LPGC WEB通信  Vol.70 2020.01.06発行 

中国地方LPガス懇談会の概要

 11月8日に中国地方LPガス懇談会(対象県:鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県)を広島市内にて開催しましたので、概要を報告します。
 本年度の議事進行は、一昨年より当地方の懇談会で総括コメントをいただいている広島経済大学メディアビジネス学部長の北野教授に、併せてお願いしました。
 北野教授は、前職の広告代理店で35年間マーケティングに携わり、2015年4月に大学教授に転身、前職在職中の2009年4月以降現在に至るまで、内閣府地方創生推進事務局の施策「地域活性化伝道師」(地域興しのスペシャリストとして自治体・団体等の相談に派遣される)の登録を受け、地域研究及び地域活性化に取り組んでおられます。議論の中では、専門分野の見地からも様々なご意見をいただきました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)テーマ ①料金透明化・取引適正化の現状について
       ②LPガスの災害対応能力について
(4)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
(1)開会挨拶
中国経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課 中村 実 課長
 LPガスは、急速な普及を遂げ高圧ガス保安法による対応で事故も減少、安定的な発展となったが、昨今需要が漸減し事業者数も減少している。しかしながら、総世帯の4割が使用する生活及び産業に密着したエネルギーであるLPガスは、第5次エネルギー基本計画において災害時には「最後の砦」と明記される、国民生活に不可欠なエネルギーである。消費者に愛され安心して使っていただくために、当懇談会を明日に繋がる意義ある意見交換の場にしたい、と述べました。


(2)懇談
議事進行:広島経済大学メディアビジネス学部長 メディアビジネス学科主任
北野 尚人 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」


 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 直井 雄基 企画係長
 LPガスは、生活の基盤として根付いているエネルギーであるが(中国地方5県中4県は過半数がLPガス世帯)、料金がわかりにくいとの消費者意見が、平成28年5月に発表された液化石油ガスワーキンググループの審議結果として報告され、LPガスは料金情報が不足しているとの状況が明らかとなった。以降、契約前、契約時、契約中、契約終了時の各段階ごとの料金透明化・取引適正化について、ガイドライン制定を含む法的措置により明確化した経緯や、現状の課題について説明がありました。
 また、本年度のLPガス懇談会においてはペーパーレスを推進すべくタブレット端末による資料閲覧を行っているが、行政諸手続きにおいても電子化が進んでおり、消費者が承諾すれば液石法14条書面の電子媒体による交付を可能とする政省令改正について手続き中であることが示されました。

 これに対し、広島県生活協同組合連合会専務理事の高田委員は、LPガスは公共性が高く災害時に強い期待のエネルギーであることと、課題の料金透明化・取引適正化に向けた行政、事業者によるこれまでの取り組みを高く評価しながらも、後者は未だ道半ばであるとして、日本生活協同組合連合会による本年度の電気・ガス料金調査報告(全国)を引用し、消費者意識の実態から改善要望に繋げました。
 LPガス料金が都市ガスに比べ高く、地域格差も大きいこと、都市ガス自由化の認知度は未だ低いが、同様にLPガスが自由料金であることの認知度も低いこと、基本料金無記載の検針伝票の実例を示し事業者によって記載内容が異なること等の例を挙げた上、行政・LPガス販売事業者団体・消費者団体の相互協力と連携を図るべきとしました。
 具体的には、
 ①正確な情報の共有
 ②LPガス協会との懇談機会の促進
 ③LPガス販売事業者への改善指導状況の把握と開示
を要望し、消費者の「知る権利」「選択できる権利」の尊重と透明性のある市場イメージの構築を求めました。

 続いて、中国経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課 加藤課長補佐より、取引適正化に関する管内5県の自治体及び事業者団体との連携について状況説明があり、これを受け自治体を代表して岡山県消防保安課の奥山技師より県としての取り組みについて説明がありました。
 尚、本件に絡み広島県消防保安課の木下主査は、本テーマの後段で、県の立入検査状況を報告するとともに、経済産業局による管内14事業者に対する検査状況について質問、年間3~4事業者で一巡に4年程かかっているとの中国経済産業局の回答に対し、より早期化すべきと意見しました。

 LPガス料金が高いとの消費者意見に対し、事業者委員からは、低減努力しているもののその一因として集合住宅オーナー(住宅メーカーや建築士を含む)から過剰な住設費用負担を強いられ、LPガス料金に反映させ回収せざるを得ない実情を挙げ、住宅建設側に対し行政指導を要望する意見が上がりました。(広島県LPガス協会会長 武信委員、岡山県LPガス協会会長 藤田委員)
 これに対しエネ庁からは当該事例には違法性がなく法的制約はできないが、エアコン設置費用等本来家賃に含むべきものをLPガス料金の一部として徴収する場合は、確り料金内容を説明することに尽きる、と説明しました。
 また、県LPガス協会の消費者懇談会でLPガス料金について不満の声はなく、「田舎の論理」ではあるが消費者が興味のない情報提供は現状不要では? また市場がコンパクトなのでLPガスと無関係な住設費用を料金に含むことはないとの認識であるとの意見(鳥取県LPガス協会会長 水谷委員)、また同県とっとり県消費者の会会長の福井委員からは、自宅の検針伝票は丁寧に記載されていてわかり易い、との意見が出ました。
 この鳥取県の好例が水平展開され、さらに見守り等の付加価値サービスをLPガス業界に望む、との要望が高田委員より上がり、北野教授は「地域の特性により可不可はあるが、透明性についてはどの地域でも必要」と消費者に対する情報提供の必要性を力説しました。

