LPGC WEB通信  Vol.77  2020.10.12発行 

令和2年度LPガス懇談会がスタートしました!(北関東地方)

 経済産業省資源エネルギー庁の委託事業「石油ガス流通・販売業経営実態調査」として、当センターが実施する「LPガス懇談会」を、去る8月23日にWEB会議上の「北関東地方LPガス懇談会」より開始し、対象の茨城、栃木、群馬、新潟、長野各県の消費者委員及び事業者委員、学識経験者委員、行政が出席しました。
本年度のテーマとして予め設定した、
①料金透明化・取引適正化の現状と対応
②新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応
③災害対応の現状と課題
の各テーマについてそれぞれ資源エネルギー庁からのプレゼンテーションの後、テーマ毎に活発な意見交換が行われました。
本年度も、テーマに基づき自県を超えたエリア全域の共通課題に対し、他県の事例も参考としながら、従前にも増して議論が深まりました。
また、本年度は新型コロナウイルスの感染防止策としてWEB会議による開催とし、資源エネルギー庁石油流通課および振興センター事務局のプレゼン内容を動画化し、事前に視聴頂く等、会議運営方法の一部に新たな試みを加えました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内を対象にWEB会議にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部


議事の概要
(1)開会挨拶
 関東経済産業局 資源エネルギー環境部 近藤かおる 地域エネルギー振興企画官
 新型コロナウイルス感染禍において、感染防止対策の徹底による事業継続、消費者の料金延滞等への柔軟な対応等に感謝する。本懇談会は消費者とLPガス事業者(以下「事業者」という。)の相互理解を深め、LPガス産業の発展のための施策を考える重要な場である。
 今年は新型コロナウイルス感染(以下「コロナ感染」という。)に対する各位の取組み、情報提供等、この場での忌憚ない意見交換をお願いしたい。また、国の補助金を活用した災害に強いLPガスの利用等議論いただきたい、と述べました。


(2)懇談
司会・進行:青山学院大学 総合文化政策学部 内山 隆 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」

 進行の内山教授から資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)とエルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)の事前プレゼンに関し以下とりまとめがありました。
 エネ庁プレゼンでは、
1.LPガスは日本の世帯の4割が使用する需要なエネルギー
2.平成28年にLPガス料金(以下「料金」という。)透明化の議論がはじまり、取引適正化への指針がとりまとめられた、
3.指針とりまとめ時5割に満たなかった料金公表率は今や92%。振興センターのアンケート分析では、①事業者の81%が料金体系を契約時に消費者に説明している、②他方、解約時に関する説明は40~50%、③料金公表方法では店頭表示が60%を超えるが、ホームページ公表は20%強と浸透していない、④60%の事業者が住宅の生活機器コストを負担している、そのうちの70%以上の事業者が負担分を料金に転嫁していない。
本テーマは繰り返し議論されているが、消費者と事業者が納得いく段階には「道半ば」であり、この点を議論したい、との議論への導入がありました。

 これに対し消費者委員側からは次のような発言がありました。
 振興センターのアンケート回収率が1割強では信憑性に欠ける。より高い回収率が実現されれば、もっと違った状況が分かるのではないか(茨城県 鈴木委員)。料金の店頭表示はほとんどが目に入らない。また、戸建てに比べ集合住宅の料金が高いという苦情が多い。集合住宅の料金については消費者が納得できる説明が必要だ。料金をクレジットカードで決済しなければ330~500円の手数料を要求される、という苦情が多い(群馬県 飛澤委員)。料金の透明化はできていないようだ。店頭表示もみられない。基本料金も業者間で異なっており不明確である(栃木県 菊池委員)。料金を三部制に統一し全国展開すれば消費者に分かりやすのではないか。料金を店頭表示されても見に行くことがない。契約書面を紛失する消費者もあり、事業者が消費者に契約内容を定期的に説明する体制をとることが望ましい(長野県 織田委員)。
いずれもアグレッシブな意見、という進行の内山教授の寸評にあるように事業者への要請や指摘が多く述べられました。
一方で、料金に関しては特段問題なく満足している(新潟県 木村委員)という事業者に一定の評価をする意見や、消費者側にエネルギー自由化、LPガスが自由料金という認識が欠けている(長野県 織田委員)といった消費者意識の向上を求める意見もありました。

