LPGC WEB通信  Vol.70  2020.01.06発行 

九州・沖縄地方LPガス懇談会の概要

 11月8日開催の中国地方に続き、本年度最終の地方懇談会となる九州・沖縄のLPガス懇談会(対象県:福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県)を、11月25日に福岡市内で開催しましたので概要を報告します。
 本年度の議事進行は、長期に亙り九州・沖縄地方LPガス懇談会で総括コメントをいただいている福岡大学商学部の笹川教授に併せてお願いしました。
 笹川教授は、流通政策、商業組織の動態、中小商業論、地域商業論の商学分野を研究テーマに教鞭をとられ、学外では日本中小企業学会等諸学会の役員・委員として社会貢献活動されています。当懇談会の学識経験者委員には、平成17年度以降継続してご就任いただき、今回で15回目となりますが、この間の大きな環境変化の中で、LPガスの諸問題がどう変化しているか、或いは変化がないのかを含め、ご意見をいただきました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内の主要都市にて開催する。
(3)テーマ ①料金透明化・取引適正化の現状について
       ②LPガスの災害対応能力について
(4)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等
       報道関係……………業界紙等の記者


議事の概要
(1)開会挨拶
 九州経済産業局 資源エネルギー環境部 柳生 勇 部長
 LPガスは、九州での世帯普及率が54%を占め、災害時にも迅速に供給再開が可能なインフラを有する地域に密着した重要なエネルギーである。電力や都市ガスの小売り自由化で大きな環境変化がある中、保安の確保はもとより料金透明化・取引適正化を積極的に推進し、消費者に魅力的なサービスを提供することが、LPガスが選ばれ需要拡大に繋がると確信する、と述べました。


(2)懇談
 議事進行:福岡大学商学部 笹川 洋平 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」


 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 直井 雄基 企画係長
 小売り自由化となった電力・都市ガスに比べ、元々自由料金であったLPガスは料金情報が不十分であるとの状況から、契約前、契約時、契約中、契約終了時の各段階における料金透明化・取引適正化についての課題と、これらに対する法的措置に至るまでの経緯について説明がありました。
 また、本年度のLPガス懇談会においてペーパーレスを図るためタブレット端末による資料閲覧を行ったことに触れ、行政手続きの電子化が進んでいる中、LPガスも同様であり、液石法の14条書面も消費者から希望があれば電子媒体による交付を可能とする政省令改正を進めており、まもなく結果発表があるとの表明がありました。

 次に、生活協同組合コープおきなわの与座委員が、組合員や総代対象として沖縄本島内でブロック毎に実施したLPガス学習会等において出された、LPガス料金についての意見等をもとに見解を述べました。同氏は、「自由料金であることを知らなかった」、「料金が各戸により異なることを知らなかった」、「料金の中身がわからない」、「料金の比較方法がわからない」といった意見が多く、LPガス料金への関心は今後一層高まるのでは?として、消費者はなぜこのような認識なのかが問題であると指摘。LPガスが支持されるためには、消費者の要望する「知る権利と選択の自由」の確保が必要であり、今後も離島を含め学習会の開催を継続するとともに、料金透明化に向けた働きかけに取り組みたいとの意欲を示しました。

 続いて、九州経済産業局 資源エネルギー環境部 石油課の河野課長補佐より、LPガスの取引適正化に向けた管内の連携を深めるべく、各県LPガス担当課との「九州地域LPガス取引適正化担当者会議」及び各県LPガス協会とも「LPガス取引適正化に係る連絡会議」を開催し、立入検査の実施状況や、消費者相談等の状況について意見交換している状況が説明されました。
 また、福岡県商工部工業保安課の小嶋LPガス火薬係長からは、平成29年の法省令改正後、立入検査に「請求書書式」「料金公表」「料金変更時の事前通知」等の項目を追加していること、昨年度は県内664事業者の内145事業者の立入検査を実施、うち数件に14条書面交付、料金公表、料金変更時の事前通知を実施していない事業者があり、口頭にて事情確認を行った事例が紹介されました。

