LPGC WEB通信  Vol.67  2019.10.10発行 

南関東地方及び東北地方LPガス懇談会の概要

 去る9月3日に南関東地方LPガス懇談会(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・山梨県・静岡県)、9月25日に東北地方LPガス懇談会(青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県)を開催しましたので、両懇談会の概要を報告します。
各地方の消費者委員及び事業者委員、学識経験者委員、行政の間で、本年度のテーマである、
 ① 料金透明化・取引適正化の現状と対応
 ② 災害対応の現状と課題
について、それぞれ資源エネルギー庁のプレゼンテーションに続き、自県を超えた意見交換が行われました。
 本年度の新たな試みの一つである、ペーパーレス化を図ったタブレット端末の資料閲覧による会議運営については、事後アンケートの結果からも概ね好評を得ています。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
 南関東地方LPガス懇談会
(1)開会挨拶
 関東経済産業局 資源エネルギー環境部 関根恵子 地域エネルギー振興企画官
 LPガスの料金透明化・取引適正化については、ホームページによる料金公表が少なく、また消費設備等費用区分を消費者が明確に認識している状態ではないとの調査結果から途半ばであり、消費者への伝え方に事業者は工夫が必要である。
 昨今の大災害で、LPガスは災害に強いことが立証されており、LPガスを補助金活用してLPガスをもっと使ってほしい。懇談会での議論は、研修会等で共有する所存であり、忌憚なく意見交換してほしい、と述べました。


(2)懇談
 司会・進行:東京理科大学大学院 経営学研究科 技術経営専攻 橘川 武郎 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷 浩 企画官
 料金透明化・取引適正化については、この南関東地方が一番大きな問題を抱えている。
 平成28年の液化石油ガス流通ワーキンググループの審議では、本日出席の橘川教授や林消費者委員とともに料金透明化の必要性を論じ、翌年の液石法省令改正及びガイドライン制定・改正を実施と、透明化・取引適正化を進めた。電力・都市ガスの自由化が始まった時期であった。平成28年度及び29年度に調査を実施し、LPガスの料金公表率を比較したところ、大幅な向上となり、地域の事業者が一斉に取り組めば、公表が可能とわかった。このような結果となったので、平成30年度以降は税の効率投入の観点からこの調査を実施していない。しかし集合住宅入居者に対する調査を平成30年度に行い、住宅設備等の費用がLPガス料金に含まれていたことが契約後にわかったとの声もあり、このような状況ではLPガスのアパートには入居を希望しないこととなるので、確り説明することが必要である、と説明及び指摘するとともに、的確な説明のできる事業者を選択してほしい、と消費者側に呼び掛けました。

 一方、神奈川県消費者の会連絡会代表理事の今井委員より、同会が実施した神奈川県の全LPガス事業者(神奈川県LPガス協会々員)に対する電話による料金調査では、問い合わせに応じた販売事業者は全体の34%に留まり、国の調査による高い公表率は実態とは異なるとの指摘がありました。さらに、消費者は料金確認で通常店頭を回ることはせず、ホームページでも確認するが、現実的に最も多い方法と思われる電話での問い合わせには適切に対応してほしいと、要望しました。

 橘川教授は、料金公表というからには電話問い合わせにもきちんと対応するべきであり、その状態になるまで、透明化への取り組みを進めていく必要があるとコメントしました。

 これに対し、神奈川県LPガス協会会長の高橋委員は、切り替え競争が激しい県のため、電話による料金問い合わせに(ブローカーによるものではと)神経質となり、応えられないことがあるのでは、としながらも、消費者が買い物するのに価格を聞かないことはないと会員事業者に説明し認識を改めていくとして、透明化の継続的推進に意欲を示しました。

 その他の消費者委員からも、契約終了時に残存設備の引き取り費用として初期費用の10%・2万円を請求された消費者の例(埼玉消費者被害をなくす会 清水委員)、消費相談件数は電力関係が大幅に増加し、LPガスに関するものは相対的に減少しているが、景表法や特商法の対象とならない集合住宅のオーナーに対する切り替え勧誘に関する相談が増加している例(全国消費生活相談員協会エネルギー問題研究会 林代表) 、料金が高いので他のLPガス事業者に変更しようと動いたが、消費者が知らないところで事業者同士の相談があり変更が難しかった例(静岡県消費生活相談員 菅ケ谷委員)が挙げられました。これに対しそれぞれ事業者委員より、消費者への説明不足や事業者本位の商慣習を改めるべく、事業者に説明していく旨が示され、今後も問題があれば各都県LPガス協会のお客様相談所に相談してほしいと要望しました。

