LPGC WEB通信  Vol.79  2020.12.10発行 

近畿地方LPガス懇談会の概要

 去る10月8日に近畿地方LPガス懇談会(福井県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)を開催しましたので、概要を報告します。
各地方の消費者委員及び事業者委員、学識経験者委員、行政の間で、本年度のテーマである、
 ① 料金透明化・取引適正化の現状と対応
 ② 新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等
 ③ 災害対応の現状と課題
について、それぞれ資源エネルギー庁のプレゼンテーションに続き、自県を超えた意見交換が行われました。
 コロナ禍中におけるの新たな試みの一つである、WEB会議によるリモート会議運営については、事後アンケートの結果からも概ね好評を得ています。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  Web会議によるリモート会議
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
近畿地方LPガス懇談会
 
(1)開会挨拶
 近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 電源開発調整官 原田 敏行
 LPガスは全国総世帯の45%が使用する国民生活に密着したエネルギーである。近年電力・都市ガスの小売り自由化により、エネルギー間の競争が激化している。LPガス事業者(以下「事業者」という。)が法令を遵守し、真摯な取組みを行うことでLPガスが選択されるエネルギーとなっていただきたい。また、LPガスは分散型エネルギーとして災害対応に重要な役割を担っており、管内では滋賀、大阪、奈良、和歌山の小中学校にLPガス使用のGHPが導入されるなどLPガスの災害時における優位性が再認識されている。本懇談会では事業者、LPガス消費者(以下「消費者」という。)の活動報告等を踏まえより良いLPガスの利用環境の構築に向け議論が進むことを期待する、との挨拶がありました。

(2)懇談
 司会・進行:甲南大学法学部 土佐 和生 教授

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」
 
 消費者委員から次のような発言がありました。事業者、行政等の努力によってLPガス価格(以下「料金」という。)の透明化・取引適正化(以下「透明化・適正化」という。)のレベルは上がったと思う。一方、アンケート調査の回収率が低く、実態の把握が十分か疑問だ。アンケートに答えていない事業者の実態についてどのように見ればよいか。(京都府 右近委員)。行政の指導、府のLPガス協会の努力等により料金問題のトラブルは減っている。消費者からのLPガスに関する相談事例も幸い聞いていない。紙媒体での料金公表は高齢の消費者には喜ばれる。(大阪府 角田委員)。ホームページ(以下「HP」という。)での表示は高齢者には馴染まない、また消費者は料金を見にわざわざ事業者の店頭には行かない、という問題がある。店頭表示より紙媒体による手渡しでの料金提示の方が消費者にとって親切な面がある。LPガスの扱いや、料金明細について消費者に対し情報が少ない一方、消費者も知ろうと努力しないことが多く、双方で問題がある。(和歌山県 田村委員)。料金表示の見本を作成する、とか紙媒体による料金提示はいい方法だと思う。他方、ガソリンのように卸売価格が料金に反映されていないのではないか。消費者に分かり易いLPガス標準的な料金体系の整理が望まれる。(福井県 齊藤委員)。
 これに対し事業者委員からは。HPや店頭での料金表示を徹底するよう指導している。毎年実施している販売事業者講習会でも行政からの指導内容を周知している。(京都府 畑委員)。県のLPガス協会(以下「県協」という。)の調査によれば99%が料金公表しているようだが、消費者が納得いく公表となっているかが問題だ。引越し時などは、消費者は忙しく料金説明などに十分時間の取れないのが実態だ。(福井県 渡辺委員)。透明化・適正化への取組みの必要性については、県協の実施する諸々の会議、集まり等において都度周知している。問題はそれを受け取る事業者個々の意識の問題である。意識の低い事業者は結局消費者に選ばれない事業者になると認識すべきだ。(和歌山県 福島委員)。府内の調査では81.5%が料金公表している。府の調査に協力しない事業者には電話で督促している。他方、7~8割を占める中小事業者はHPを開設してないところが多く、店頭表示にとどまっている。店頭表示に関しては見本も作成している。競合エネルギーに負けないために透明化・適正化は徹底しなくてはならない。(大阪府 大先委員)。県協の保安講習会や各種部会で都度透明化・適正化を周知しているが、事業者によって受取り方に温度差がある。それでは困るので、粘り強く指導を継続したい。(滋賀県 川瀬委員)。アンケートに回答しない事業者への指導は難しい。県協の保安講習会等で透明化・適正化を周知徹底しているが、事業者によって対応に差があるには否めない。県協の事業計画にも透明化・適正化を課題として盛り込み、消費者に選ばれるエネルギーとなるべく努めている。(兵庫県 髙須委員)との意見がありました。

