LPGC WEB通信  Vol.79  2020.12.10発行 

中国地方LPガス懇談会の概要

 11月2日に中国地方LPガス懇談会(対象:鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県)を開催しましたので、概要を報告します。
各地方の消費者委員及び事業者委員、学識経験者委員、行政の間で、本年度のテーマである、
 ① 料金透明化・取引適正化の現状と対応
 ② 新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等
 ③ 災害対応の現状と課題
について、それぞれ資源エネルギー庁のプレゼンテーションに続き、自県を超えた意見交換が行われました。
 コロナ禍におけるの新たな試みの一つである、WEB会議によるリモート会議運営については、事後アンケートの結果からも概ね好評を得ています。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  WEB会議によるリモート開催
(3)テーマ ①料金透明化・取引適正化の現状について
       ②LPガスの災害対応能力について
(4)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
(1)開会挨拶
 中国経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課長 長谷川 健二
 LPガスは他燃料との競合や一戸当たりの使用量の減少など厳しい環境下にあるが、全世帯の約4割が使用し、特に都市ガス供給が届かない地域をカバーする貴重なエネルギーである。また災害に強い分散型エネルギーとして期待されている。LPガスが消費者に選ばれるエネルギーとなり続けるためには、消費者、LPガス事業者(以下「事業者」という。)、行政等の関係者の相互理解がますます必要であり、そのために本懇談会が有意義であることを祈念する、との挨拶がありました。


(2)懇談

テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」
 消費者委員から、次のような意見が発表されました。県のLPガス協会(以下「県協」という。)の料金問題の資料を見ると「周知・徹底」という言葉がキーワードとなっており、日頃より会員各社への力の入った取組みがうかがわれる。しかし、LPガス価格(以下「料金」という。)の公表率では全国平均以下であり、よりスピード感のある対応が望まれる。県内の料金公表は店頭、ホームページ(以下「HP」という。)表示を合わせると97.1%というが、近県ではHPのある事業者が40%というところもあり、HP、Webの活用が急務である。他方、料金面では生活関連機器設備(以下「生活設備」という。)費用が料金に転嫁されているのではないか、という消費者からの相談がある。したがって、料金を消費者に分かりやすくするためには、三部料金制にした方がよいのではないか。国では2030年のエネルギー構成比率においてLPガスは3%と想定しているが、もっと高くてもよい。災害が頻発するなか、分散型エネルギーであるLPガスの役割は大きい。(広島県 高田委員)。町に4か所の販売店があり料金、サービスがそれぞれ違うが、料金に大きな格差はないようだ。(鳥取県 平尾委員)。消費者にとって料金が分かりにくいというのが現実だ。料金公表率は改善されているようだが、相談事例等ではやはり料金内容が分からないという声が多い。つまり、料金透明化・取引適正化(以下「透明化・適正化」という。)への取組みはLPガス業界内には周知、徹底されているものの、消費者にはそのような情報が十分伝わっていないということだろう。透明化・適正化の周知徹底が消費者にもよくわかるような工夫が必要だ。料金の店頭表示も進んでいるようだが、消費者はなかなか店頭までは行かない。集合住宅での生活設備費用の料金への転嫁は住宅購入前に明確にしておかないと、入居後のトラブルの原因になる。(山口県 吉冨委員)。事業者が料金についてきちんと説明してくれていて安心できる。(岡山県 大西委員)。年1回「お客様相談所委員会」が開催され、事業者との意見交換等連携している。料金問題についても事業者を信頼している。消費者の苦情や相談を解決することがお互いの信頼関係につながるが、当県ではそれが十分できていると思っている。事業者が生活設備費用負担を強要されるのは筋違いであり、その是正を国に要請するのも当然だ。(島根県 野々内委員)。
 これに対し事業者委員から次のような発言があった。料金の公表率は97.1%で全国平均より高い。しかしHPによる公表率は17.8%と低く改善の余地があり、残りは店頭表示である。生活設備費用を負担するという過剰サービスはなくしたいと思っているが消費者にも負担をかけたくはない。生活設備費用がどのように負担区分になるにせよ、消費者の理解が得られるような努力が必要だ。(広島県 武信委員)。生活設備費用の負担を事業者が喜んで進めているわけではない。以前は給湯器費用の負担だけですんだが、今ではエアコン、ドアホン、ウオシュレットといったものの負担まで住宅事業者から当たり前のように押し付けられる。住宅事業者の要請を断ればLPガスの納入ができなくなる。経産省は住宅事業者にこのような要請の自粛を促すような手立てをしてほしい。生活設備費用の償却が終わったころには取替時期になり再び償却が始まり、いつまでたっても利益が上がらない。結果、料金が上がり最終的には消費者にしわ寄せがいくということにもつながる。事業者が好んで生活設備費用負担をすることはまずない。(岡山県 藤田委員)。料金は通常基本料金と従量料金があり、今後は生活設備費用を負担する部分を合わせた3部料金でないと立ち行かないのではないか。加えて14条書面で生活設備費用の負担を明確化することが必要だ。(山口県 服部委員)。