 これに対し、事業者委員側からは、以下のような発言がありました。
県のLPガス協会で独自のアンケート調査の実施、料金表のひな型を会員間で共有、ホームページの公表状況の確認等を実施、料金の消費者相談数は減っており一定の効果出ていると思う。ただし料金公表しない、と言い切る事業者がいることも実態(長野県 塩原委員)。独自調査では料金公表率が87%まで上がっているが、中小事業者が多くホームページの活用が不十分である(茨城県 立原委員)。県との連携で県協会総会、理事会等で料金表のひな型を共有するなど指導を徹底してきた。他方約9割の中小事業者はホームページがなく、料金は店頭表示である。戸建てと集合住宅で料金差がある。集合住宅は2~3年に1回の入退居があり、都度色々費用が発生するため料金は戸建てと比べて高い。事業者には契約時に液石法14条書面を説明することは徹底して実施している(栃木県 須山委員)。事業者の94%が料金公表しているが全体の80%が店頭表示や料金表の手渡しである。検針票、請求書に料金明細が明記されるよう改善されてきている(群馬県 小林委員)。県との連携で保安技術講習会において、料金透明化・取引適正化の指導、周知徹底をしている。また、卸事業者の協力も得て料金問題に取り組んでいる。ホームページで料金公表している事業者は13.4%、店頭表示が73.4%(新潟県 佐藤委員)。
総じて、料金透明化、料金公表は進んでいるものの、ホームページ活用が不十分であること、店頭表示の実効性がはっきりしないこと等、課題が解決していないことが浮き彫りとなりました。

 一昨年から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、関東経済産業局(資源・燃料課 中田係長)から以下のような発表がありました。
① 昨年から料金問題に関し自治体との意見交換を開始、山梨県、埼玉県課と続いた。コロナ
感染問題が沈静化され次第その他の県とも連携の機会をもちたい。②消費者からの相談事例を自治体との共有、③関東液化ガス業務主任者研修会における料金透明化・取引適正化指針の説明講演3か所実施、④事業者に対し、液石法14条、16条及び取引適正化指針に関する立入検査を実施(計14か所)。液石法14条書面関連の説明時間が不足しているケースが散見されている。

 内山教授からは、中長期的に見ればこの問題は改善の方向に向かっているが、消費者からの見え方、事業者の努力、行政の目線、それぞれが完全に一致したものではなく、これらのギャップを埋めてより高みを目指さなければならない、との前半のまとめがありました。

テーマⅡ.「新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等」
 事業者委員側からコロ感染防止策への対応等に関し以下の発言がありました。
コロナ感染対策に関する全国LPガス協会、県の通知文は遅滞なく全事業者に発信し、さらに県協会独自の対応指針を定め、全ての事業者に周知徹底したところ(新潟県 佐藤委員)。国や全国LPガス協会の示す感染防止対策等を漏れなく全事業者に伝えている。感染対策を講じても点検等での訪問を拒否される場合は個別対応として顧客との話し合いで判断することとしている(長野県 塩原委員)。各方面の感染防止ガイドラインを協会会員に共有徹底している。緊急事態宣言後は一定期間保安点検業務を中止したがその後も供給に支障がない対応をとっている(群馬県 小林委員)。県協会独自の対応として、店頭にコロナ感染防止対策への「取組宣言」というポスターを貼り、フィルム対策、マスク2枚着用、ゴム手袋の使用によるコロナ感染防止対策を講じている。家庭用消費量は微増だが、業務用は大きく落ち込んでいる(栃木 須山委員)。コロナ感染下においても消費者への安定供給、安定保安を第一と考えている。第2波、第3波でも事業者への感染がないよう注意している(茨城県 立原委員)。

 消費者委員側のコメントとして、県LPガス協会からコロナ感染防止対策としてLPガス関連機器検査期間の延長、マスク着用による作業実施等の情報をいち早くいただき、その旨消費者団体に連絡した。迅速な対応をいただき感謝する(新潟県 木村委員)、との発言がありました。

 内山教授からは、消費者から問題となるような話は聞かれなかったが、その裏で事業者は通常かからないようなコストもかけて、安定供給、安定保安に取り組んでいることを忘れてはならない、とのとりまとめがありました。

テーマⅢ.「LPガスの災害対応能力について」
 進行の内山教授からエネ庁の事前プレゼンと振興センターの災害バルク広報サイトに関する以下のとりまとめがありました。
 エネ庁プレゼンでは、LPガスは分散型エネルギーで他燃料に比べて災害に強いこと、加えてGHP、バルク容器等関連機器設備も災害対応に適しており、公共施設へのLPガス用途が拡大することが期待される。また、振興センターの災害バルク広報サイトを見るとその効果がよくかわる。

 事業者委員から以下の発言がありました。
 今まで協会員を通し幼稚園、学校等に災害バルクを設置し災害時の炊き出し等に備えてきた。避難所の空調設備についてはハードルが高かったが今般中学校、小学校に避難所用GHP第1号が導入され8月完成のはこびとなった(群馬県 小林委員)。

