足であったことについて反省するとの意見があり、各事業者へのさらなる説明徹底を行っていくとの姿勢と、消費者意識の変化を捉え事業者も変わっていく必要性が示されました。

また当センターからも、昨年度の資源エネルギー庁委託事業「流通・販売業経営実態調査」の結果を報告しました。14条書面の記載内容については、82%の事業者が説明していると回答している反面、供給・消費設備の設置・変更・修繕・撤去に関する説明を行う事業者は全体の43%、貸与設備に対し消費者が負担する費用の説明については34%、契約終了時の設備の精算方法の説明については30%に留まっており、意見交換で発出された傾向を反映しています。

改善のためどういったコミュニケーションをとったら良いか、との内山教授の消費者委員に対する問い掛けに対しては、
・店頭表示も「公表」であるとしているが、消費者はわざわざ店頭には行かないのが実態であり、ホームページはもとより別の公表方法も検討してほしい。
・サービスの一環として保安指導や見守り等でコミュニケーションをとってほしい。
・消費者としてもLPガス料金に対する認識を高めた上で、事業者と接する必要がある。
との意見が出されました。

テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

          説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
 軒下在庫があり劣化しないこと、迅速な復旧が可能で、炊き出しへの活用や、LPG車が稼働でき、都市ガスのバックアップも可能であること等、LPガスは災害に強い分散型エネルギーであり、自然災害の多い昨今LPガスは大きく貢献している。
特にLPガス災害バルクが活用されており、昨年の北海道全道停電の際も、同設備設置各所より発電機稼働等の活躍事例が多く報告されている。
目下の残暑においても、空調のない状態は恐ろしい。経済産業省もLPガス災害対応バルクへの補助金を増額したので、是非活用してほしい、と述べました。

また、同補助金事業を受託する当センターより、補助金によるこれまでのLPガス災害バルクの導入状況と、昨年度の約5倍の31.5億円(昨年度補正予算額を含む)となった本年度の予算に対する応募状況を報告しました。当日現在で申請件数は200件を超え、金額は約29億円となっており、豪雨災害によるものと思われる西日本からの応募や、設備に発電機を含む応募が増えています。

事業者委員からは、県内自治体との防災協定の締結状況や災害バルクの設置状況、ガス放出防止型高圧ホースやフレキ管の設置による地震対策状況、防災訓練等への取り組み等について報告がありました。

さらに、新潟県の木村消費者委員からも、県内の中学校でLPガスによる災害対応力強化をテーマとして防災講習を実施し好評であったことから、今後他校でも開催予定であることが報告され、消費者団体においてもLPガスによる災害対応がPRされている状況が示されました。


(3)総括コメント
               青山学院大学 総合文化政策学部 内山 隆 教授
 テーマⅠ.では、消費者と事業者は、総じて日本的商習慣ともういうべき高い親和関係で保たれていると感じた。しかし、エネルギー自由化という環境変化により消費者は賢い選択を迫られており、また事業者は説明不足やスイッチング時のトラブル等により信頼感を失う可能性がある。
好関係をキープするには双方の努力が必要となり、消費者は意識を高めること、また事業者は値段を超えたサービスの面を如何に維持するかが課題である。電力等の大手エネルギーが苦手なのは“face to face”であり、この世界はLPガスのビジネスがこれまで築いてきた。
形がないのに壊れる心配があるのが、信頼関係。壊れるきっかけは環境変化であり、壊れない内に手当てする必要がある。
また、テーマⅡ.では、大型補助金をどんどん利用して、有事に備えよう。この国の有事とは、戦争ではなく自然災害である。ただ、災害が多発する時代に一つのエネルギーに頼ること自体がリスクであり、ポートフォリオを組むことを考える必要があることと、リスク対応コストについては事業者だけではなく、消費者も認識しておくべきである。
以上の内山教授による総括コメントにより、懇談会が締めくくられました。


開催風景・北関東地方LPガス懇談会

東京都中央区で開催した北関東地方LPガス懇談会での会議風景

開会挨拶する北関東経済産業局 関根地域エネルギー振興企画官
右は行政の連携状況を説明した同局資源・燃料課 新田課長

料金透明化・取引適正化の現状を説明する資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 家田課長補佐

地域の実情を訴える消費者委員

消費者委員からの投げ掛けに対し真摯に説明する事業者委員

 
取り組み状況を発表した各県自治体担当者

進行及び総括コメントする内山教授

(広報室/野村 晃久)