 関東経済産業局 資源・燃料課の中田検査官からは、事業者の集まる諸研修会の場で、料金透明化や液石法第14条書面交付、取引適正化ガイドラインについて説明し、都県LPガス保安担当者とも意見交換していることが報告され、また埼玉県危機管理防災部の森田主幹からも、埼玉県LPガス協会と協力し、県内約800事業者に対し、国の指導方針を埼玉県なりに分かりやすく説明するとともに、谷企画官による講演により直接指導願ったなどの取り組みが報告され、行政としても料金透明化・取引適正化について地域で連携している様子が示されました。

 意見交換のあと、当センターからも、昨年度の資源エネルギー庁委託事業「流通・販売業経営実態調査」の結果を報告しました。意見交換で議論となった傾向が裏付けられています。
 本件に関し、山梨県消費者団体連絡協議会事務局長 斉藤委員より、本年度の同調査はWEB調査となるので事業者が回答し易い仕様とし、回答率を高めてほしい、との要望がありました。当センターとしては、PCやタブレット端末、スマートフォンにより極力容易かつ短時間に回答可能とすべく考慮したので、多くの事業者より回答協力願いたい旨を事業者委員に要請しました。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷 浩 企画官
 LPガスは劣化せず、消費者の皆が在庫を保有している点で、石油と比べても災害時最強のエネルギーである。東京都府中市や大阪府泉佐野市等、学校施設へのLPガス災害バルクの導入対応が早かったところもあるが、まだまだLPガスの災害対応力の強さに対する自治体の認識が十分とは言えないので、事業者は是非自治体の防災担当者等に足を運びPRしてほしい。また被災者保護の観点から、自治体は責務としてLPガス災害バルクの導入を検討してほしい、と述べ、資源エネルギー庁の補助金のほか、自治体からの補助金等他の設定もあることから、これらの積極的な活用を促しました。

 続いて、同補助金事業を受託する当センターより、補助金によるこれまでのLPガス災害バルクの導入状況、及び昨年度の約5倍の31.5億円(昨年度補正予算額を含む)となった本年度の予算に対する応募状況について、申請件数は200件を超え、約29億円となり、豪雨災害によるものと思われる西日本からの応募や、設備に発電機を含む応募が増えている旨を報告しました。

 事業者委員からは、県立高校4校に対するGHP導入紹介(千葉県協会長 小倉委員)や、災害に強いLPガスについてロビー活動を進め、自治体への認知を高めたい(東京都協会長 尾崎委員)等の意見がありましたが、消費者としても認識を高める必要があり所属団体においてもLPガスの強さについて発信していきたい(山梨県消団連事務局長 斉藤委員)、また東京都は特に災害で壊滅状態が危惧されるが、事業者の減少でLPガスは供給が行き届かないのではとの不安材料もあり、業界に対しさらなるLPガス普及を望む消費者意見もあり、それぞれがLPガスの災害対応についてより一層のPRの必要性を訴えました。


(3)総括コメント
              東京理科大学大学院 経営学研究科 技術経営専攻 橘川 武郎 教授
 テーマⅠ.完全ではないが、それでも年々LPガスの料金透明化は進んでいる。「公表」というからには電話での問い合わせにも当然対応すべきであるが、店頭公表は意味がないという意見があるものの、電話対応する上で店頭公表も意味を持つので、実施して透明化率をさらに上げていきたい。また、取引適正化については、経済産業省のみならず国土交通省も関連しており、社会的問題といえる。LPガス料金は、(設備料金を明記した)三部料金制を目指すのが肝要である、とさらなる料金の透明化と取引の適正化への期待を述べました。
 また、テーマⅡ.では、日本で災害時に最大の弱点は都市ガスエリアであり、また都市ガスの配管のないオール電化住宅もLPガスのターゲットとなる、とした上で、税金も非常時だけのために使うのではなく平時への対応が重要であるとの観点から、平時からのLPガス導入に向けた攻略を推奨しました。
 電力と都市ガスの自由化が進む中で、特に電力販売に消費者からのクレームが集中しているということは、エネルギーの自由化はまだまだ途上といえる。本日報告のあった消費者による調査は、これらの経過を含みチェックすることが重要であり、このLPガス懇談会で継続的に議論していく必要がある、と全体を締めくくりました。