 自治体からは以下の発言がありました。
 県の講習会等の場で災害バルクに関するパンフレットを配布し、啓蒙に努めている(茨城県 防災・危機管理部 消防安全課 産業保安室 宮崎室長補佐)。教育委員会に災害バルクの情報提供等実施している(栃木県 産業労働観光部 工業振興課 佐藤主査)。教育委員会を通じてGHPの設置の実現を働きかけているところ(群馬県 総務部 消防保安課 福田課長補佐)。今後講習会等でLPガスの災害対応を説明していきたい。LPガスは震災時における復旧が早く、この点も今後協調したい(新潟県 防災局 消防課 高圧ガス保安係 鈴木係長)。防災訓練時に災害バルクやLPガス発電機を実証し災害対応に関する情報共有を実施している(長野県 産業労働部 産業技術課 清水課長補佐)。

 消費者委員からは次のような発言がありました。
LPガスのGHPは動力源であるLPガス供給を事業者がしっかりやっており安定しているので、学校の教室や体育館にぜひとも導入してほしく、行政に鋭意働きかけている(新潟県 木村委員)。バルク容器の活用による温かい食事は災害時には何よりである。先般の水害時にLPガスボンベが多数流失したが、県協会の広報等対応が良くありがたかった(長野県 織田委員)。LPガスが災害に強いことが改めて分かった。昨年の台風による被災で公民館が利用されたが、県内に多くある公民館にLPガスの災害対応設備を導入できたらいいと思う。災害対応バルク設備付きの賃貸住宅なども検討の余地があるのではないか(群馬県 飛澤委員)。県の防災訓練において災害バルクを利用した炊き出しなど行いLPガスの良さが認識されている(茨城県 鈴木委員)。今後消費者として災害対応にはLPガスが適していることを各方面に発信したい。オール電化は災害に弱くLPガスが最適と考えている(栃木県 菊池委員)。

【その他の議論とまとめ】
 その他、以下の関連質疑や発言がありました。
 災害に強いLPガスと言いながら、住宅を建設時は建築業者等からオール電化を進められるケースが多いがどういうことか(長野県 織田委員)。これに対し振興センター嘉村専務理事から、LPガスの良さを消費者ばかりでなく、建築関係者等に広報する努力が足りてないのではないか。今後エネ庁とも相談して振興センターでできることは進めていきたい、との回答がありました。
 また、先般の福島での爆発事故のように、LPガスも使いようでは大変危険なものであるが、消費者として留意すべきことがあれば教示願いたい(茨城県 鈴木委員)との質問がありました。これに対しては事業者委員側から、LPガス関連の工事の時は必ずLPガス事業者に相談してほしい。また業務用ではガス漏れ時のガス遮断のためマイコンメーターとガス警報器の連動をお願いしたい(茨城県 立原委員)との回答があった。また、自治体からは、ガス工事実施をする場合は必ず有資格者であるガス事業者にお願いすべき。インターネット販売等で無資格者が工事をやるケースが散見されるが、消費者も注意する必要がある(新潟県 防災局 消防課 高圧ガス保安係 鈴木係長)、とのコメントがありました。

 最後に消費者委員から議論をとおして一言ずつ、以下のコメントがありました。
 以前はなかったことだか、最近は検針票に価格の明細が記載されるようになった(長野県 織田委員)。料金改定時には理由とともにその内容が書面で通知されるなど事業者の対応に納得している(新潟県 木村委員)。コロナ感染下、事業者が安全に配慮しながら安定供給していることには感謝したい。集合住宅での料金透明化が今一歩進むと一層よくなる(群馬県 飛澤委員)。消費者が料金問題への意識を高め理解する努力をしないと解決には至らない(栃木県 菊池委員)。年々料金透明化問題は改善しているが、やはり集合住宅の料金は高いという印象。ガス料金と設備を切り離して考えないと問題は簡単には解決しない(茨城県 鈴木委員)。

 エネ庁橋爪企画官からは、立入検査でどのような指導の案件があるのかもう少し知りたい。各県の立ち入り検査指導案件を整理し他県でも共有すれば、液石法14条関連の課題の整理につながるのではないか、とのコメントがありました。

 内山教授が議論後半のまとめとして、事業者と自治体、住宅メーカー等とのB to B コミュニケーションの重要性が指摘された。まだまだLPガスの良さが世の中に十分浸透しておらず、さらなる広報活動が重要である、と総括し議事を締めくくりました。

              
(広報室/中村)