LPGC WEB通信  Vol.68  2019.11.11発行 

北海道地方LPガス懇談会の概要

 本号で別掲載した近畿地方LPガス懇談会に続き、10月16日に北海道地方LPガス懇談会を開催したので、概要を報告します。
 司会・進行と総括コメントは、本年度の学識経験者委員として北海道教育大学札幌校の佐々木貴子教授にお願いしました。佐々木教授は、北海道胆振東部地震災害検証委員会の座長で、かつ北海道防災会議委員や北海道防災教育アドバイザー等、数々の北海道庁が諮問する災害関連機関に携わる有識者で、今般新たにLPガスについてご意見いただくこととなりました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
(1)開会挨拶
 北海道経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課 清野 正樹 課長
 様々な利点を有するエネルギーであるLPガスが、昨年の北海道胆振東部地震によるブラックアウトにおいて、文字通り「災害時の最後の砦」となって地域を支え、強靭な災害対応能力を立証した。
 料金透明化・取引適正化については、LPガスが信頼され選択されるエネルギーであり続けるために、北海道経済産業局ではこれまで制改定された法省令やガイドラインの遵守状況の検査に関し、道や市との意見交換を通じ地域での連携を強化している、と述べました。


(2)懇談
 進行:北海道教育大学 札幌校 佐々木 貴子 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」


 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷 浩 企画官
 LPガスの料金透明化については、各都道府県LPガス協会の努力の成果として、公表率が一昨年の調査段階で既に76.8%まで高まっている。現在調査は継続していないが、継続的な業界による取り組みに期待している。
 また、取引適正化については、消費者による問題意識がSNS等で共有され改善につながるのではとの思いで、特に課題のある集合住宅の入居者及び家主・管理者に対し調査を行なった。その結果、入居者の67.8%はLPガス料金が高いと感じ、48.5%が料金を見直したいと思っており、また86.7%が住設機器費用のLPガス料金への転嫁を認識していないとの回答となった、として目先の利益追求により将来の市場を壊すことにならぬよう、また健全化に向かおうとしているLPガス業界にブレーキがかからぬよう、と業界に対し警鐘を鳴らしました。
 これに対し、北海道生活協同組合連合会事務局長の川原委員は、LPガスの適正価格、安定供給、安全確保、と題した上で、料金透明化・取引適正化に向け国が定めた法省令やガイドラインの遵守や徹底が、未だ不十分であることを述べ、これまで同団体が主導してきた「LPガス問題を考える会」での取り組みの経緯を説明し、消費者に支持される業界へと期待を込め、改善に向けた次の提案や要望がありました。
  1. 国・北海道・札幌市等行政間の連携による法令遵守監視の継続。
  2. 集合住宅問題における、無償配管や住設機器のLPガス料金への転嫁情報の対消費者周知の徹底と、三部料金制度の導入促進。
  3. 不動産取引における重要事項説明書(国交省関連)への、住設機器の所有権及び費用負担関係の明記。
  4. 住宅建設側からLPガス事業者への住設機器投資強要の商習慣の、エネ庁と国交省の連携による是正
 続いて、昨年総務省北海道管区行政評価局が、LPガス取引適正化における道内行政の連携の必要性を北海道経済産業局に対し指摘したことについて、同局清野課長が指摘内容及び自治体(北海道庁・札幌市)との間で情報共有の会議等により連携対応している状況を説明した上、北海道経済部 足達主幹及び札幌市消防局 菊地消防司令補からも同様に、情報共有並びに事業者に対する検査状況について説明がありました。

 事業者委員からは、料金透明化及び取引適正化については、北海道LPガス協会として業界の将来を守るため、健全化を進めようとのコンセンサスとなっている、特に料金透明化については全国の組織をあげて公表状況を調査中である(同協会会長 鉢呂委員)として、改善に向けた取り組み状況が報告されました。

 消費者委員の北海道消費者協会専務理事 矢島委員からは、店頭表示は料金公表と言えるか?公表するなら標準のみならず全ての料金メニューを開示すべきでは?との投げかけがあり、これに対しエネ庁は、ホームページでの公表が望ましいが、店頭だけではなく電話での問い合わせにも答える必要がある、しかし料金メニュ-は配送費等個々に異なる要素が含まれているため、全メニューを公表することは難しいのでは、と回答しました。

 全国消費生活相談員協会北海道支部 消費生活相談員の竹ケ原委員からは、LPガスからオール電化への変更の際に、LPガス事業者から設備撤去を拒まれ変更できなかったとの相談事例を挙げ、行政の最終的な相談先が現状はないこと、また釧路消費者協会事務局長の武田委員からは、設備無償貸与等契約内容について消費者側も認識を高める必要があることは承知しているが、その一方通行だけではトラブルは減少しないので、消費者の意識が「LPガスに契約すると大変だ」、とならぬよう、行政の力も必要と思う、との意見がありました。