 議論の終盤に、藤田委員は、見回り活動等事業者による付加価値サービス合戦の中で透明性を確保していきたいと表明、また益田市消費者問題研究協議会会長の光永委員は、オール電化では考え難いがLPガスなら事業者と「友達」になるメリットがあるとの意見が多いとの発言に対し、北野教授は、「友達」の関係づくりは付加価値サービス上重要な示唆である、とコメントしました。

 意見交換のあと、当センターより昨年度の資源エネルギー庁委託事業「流通・販売業経営実態調査」の結果を報告と、本年度調査についての協力要請を行い、本テーマを終了しました。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 直井 雄基 企画係長
 昨今の多発する大災害で、LPガスは昨年当地方の豪雨災害で充填所の機器不全や容器流出があったが、それ以外の二次災害や途絶等の大きな被害が無く、他の系統エネルギーに比べ災害に対する強靭な対応能力を有することが、政府の中でも認識されている。今後もLPガスの災害バルクや発電機の導入を、補助金制度の活用及びPRの強化によりさらに充実させていくとの説明がありました。
 また、国土強靭化計画においてもLPガスによる災害対応が織り込まれており、令和2年度予算については今年度またはそれ以上の金額を要求中であり、災害対応の軸にしていきたい、と述べました。

 続いて、同補助金事業を受託する当センターより、補助金についての概要とこれまでの補助金によるLPガス災害バルクの導入状況、及び本年度の予算に対する応募の進捗状況について報告、東京ビッグサイトにて出展した「危機管理産業展2019」(会期:10月2日から4日)の模様や、11月中旬に公開予定の災害バルク専用WEBサイトについて案内した上、同サイト内で案内するLPガス災害バルク導入事例の動画を、タブレット端末上で数分間鑑賞いただき、災害時における実効性や必要性への理解を深めていただきました。

 事業者委員からは、昨年の西日本豪雨災害時におけるLPガス容器流出対策への取り組みや、被災地へのLPガス衣類乾燥機提供等の対応が紹介され、容器固定チェーンの二重掛けやガス放出防止型ホースへの取り替え等、予防策を励行するとの表明がありました。(藤田委員)

 また、消費者委員からは、県内のLPガス災害バルク設置が2件と少ないため、県LPガス協会と協力して行政に対し公共施設や避難所への設置の働き掛けを実施したいとの意向(山口県地域消費者団体連絡協議会会長 吉冨委員)や、同居の家族が自分の留守中にオール電化への切替契約にサインしたが、1カ月後に停電となったことで身に沁み、自宅をLPガスに戻すとともに、離れた家族もLPガスに替えた経緯と所属団体での情報共有が説明され(岡山県婦人協議会会長 大西委員)、災害に対するLPガスの強さを身をもって知ったことからの消費者委員の活動や行動が示されました。

 最後に、広島県木下主査より昨年の西日本豪雨災害の容器流出に関し事業者委員に対しコメントがあり、中国5県が協力して容器回収の体制を一刻も早く整備し、消費者の不安を払拭してほしいと要請しました。


(3)総括コメント
              広島経済大学メディアビジネス学部長 メディアビジネス学科主任
北野 尚人 教授
 両テーマを通じ、LPガスを使おうとする人に対する情報発信の方法を再考する必要がある。近年様々なことでインフラが変わってきており、本日もタブレットを使用したが、慣れれば便利である。若い人はスマホでモノを選んでおり、PCではなくスマホをキーディバイスと考えないと利用されないので、小規模事業者においてもスマホをイメージしたホームページ作りが必要である。
 また、消費者委員から意見のあった、事業者との関係構築において「友達」になるとの観点は重要であり、様々な情報共有の方法を考えてほしい。
 さらに、「14条書面」は業界用語でありエンドユーザーに伝わりにくく、また高齢者向けパンフレットはさらに手を入れ伝わり易くする必要がある、と未だ送り手の論理となっている要素を例示して情報発信方法の改善を求め、LPガス産業の健全な発展を期しともに未来をみよう!とのエールで懇談会を締め括りました。


◆開催風景

開会挨拶する中国経済産業局資源エネルギー環境部資源・燃料課 中村課長、
左は中国地方の行政連携状況を説明した同課 加藤課長補佐

LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について説明する
資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 直井企画係長

独自調査結果をもとに意見する消費者委員

 
地域の実情を報告し意見する消費者委員

中国地方の自治体としての取り組みを説明する岡山県消防保安課 奥山技師(左端)
及び中国地方各県担当者

料金透明化・取引適正化及びLPガス災害対応について取り組みを説明する事業者委員

 
進行及び総括コメントする広島経済大学メディアビジネス学部長 北野教授


(広報室/野村 晃久)