LPGC WEB通信  Vol.69 2019.12.10発行 

四国地方LPガス懇談会の概要

 去る10月21日に四国地方LPガス懇談会(対象県:香川県・徳島県・愛媛県・高知県)を開催しましたので、概要を報告します。
議事進行と総括コメントは、四国地方における本年度の学識経験者委員として香川大学経済学部の古川尚幸教授にお願いしました。古川教授は、「商品学」を専門分野とし、四国経済産業局の諮問機関である四国地域エネルギー・温暖化対策推進会議の議長であるとともに、「エネルギーと暮らし、環境と暮らし」を研究テーマに、四国地方の様々な諮問機関の会長、委員長、委員を務められる有識者であり、今般新たにLPガスについてご意見をいただくこととなりました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)テーマ ①料金透明化・取引適正化の現状について
       ②LPガスの災害対応能力について
(4)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
(1)開会挨拶
四国経済産業局 資源エネルギー環境部 松原 浩司 部長
 総世帯の約4割が使用し産業・生活に密着したエネルギーであるLPガスは、何より安定供給が重要であるが、各ステークホルダーから支持されるエネルギーであり続け、理解される取り組みには何が必要なのかをこの場で議論し、皆様のご意見をより良い政策作りに活かしていきたい、と述べました。


(2)懇談
議事進行:香川大学経済学部 古川 尚幸 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」


 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
 LPガスの料金透明化・取引適正化については、未だ不十分と言わざるを得ない状況である。それぞれの分野で課題に取り組むにあたり、この懇談会での議論で共通認識をもってほしい、とした上で、法省令改正・ガイドライン制定等の措置に至った経緯、料金公表の実態、集合住宅における料金問題の実態と課題について説明がありました。LPガスは世帯数が都市ガスを上回る県が47都道府県中3分の2ある重要なエネルギーであり、この懇談会で議論された内容については政策検討に活かしていきたい、と述べました。

 これに対し、高知県生活協同組合連合会事務局長の中野委員は、料金透明化・取引適正化について同県の消費生活センターへの相談事例聴取、及びこうち生協の10事業所による料金調査結果をまとめ、電力自由化は競争原理から恩恵を受ける可能性が期待できるが、元来自由なLPガスの料金に消費者側の自由が感じられていない、との消費者意見を報告しました。その上で、改善が進んでいることはわかるが、感じられるスピード感をもって取り組んでほしいと要望しました。

 続いて、四国経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課 範国課長より、取引適正化に関する管内4県の自治体や事業者団体との連携について状況説明があり、これを受け自治体を代表して高知県消防政策課の山﨑チーフより、各県の取り組みについて説明がありました。山﨑チーフからは、廃業する事業者が増加している状況も報告されました。

 事業者委員からは、料金公表率が本年度の全国LPガス協会調査で100%となったが、ホームページ掲載による公表率を上げていきたいとの意欲を表明(徳島県LPガス協会専務理事 髙瀬委員)があり、また県内事業者に対して実施した料金透明化に係る独自調査の結果報告(愛媛県LPガス協会会長 髙須賀委員)、14条書面の改訂と同交付時の確認書面により改正液石法省令及びガイドラインの徹底を県内事業者に図った例(高知県LPガス協会会長 小野委員)、同じく料金算定基礎を明示する納品伝票の作成販売例(香川県LPガス協会会長 赤松委員)等の紹介があり、販売事業者の料金透明化・取引適正化推進に対する一層の尽力が伺われました。

 ここで、中野消費者委員より、「店頭価格は公開と言えるか?容易に比較検討可能なホームページ上での公表とは違うのでは?」との投げ掛けがありましたが、これに対し古川教授より、「公表イコール理解ではないが、まずは(店頭を含み)公表率を上げることが先決、次に理解を求めることとしては?」との提案がありました。