 本テーマに関し土佐教授からは、今回の議論で透明化・適正化への取組みのなかで問題点が明確になった部分がある。具体的には店頭表示の見本作成の効果、アンケート非回答事業者への県協のアプローチ、紙媒体での契約説明、料金提示の効果、等が議論され一定の成果があったと思う、とのまとめがありました。

 一昨年から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、近畿経済産業局(資源エネルギー環境部 資源・燃料課 門田課長補佐)から以下のような発表がありました。毎年、中部近畿産業保安監督部が実施する保安担当者への説明会に同席し料金の透明化、液石法第14条に基づく書面の公布義務、取引適正化へのガイドライン等を説明している。また、昨年は兵庫県、大阪市から個別のヒアリング、意見交換を実施してきたが、今年度はコロナ感染下で監督部の説明会自体が中止となっており、コロナ感染の状況が好転すれば個別対応を実施したい。局管内の立入検査については、前年度は全体17社のうち7社に実施し1社がHPに料金公表してなかったので指導を行った。今年度はコロナ感染の状況を見つつ実施を考えたい。関連して自治体からは、前年度の立入検査時は料金表示、説明義務は概ね守られていたようだが、今年はコロナ感染下で検査実施が様子見となっている、との発言がありました。(奈良県 自治体)。


テーマⅡ.「新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等」
  消費者委員から、コロナ感染下で家庭の調理方法等も変化が出てきている。アウトドアによるLPガスの利用も増えており、LPガスの用途拡大のためにも緊急時の30分駆け付けのルール(以下「30分ルール」という。)は規制緩和されてはどうか(大阪府 角田委員)、との事前質問がありました。
 これに対しエネ庁家田課長補佐から、質量販売への検討が求められているが、新しい容器の登場もあり、どういった容器に規制緩和を進めていくか、経済産業省の保安担当部門とも検討を進めているところ、との回答がありました。

 また、事業者委員からは、アウトドア生活が広まり、LPガスの質量販売が進むなか、30分ルールに対する規制緩和をスピードアップするようエネ庁にもお願いしたい。LPガスは持ち運びに便利なエネルギーとうたわれている、一方30分ルールの規制が足かせになっている。(大阪府 大先委員)。規制緩和には大賛成だ。アウトドアのみならず、過疎地への供給、雪道を通っての供給においては、30分ルールが負担となる。不便な地域への供給を担う事業者の存続にもつながる状況だ。(福井県 渡辺委員)と意見がありました。
 土佐教授からは、ユーザーリスクに関するリスク管理を事業者が担っている状態であり、現在の安全管理に即した適正な規制の見直しが求められる、との指摘がありました。


テーマⅢ.「LPガスの災害対応能力について」
 事業者委員から次のような意見がありました。LPガス供給世帯率が7%と低いなか、災害時にスムーズにLPガス供給ができるよう、平時から避難所のLPガス設備へのLPガス供給を続けることが課題である。平時の供給はまだ数パーセントの避難所にしかできていないのが実態だ。平成30年には都市ガス供給地域である箕面市の20校すべての小中学校の体育館にLPガスによる空調設備、LPガス発電機が導入された。消費者団体とともに自治体への導入提案活動も続けており、昨年度は泉佐野市の6校、平成2年度以降は47校の体育館へのLPガス空調が決定している。(大阪府 大先委員)。和歌山市内の中学校17校にLPガス設備の導入が決定、うち7校で供給が始まっている。これを前例とし郡部の自治体、行政にもLPガス設備導入をいっそう働きかけていきたい。(和歌山県 福島委員)。
 消費者委員からは、災害対応用のLPガス設備はすばらしいが、消費者が有効に活用できるような教育、講習が不可欠だとの意見(兵庫県 中道委員)があり、これに対し事業者委員からは、毎年消費者の安全教室を県協各支部で実施しているが、これを災害対策に特化するなどの工夫を検討したい(兵庫県 髙須委員)、との回答がありました。