 事業者委員からは、料金透明化・取引適正化は本年度協会事業の柱、ホームページによる料金公表や料金内訳が明記された請求書等について啓蒙・指導を強化している(沖縄県高圧ガス保安協会会長 渡口委員)、九州経済産業局との連絡会議にて行政との連携を図り会員会社の取引適正化を指導するとともに、訪問販売時のモラル向上や不法勧誘防止等の啓発活動により消費者の理解が得られるよう努力している(福岡県LPガス協会会長 和田委員)、またホームページでの料金公表については県内事業者の34%がホームページを保有しその77%が料金を公表、100%を目指し啓蒙活動を行っている(佐賀県LPガス協会会長 大塚委員)、料金公表率は店頭表示で100%となったが、基本料金、2部制・3部制料金の詳細内容やあるべき表示方法を明確に理解していない事業者があり、また集合住宅建築主にLPガス消費設備を事業者が無償提供して結果的にLPガス料金が高いものとならぬよう、建築関連団体に協力を求める努力をしても、聞かない事業者もあること、加えて自宅のエネルギーについて十分把握していない消費者もあること等、様々な背景を理解した上で本件を議論する必要がある(大分県LPガス協会会長 山田委員)との意見が出ました。

 これらの事業者委員の意見に対し消費者委員からは、消費者もLPガス料金に対する認識を高める必要がある(鹿児島県地域女性団体連絡協議会会長 伊佐委員)、集合住宅のLPガス料金については管理者側への研修(省令やガイドライン)により改善されるのではないか(大分県消費者団体連絡協議会会長 小野委員)、消費者として何をどう希望していくかも重要(長崎県消費者センター相談員 頼富委員)、「LPガスのある暮らし“料金透明化・取引適正化編”」(弊センター発行リーフレット)がわかり易く参考になる、また山田委員発言の建築関連団体への働きかけ等を継続して悪しき商習慣を排除してほしい(コンシューマー福岡会長 柴富委員)等の意見や要望が出されました。

 ここで当センターより、昨年の石油ガス流通経営実態調査の結果概要の説明、及び本年度の調査方針説明と協力要請を行ったあと、再び意見交換は続きます。
 伊佐委員が、LPガス料金をガソリンスタンドのように店の外に掲示すれば透明化につながるのではと提案、直井企画係長は、LPガスは契約に基づき届けるものでガソリンのように買いに行くものではない点で大きく異なる、比較して選択してほしいが比較機会が少ないのが実態であり、事業者による料金公表をさらに進めるべく取り組むと回答しました。
 また、福岡県消費生活センター相談啓発課の原課長は、事業者が料金を公表してもしなくても消費者は逃げないから良いということはないのでは?消費者の料金への関心度が低いことを一因としたり、協会は事業者を指導しきれないといった発言に異論を唱え、国や事業者はもっと危機感をもって取り組んでほしい、と他エネルギーや他業種と比較しての料金透明化・取引適正化へのLPガス業界の取り組み姿勢に苦言を呈しました。
 これに対し長崎県LPガス協会会長の荒木委員は、楽観はしていないが、料金透明化を進めるには中身(料金以外)についてより深刻に調査すべきであり、物流、人材、サービスそれぞれに事業者間格差やコスト差があることを理解してほしい、このような差が理解されないまま料金要素のみで選択されれば、場合により消費者に不利益となる、正直な事業者が馬鹿を見ることの無いようにしたいが逆の事業者を排除できておらず苦慮している、と料金透明化と並行して様々な課題に取り組む実情を説明しました。
 また和田委員は、輸入価格の変動等諸要因による料金改定についてはホームページで案内しており、サービス内容等の詳細についても問い合わせをお願いしたい、と消費者からのアプローチに理解を求め、テーマ1.での意見交換が終了しました。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 説明:資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 直井 雄基 企画係長
 LPガスはコストをかけ各家庭に配送されているので、必ず在庫があるということであり、強いインフラを持つ。昨今の多発する大災害でLPガスは途絶せず、二次災害等の被害も無く、また輸入基地や中核充填所の出荷機能強化等により、他の系統エネルギーに比べ災害に対する強靭な対応能力を有していることから、LPガスの災害バルクや発電機の導入を促進するべく、補助金制度の拡充及びPRの強化を進めていくとの説明がありました。