◆開催風景

開会の挨拶は関東経済産業局資源エネルギー環境部 関根地域振興企画官、
右は行政の連携状況を説明した同資源・燃料課 中田検査官


料金透明化・取引適正化の現状を説明する資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 谷企画官

地域の実情を訴える消費者委員

取り組み状況を説明する事業者委員

適正化について行政の地域連携状況を説明する埼玉県危機管理防災部の森田主幹

 
進行及び総括コメントする橘川教授



議事の概要
東北地方LPガス懇談会
 
(1)開会挨拶
 東北経済産業局 資源エネルギー環境部 奥村浩信 部
 東北経済産業局では、本年度から3カ年の中期計画の中で震災復興と持続的経済成長を図っているところであるが、LPガスの供給・災害対応能力の高さは、国土強靭化基本計画において明記されており、昨今の大災害における貢献でも立証されている。国として平成29年の法省令改正及びガイドライン制定を行い、また業界としてもLPガス販売指針が改正されているので、これらをもとに消費者がエネルギーを選択する上で必要な料金透明化と取引適正化をさらに進めてほしい、と述べました。


(2)懇談
 司会・進行:東北大学大学院 経済学研究科 吉田 浩 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」
 

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
 料金透明化・取引適正化については、目下不十分と言わざるを得ない状況である、とした上で、法省令改正・ガイドライン制定等の措置に至った経緯、料金公表の実態、集合住宅における実態と課題について説明があり、LPガスは世帯数が都市ガスを上回る県が47都道府県の内32県ある重要なエネルギーであり、この懇談会で課題を洗い出して政策検討に活かしていきたい、と述べました。

 この説明に対し、みやぎ生活協同組合地域代表理事の石川委員より、これまでの料金透明化・取引適正化に関わる国の措置はすばらしいが、消費者サイドに如何に浸透しているかが重要であるため、LPガス世帯の実際の検針票、領収書等から検証したとして、本年度の結果報告がありました。
 基本料金/従量料金や消費税込/別、設備機器費用の明示がないエビデンス例、また事業者により大きくバラツキのある料金水準や、ホームページでの料金公表が未だ少なく途半ばであること、料金についての電話による聞き取り調査でも曖昧な回答であること等が紹介され、現状のわかりにくい料金表示のままにせず、消費者が選ぶために本質的な透明化と適正化を進めてほしい、と願いました。
 高齢化が進む中、エネルギーの価値が年齢層で変わってはならず、弱い消費者に対する配慮が必要であり、事業者には安価という観点ではなく持続可能で安定した価格と供給を望むが、これらへの取り組みは行政、事業者、消費者が三位一体となる必要があると主張しました。

 他の消費者委員からも、契約時の説明が丁寧とは言えず、事業者からの消費者へのPRを含めたコミュニケーションがトラブル防止につながる(青森消費者協会常務理事 三澤委員)等の意見がありましたが、一方で、契約時に説明は受けていないが現状困っておらず有り難く供給を受けている(福島県婦人団体連合会事務局長 今村委員)、安全・安心が第一だが事業者を信頼している(秋田県地域婦人団体連絡協議会会長 小玉委員)、今後も引き続き事業者から安全な使用方法を指導してほしい(山形市消費者連合会会長 高橋委員)等々、事業者を頼る声も多く上がり、根強いファンが有ることも事実です。

 しかしながら、事業者委員は消費者委員からの厳しい指摘に対し、設備機器利用料金の別建表記等を含めた適正化の啓蒙や、ホームページ作成の補助を事務局として手掛ける必要性を示唆する等、各県LPガス協会として会員事業者に対する取り組みを進めている状況が示されました。

 行政として、東北経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課の田中課長からは、東北地方各県のLPガス担当部署との情報交換や保安に関する東北ブロック会議や研修会等にて説明を行っており、また東北各県を代表して宮城県総務部消防課の長谷川主幹からも、県の立入検査は保安主体となるが取引適正化は重点指導項目である旨県内453事業者に対し告知の上実施するとともに、県協会と協力し資源エネルギー庁谷企画官による啓蒙講演を企画する等、それぞれ料金透明化・取引適正化に関して東北地方での行政連携状況の説明がありました。