 次に当センターより、昨年の石油ガス流通経営実態調査の結果概要と本年度の調査方針についての説明をはさみ、さらに議論は続きましたが、引き続き料金透明化・取引適正化については各分野においてできることはさらに進めていくとの意見がそれぞれから発せられ、本テーマでの意見交換が終了しました。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷 浩 企画官
 昨年から今般の台風19号に至るまでの多くの大災害において、LPガスは途絶えることなく供給された、災害用としても優秀なエネルギー。このことに着目した埼玉県富士見市、和歌山市、大阪府箕面市、東京都府中市の小中学校はLPガスGHPを導入、大阪府泉佐野市でも18校がLPガス災害バルクやGHPの導入を決める等、多くの自治体が災害対応としてLPガスを選んでいる。
 事業者によるLPガスセールスは社会貢献であり、行政によるGHP導入は社会責任であると言えるので、避難所となる学校や公民館等の施設に、引き続き災害バルクやGHPの導入を推進してほしい、と自治体及び事業者委員に強く要望しました。

 続いて、同補助金事業を受託する当センターより、補助金についての概要とこれまでの補助金によるLPガス災害バルクの導入状況、及び本年度の予算に対する応募の進捗状況について報告、東京ビッグサイトにて出展した「危機管理産業展2019」(会期:10月2日から4日)の模様や、11月に公開する災害バルク専用WEBサイトについて案内した上、LPガス災害バルク導入事例の動画を、タブレット端末上で数分間鑑賞いただき、災害時における実効性や必要性への理解を深めていただきました。

 北海道LPガス協会理事の沼田委員からは、胆振東部地震で被災したにも拘わらずLPガスによるリフォームの相談や、行政からの災害対応に関する反応がない実態があり、今後さらにPRを強化すると表明するとともに、昨年の胆振東部地震の際、カップリング接続のLPガス容器を100本用意し役立てた実例(同協会石狩支部)を挙げ、資格なしですぐに扱える質量販売は災害時に特に有効である旨が示されました。
 その他、分散型エネルギーで災害時にも優秀なLPガスは、見守り活動にも有効でありこれから大きな役割を担うことになると期待している(矢島委員)、地元にはLPガス災害バルクの設置例がないので今後期待している(武田委員)等、消費者委員は災害対応におけるLPガスに対し、エールを送りました。

 本テーマの最後には、北海道経済産業局の清野課長より、昨年のブラックアウト時に非常用発電機設置について各病院にその燃料の種類と燃料在庫について問い合わせたが、どちらも不明であるとの回答が多く、災害時のエネルギーに対する現場の認識が薄いと感じている、また病院事務長の役割が重要であるが彼らとのネットワークが弱いことを挙げ、全道の病院事務長と経済産業局の、現連絡体制において、緊急時は自治体を経由せずショートカットが可能な連絡体制とし機動性を高めた、との報告がありました。


(3)総括コメント
             北海道教育大学 札幌校 佐々木 貴子 教授
 消費者と事業者間の関係構築には、事業者、消費者それぞれの立場で教育が必要である。料金透明化・取引適正化の達成は、零細かつ高齢化する事業者の問題があるが、契約等に係る集合住宅入居者への説明責任を果たしていくことの重要性を示していく等、規模別にきめ細かい指導が必要となる。
 教育の観点では、令和2年度より小・中・高と毎年順次新学習指導要領に移行するが、学校教育においてはこれから消費者教育が重要視されるようになる。エルピーガス振興センターは、新潟県や東京都の中学校の授業で、災害に強いLPガスのことを知ろう、消費者としてどんなエネルギーを選ぶか、といったテーマで授業(LPガス講習会)を実践している。都市部においては、都市ガスが当たり前の子供たちが多いが、消費者としてエネルギーの自由化との観点で様々なエネルギー学習は重要である。
 また、LPガスが環境や災害に対し大きなメリットがあることも、あらためて強く認識した。教育界においては、家庭科や社会科、理科、公共(高等学校の新たな教科)等の各教科の連携が重要視されている中、これらの要素をこれからの教育・指導に活かしていきたい。


◆開催風景

LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について説明する
資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 谷企画官


独自調査結果をもとに意見する消費者委員

地域の実情を訴える消費者委員

地域行政における情報共有の取り組みについて説明する
北海道経済産業局 清野資源・燃料課長


自治体の取り組みを説明する札幌市消防局消防司令補(右)
及び北海道経済部足達主幹(左)

 
健全化に向けた取り組みを説明する事業者委員

進行及び総括コメントする佐々木教授
(広報室/野村 晃久)