 続いて、同補助金事業を受託する当センターより、補助金についての概要とこれまでの補助金によるLPガス災害バルクの導入状況、及び本年度の予算に対する応募の進捗状況について報告、東京ビッグサイトにて出展した「危機管理産業展2019」(会期:10月2日から4日)の模様や、公開した災害バルク専用WEBサイトについて案内した上、LPガス災害バルク導入事例の動画を、タブレット端末上で数分間鑑賞いただき、災害時における実効性や必要性への理解を深めていただきました。

 事業者委員からは、体育館へのGHP導入を訴求すべく一般紙への全面広告掲載と民放TVCMでのPR活動や県議会や教育行政当局への陳情を実施した例や(長崎県LPガス協会会長 荒木委員)、熊本地震の経験を踏まえ容器の二重チェーン掛け及びガス放出防止型高圧ホースのさらなる普及を協会の重点項目として積極展開する例(熊本県LPガス協会会長 佐藤委員)、南海トラフ地震を想定したBCPシートを作成し会員に災害に対する準備を呼びかける取り組み(宮崎県LPガス協会会長 森委員)等が紹介されました。
 また、県内10支部ごとに「緊急連絡網」を確立して非常時に備えるとともに、中核充填所での持ち回りによる防災訓練の実施や県主催の防災訓練へも参加して災害時対応の習得に努める等の取り組み紹介に加え、災害時に重要な役割を果たすGHP等のLPガス設備導入について、是非消費者委員から地元の市・町長に働きかけてほしいとの要望もありました(鹿児島県LPガス協会会長 秋元委員)。

 消費者委員からも所属団体における取り組みについて説明があり、防災訓練の実施(伊佐委員、宮崎県地域婦人連絡協議会副会長 黒木委員)や県・協会主催の防災訓練への積極参加(熊本県地域婦人会連絡協議会事務局長 田川委員、小野委員)、団体の県大会で災害に強いLPガスについての説明の場を設け県協会、弊センターの講師協力を得て会員にPRしたこと(黒木委員、伊佐委員)等が説明されました。


(3)総括コメント
             福岡大学商学部 笹川 洋平 教授
 消費者委員からは依然として料金透明化問題が提起されたが、事業者委員からは透明化に向け取り組む一方で、ブローカー営業や集合住宅の料金問題に苦慮している実態が浮き彫りとなった。これらは、現在の業界商慣行において「隙間」があることに起因するといわざるを得ず、料金公表は進んでいるが、料金改定の根拠明示や設備所有者の明確化等、目に触れない部分での徹底した透明化が徹底されないと、LPガス仕様の住宅には入居されなくなり、業界自身が損害を被ることとなるので、事業者は当該課題の克服に挑んでほしい。
 また消費者は、料金を相互比較した際に皆違うとの認識のみで立ち止まらず、自らの権利を守るべく説明を求める等一歩踏み込んでほしい。
 この両者の取り組みが進めれば、さほど時間をかけずに前進することと思う。
 LPガスのマイナスイメージが拡大されると、災害時に有効である等本来の良さを消費者が享受しないまま遠い存在となってしまい、業界衰退を招くこととなる。
 是非、行政、LPガス事業者、消費者それぞれの取り組みが、うまく噛み合うことに期待したい、と当懇談会を総括しました。


◆開催風景

開会挨拶する九州経済産業局資源エネルギー環境部 柳生部長、
左は九州地方の行政連携状況を説明した同部石油課 坂口課長

LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について説明する
資源エネルギー庁 資源・燃料部 石油流通課 直井企画係長


所属団体の調査結果をもとに意見する消費者委員

地域の実情をもとに意見する消費者委員

自治体の取り組みを説明する福岡県商工部工業保安課 小嶋LPガス火薬係長(左端)
及び九州・沖縄地方各県担当者


 
料金透明化・取引適正化及びLPガス災害対応について取り組みを説明する事業者委員

進行及び総括コメントする笹川教授


(広報室/野村 晃久)