 本テーマの最後に、当センターより昨年度の資源エネルギー庁委託事業「流通・販売業経営実態調査」の結果を報告しました。昨年のペーパーでの実施とは異なり、本年度はWEBによるアンケート調査となったがPCやタブレット端末、スマートフォンにより極力容易かつ短時間に回答可能なように考慮したので、多くの事業者より回答願いたい旨、事業者委員に対し協力を要請しました。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
  LPガスが災害に強い理由として、軒下在庫があり劣化しないこと、迅速な復旧が可能で、炊き出しへの活用や、LPG車が稼働でき、都市ガスのバックアップも可能、分散型エネルギーのため途絶が少ない点等が挙げられるが、自然災害の多い昨今、実際に大きく貢献している。特に災害バルクは、昨年の北海道胆振東部地震による全道停電の際、同設備設置各所より発電機稼働等の活躍事例が多く報告されており、経済産業省もLPガス災害対応バルクへの補助金を増額したので、是非活用してほしい、と述べました。

 続いて、同補助金事業を受託する当センターより、補助金の概要とこれまでのLPガス災害バルクの導入状況、及び昨年度の約5倍の31.5億円(昨年度補正予算額を含む)となった本年度の予算に対する応募概況について報告しました。

 さらに、台風15号により千葉県君津市の学校給食センターが停電したが、LPガス災害バルクの導入がありながら、人員体制の問題により対応できず稼働しなかった例を挙げ、同県での他設置箇所についても具体的な状況を確認しつつ、補助金制度の運用については交付後のフォローアップも必要であることを伝えました。

 事業者委員からは、LPガス災害バルク導入についてこれまで県内半数以上の市町村の首長に直接働きかけを行っていること(秋田県LPガス協会専務理事 舩木委員)や、緊急時のみならず平時からのGHP配備は、ランニングコスト軽減にも有効であることを自治体及び市議会議員等に対しPRしていること(山形県LPガス協会会長 鈴木委員)、産業フェスティバル(10月6日登米市)にてLPガス非常用電源車と炊き出し実演の紹介(宮城県LPガス協会会長 渡邉委員)等、LPガス災害バルク普及に向けた取り組み状況が説明されました。

 東北大震災で実際に炊き出しを担当した、岩手県婦人消防連絡協議会会長の千葉委員は、数百人の被災者に無料で支給されたLPガスにより炊き出しを実施し料理提供の支援で感謝された実例を紹介し、各地で実施している防災・炊き出し訓練への参加を国に対し呼びかけるとともに、事業者間の協力協定締結の提案や被災時にこそ補助金が必要であることを訴えました。
家田課長補佐からは、自治体へのLPガス災害バルク導入を促進すべく、資源エネルギー庁より自治体の防災担当者に対し説明を開始するとの示唆がありました。


(3)総括コメント
               東北大学大学院 経済学研究科 吉田 浩 教授
 テーマⅠ.に関し、透明化と適正化とは消費者に納得してもらうこと、すなわち消費者が安心・安全のための料金である、と納得できるかどうかであり、生命保険など毎年契約内容が示されるのと同様に、LPガスも消費者と事業者間のコミュニケーションを密にし、料金透明化・取引適正化を推進して信頼を獲得していくべきである、と提言しました。
 また、テーマⅡ.では、災害対応の観点でLPガスは最先端のエネルギーであり、国及び事業者は是非地方自治体を中心に災害バルクの導入促進を図ってほしいとした上で、10月12日~13日に開催される東北大学附置研究所の一般公開(片平まつり2019)においてLPガス災害バルクの紹介を行っては、と提案し懇談会を締め括りました。


開催風景
 
開会挨拶する東北経済産業局 資源エネルギー環境部 奥村部長、
右は行政の連携状況を説明した資源・燃料課 田中課長

料金透明化・取引適正化の現状を説明する資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 家田課長補佐
調査結果や地域の実情を説明する消費者委員
消費者委員からの指摘に対し取り組み状況を説明する事業者委員
適正化について行政の地域連携状況を説明する宮城県総務部消防課の長谷川主幹
進行及び総括コメントする吉田教授

(広報室/野村 晃久)