 次に、一昨年から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、中国経済産業局(資源エネルギー環境部 資源・燃料課 加藤課長補佐)から以下のような発表がありました。昨年のLPガス懇談会以降、岡山県、山口県の自治体担当者及び両県協と透明化・適正化に関し意見交換を実施した。今後は新型コロナウイルス感染(以下「コロナ感染」という。)下の状況をふまえつつ、その他の県との連携を図りたい。事業者(対象16事業者)に対しては透明化・適正化に関する立入検査を実施しており、令和元年度は4件実施、今度は既に1件実施済みで計4件実施の予定である。消費者からの相談事例については関係自治体と共有している。また自治体からは、県への直接の相談はないが市町村レベルで料金が分かりにくいという問い合わせが1件あった程度(鳥取県 自治体)、という報告がありました。


テーマⅡ.「新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等」
 事業者委員から次のような発言がありました。コロナ感染対策は色々やっている。5月までは、就業は3交代制をとり職員同士の接触を少なくしたが現在は平常勤務に戻っている。家庭用需要量は以前と変わりないが、業務用、工業用、自動車用需要量の減少が著しい。業務用は前年度比3~5割と激減し、コロナ感染の影響は大きいといえる。LPガスの展示会も開催できず、Web展示会や書面展示会に切り替わっている。また定期点検面では、消費者宅を訪問することが迷惑となるため、自粛せざるを得ない状況であった。(島根県 森山委員)。県協としては、6月に県の消防防災課からコロナ感染下のLPガスの安定供給についてヒアリングをうけたところ。日頃より事業者間の連携はできており、コロナ感染下でも安定供給は問題ないと思っている。県内は温泉地等観光地がありホテル等の業務用需要の落ち込みは顕著である。(鳥取県 水谷委員)。コロナ感染の影響で飲食店の倒産が散見されるが、料金の回収に支障が出ると事業者の経営にも影響が大きい。コロナ感染が早く終わって欲しい。(岡山県 藤田委員)。
 また、消費者委員からは次のようなコメントが寄せられました。生活面でLPガスの安定供給への不安はないが、計画されていた4件のLPガスを使用するイベントがコロナ感染のため全て中止になり事業者には迷惑をおかけした。業務用にはLPガスが多く使用されており、販売量拡大のためにも早くコロナ感染が収まって欲しい(岡山県 大西委員)。他県同様イベントの中止が相次いでおり、1日も早くコロナ感染が終わってほしい。(鳥取県 平尾委員)。コロナ感染のために行事が中止となっている。コロナ感染の早期収束が望まれる。(島根県 野々内委員)。