 さらに消費者委員の発言が続きました。市内の小中学校に空調設備が設置されたと聞き喜んでいたがエネルギー源が電気だった。電気は停電という弱点がある。LPガス設備を導入してもらえるよう府LPガス協会とともに市長に陳情する予定である。近年水害が多発し、LPガスボンベの流失のニュースが流れ不安が感じられるようだが、保安対策は十分とられていると聞いている。この点のフォローも必要だと思う。(大阪府 角田委員)。
 これに対し事業者委員からは、浸水の可能性の高い充填所には防災ネットを利用しボンベの外部流出を防ぐ一方、ガスの放出防止型高圧ホースをすべてのボンベに装填する運動を進めているところである。(大阪府 大先委員)。平成28年から放出防止型高圧ホースの装填、50㎏容器ボンベチェーンの2重掛け、の100%達成を目指して運動中である。津波被災の恐れがある沿岸部はほぼ達成しているが、内陸部は達成率が低く事業者間の意識の差が見て取れる。100%達成した事業者には県協より認証を付与する一方、未達成の事業者には今後も引き続きしっかり指導していきたい、(和歌山県 福島委員)といった発言がありました。

 さらに中核充填所の役割という観点から事業者委員から次のような発言がありました。県内4か所の中核充填所で毎年持ち回りの訓練を実施しているが、今年はコロナ感染下で予定が立っていない。しかし将来的にはこのような訓練が災害対応に寄与すると思う。(奈良県 松倉委員)。停電時でもLPガスがあれば発電できる、という見地から府内に4か所の中核充填所ができた。コロナ感染下であるが11月には人数を絞って訓練を実施する。このような機会に中核充填所の存在、災害に強いLPガスというものを発信していきたい。(京都府 畑委員)。

 また、エネ庁家田課長補佐から次のような発言がありました。消費者側で防災の意識を高く持つことは大事なことだ。エネ庁では災害バルクに補助金を出しているが自治体等でも防災意識が高まり、今年度の補助金も40億円の予算では足りない状況である。次年度も39億円の概算要求をしている。自治体にも補助金に対する周知を行い、地域防災体制を整えていきたい。


(3)総括コメント
               経済産業省 資源エネルギー庁 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
 本日のような会議をとおし、消費者がLPガス業界の活動状況をどうとらえているか、事業者が日頃どのような努力をしているか、様々な議論を重ね共通認識を持つことは、LPガスの安定供給や料金問題の解決を進めるにあたり重要だと思う。大阪府のように、消費者と事業者が一体となって、災害バルクの導入など防災対策を進めることは非常に良い取組みだと思う。他の府県でも消費者、事業者、自治体が連携して地域防災に取組んでいただきたい。


甲南大学法学部 土佐 和生 教授
 透明化・適正化の問題は長年の課題である。アンケートによれば9割以上の事業者が料金公表しているというのは大きな前進だ。ただし、表面的な数字だけではなく、実質的に消費者と事業者が合意にいたることが重要だ。引っ越しのあわただしいタイミングでの料金説明が適切なのか、高齢者のためには紙媒体での料金説明が望ましい、請求書の裏面に料金明細を記載する、といったような個別的、具体的な論点が浮かびあがったという点で成果があった。このような具体的な議論が今後の諸問題の解決に向けての大きなきっかけになると思う。長引くコロナ感染下においては、消費者がどのように対応していくのか、事業者がいかに努力を継続していくか、大きな課題を感じさせられた。また、コロナ感染下における災害対応という見地からはLPガスの出番がいっそう増えるのではないかと思われる。従来の延長線上ではなく、ウイズコロナ時代の災害に対するLPガスの在り方が大きな課題である。
(広報室/中村)