 他の消費者委員からは、高齢者にもよりわかり易い料金説明を望む声(香川県婦人団体連絡協議会会長 野田委員)、消費者が公表率向上を訴えてきた成果として全国最下位から本年度100%とした協会の努力を称え、今後も一体となりさらなる透明化を進めたいとの意向表明(徳島県消費者協会前会長 安田委員)、契約書は自宅にあったが14条書面が不明、そもそも14条書面の意味が良く分からないので説明を受けたいとの要望(えひめ消費生活センター友の会副会長 越智委員、本件は事業者委員より即答がありました。)等の意見が上がりました。
意見交換のあと、当センターより昨年度の資源エネルギー庁委託事業「流通・販売業経営実態調査」の結果を報告と、本年度調査についての協力要請を行いました。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
 LPガスは、軒下在庫があり劣化しないこと、迅速な復旧が可能で、炊き出しへの活用や、LPG車が稼働でき、都市ガスのバックアップも可能なことから、災害に強いエネルギーである。分散型エネルギーのため途絶リスクが少ない点等メリットが多く、自然災害の多い昨今、実際に大きく貢献している。特にLPガス災害バルクは、昨年の北海道胆振東部地震による全道停電の際、同設備設置各所より発電機稼働等の活躍事例が多く報告されており、経済産業省も今後の対応としてLPガス災害対応バルクへの補助金を増額したので、是非活用してほしい、と述べました。

 続いて、同補助金事業を受託する当センターより、補助金についての概要とこれまでの補助金によるLPガス災害バルクの導入状況、及び本年度の予算に対する応募の進捗状況について報告、東京ビッグサイトにて災害バルク等の実機を展示・出展した「危機管理産業展2019」(会期:10月2日から4日)の模様や、11月に公開予定の災害バルク専用WEBサイトについて案内した上、導入事例の動画を、タブレット端末上で数分間鑑賞いただき、災害時における実効性や必要性への理解を深めていただきました。

 事業者委員からは、消費者団体と連携して実施した中核充填所での炊出しを含む防災訓練の紹介(香川県LPガス協会会長 赤松委員)、公的施設への常設・常用LPガス設備に係る3年越しの設置請願の結果新設が叶った事例や、事業者に対する学校体育館へのLPガス設備導入提案書作成の研修会開催(徳島県LPガス協会専務理事 髙瀬委員)、西日本豪雨災害により建設された仮設住宅へのLPガス衣類乾燥機提供(愛媛県LPガス協会 髙須賀委員)等、各県の事業者団体としての災害対策の取り組みが披露されました。各県の公的施設への導入の取り組みには、県議会議員や首長への働き掛けが重要であることも示されました。
 また国に対し、災害時に有効な「LPガス電源車」の普及に向けた補助金の設定についての要望もありました。(愛媛県LPガス協会 髙須賀委員)

 一方消費者委員より、災害時の女性の力について、「炊出しのおばさん」だけではなく今後は防災活動のスキルアップのため女性や高校生以上の学生を対象に教育を強化する必要性や(香川県婦人団体連絡協議会会長 野田委員)、豪雨の頻度は高まると言われている中、体育館及び避難所へのLPガス設備導入推進を願う(徳島県消費者協会前会長 安田委員)等の意見が出されました。


(3)総括コメント
              香川大学経済学部 古川 尚幸 教授
 専攻する「商品学」から考察すると、LPガスは生産財商品/消費財商品の両面がある興味深い商品である。商品学では「品質」が重視され、客観的品質と主観的品質がある。LPガスは、色柄デザイン等商品そのものを差別化(主観的品質を重視)した消費財商品というより、客観的品質を重視する生産財商品に近く、品質はどこで購入しても同じなので価格が重要な決め手となり、従って価格の透明性が重要な要素となる。
 また、災害でLPガスの強さが報道されているが、LPガスが災害対応力の高いエネルギーであることをまだ良く知らない消費者に対し、事業者はその良さを十分に訴え理解が得られるよう取り組んでほしい。
 行政・消費者・事業者が一堂に会する当懇談会は、他のエネルギーにはない取り組みなので、是非継続し、本日消費者委員から出た応援を含めた意見をもとに、事業者委員はより良いエネルギーを目指してほしい、と懇談会を締め括りました。


◆開催風景

開会挨拶する四国経済産業局資源エネルギー環境部 松原部長、
左は四国地方の行政連携状況を説明した同部資源・燃料課 範国課長

LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について説明する
資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 家田課長補佐

独自調査結果をもとに意見する消費者委員

 
地域の実情を報告し意見する消費者委員

四国地方の自治体としての取り組みを説明する高知県消防政策課 山﨑チーフ
及び四国地方各県担当者

料金透明化・取引適正化及びLPガス災害対応について取り組みを説明する事業者委員

 
進行及び総括コメントする香川大学経済学部 古川教授


(広報室/野村 晃久)