テーマⅢ.「LPガスの災害対応能力について」
 事業者委員から次のような発言がありました。西日本豪雨の際ボンベが流出する事態が発生した。県協としてボンベ流失時は自社のものでなくても回収するよう事業者と取組んでいる。また災害時には近隣の事業者間で連携するシステムを構築しようとしている。(広島県 武信委員)。一昨年の豪雨災害時にはボンベが流出した。それを踏まえ今年5月には県協の防災計画を見直した。県協ではボンベ流出防止のためのチェーン二重かけ、過流出防止高圧ホースの設置などを指導している。他方、県協として自治体との防災協定の締結、防災訓練の実施等災害に備えている。防災訓練ではFAXを使用したがほぼ100%の販売店からチェックシートが送られてきた。(岡山県 藤田委員)。
 また、自治体からは以下の発言がありました。豪雨災害時にボンベが流出した際は県の消防保安課、県協等の連携で対応にあたった経緯がある。県協との防災協定により、災害時での炊き出し等食の確保が可能となっている。(岡山県 消防保安課)。ボンベ流出防止対策のほかに独自にLPガスを使ったシャワールームの組み立て訓練を実施している。(山口県 消防保安課)。
 さらに、消費者委員からは次のような発言がありました。災害時には分散型エネルギーとしてのLPガスの需要は高い。災害時には事業者、行政、消費者のネットワークが重要だ。料金問題を一緒に考えると同じように、災害時には3者の情報共有、相互理解が重要となる。(広島県 高田委員)。県協によって町にLPガス発電機が導入された。町に6か所ある公民館にもLPガス発電機の導入が町の政策として進められている。災害がいつ起こるかわからない時代でもあり、こういった取組みは住民にとって安心材料だ。LPガスの発電機があるなどということも今まで知らなかった。(鳥取県 平尾委員)。
また、災害バルクは災害時に有効な設備であるとの島根県野々内消費者委員のコメントに対しエルピーガス振興センター嘉村専務理事から、同センターの災害バルク広報サイトに設置先の区別等情報があるのでぜひご覧いただきたい旨案内がありました。


(3)総括コメント
 最後に資源エネルギー庁橋爪企画官から以下の所感が述べられました。中国地方では消費者団体のLPガス業界への理解が進んでいるようで、本日は有意義な意見交換となった。料金関係では2つの問題を抱えている。ひとつは公表の問題で、公表は進んでいるが多くが店頭表示であり、HPがあまり利用されていない。公表のためだけにHPを立ち上げても業績にはつながらない、という事業者をどう説得し意識を変えさせるかが課題である。生活設備費用の事業者負担に関する問題はもう事業者だけで解決できない状況であり、資源エネルギー庁として国交省と話し合いを始めたところである。現状では既に生活設備費用が料金に転嫁されている状態であり、事業者は入居者にこの点を説明する取組みを続けていただきたい。料金への転嫁について説明すると、住宅オーナーや管理会社からストップ要請がくるケースがあるようだ。消費者にとっては家賃に含まれるべき生活設備費用がLPガス料金に上乗せされ、結果として入居後高いLPガスを選択の余地なく使用させられている状態で、消費者を蔑ろにした商慣行となっている。こういった点も踏まえて国交省とは話し合っており、何かしら改善の方向にもっていきたい。

 また、議事を進行した北野教授から次のような総括がありました。透明化・適正化問題については、改善点が見え、問題点もクリアになってきているので、国交省との議論にまで展開してきているのだと思う。中小事業者がHPを持つよう業界全体で取組む必要がある。HPを持つことが、ひいては業績の向上にもつながるという認識を持つべきである。コロナ感染のテーマでは、業務用需要の落ち込みや倒産のために料金回収ができない状況が報告され、事態は深刻である。LPガス業界だけの問題ではないが、こういった問題をどう乗り越えていくかが課題である。災害対応案件としては、今後ますます災害の増加、多様化が予想され、LPガスの存在価値は一層大きくなる。関連して災害協定の締結や強化、訓練の実施など必要な準備を行い災害に備えたい。
 以上を総括すれば、消費者、事業者、行政が料金問題、コロナ感染対応、災害対応等あらゆる点で本音の情報共有の基に相互理解を深め、それぞれのテーマに向けて進んで行くことが望ましい。そのためには公正さを保つために、お互いが透明性のある情報をもとにどれだけの選択肢を持つことができるか、という点が非常に重要である。


(広報室/中村)