LPGC WEB通信  Vol.80 2020.01.04発行 

四国地方LPガス懇談会の概要

 去る11月16日に四国地方LPガス懇談会(対象県:香川県・徳島県・愛媛県・高知県)を開催しましたので、概要を報告します。
議事進行と総括コメントは、昨年度に引き続き学識経験者委員である香川大学経済学部の古川尚幸教授にお願いしております。

LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  WEB会議
(3)テーマ ①料金透明化・取引適正化の現状について
       ②新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等について
       ③LPガスの災害対応能力について
(4)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等


議事の概要
(1)開会挨拶
四国経済産業局 資源エネルギー環境部 山下 充利 部長
 令和2年度の懇談会がこのようなWebでの開催になるとは想像もしていなかった。LPガス関連団体、LPガス事業者(以下「事業者」という。)におかれては、新型コロナウイルス感染(以下「コロナ感染」という。)下における政府の生活不安に対する緊急措置の要請に基づき、料金延滞に対する柔軟な対応、感染対策徹底のためのコロナウイルス感染予防ガイドライン作成等、組織をあげての協力をいただき感謝する。今年も九州を中心に大規模な自然災害が発生し、四国地方でも予想される南海トラフ大地震への対応が求められている。これに対する重要施設への災害バルク設置、LPガス発電機等については経産省の実施する補助事業を活用願いたい。経産省としてはLPガス備蓄の着実な実施等供給体制を強靭化しLPガスの安定的な利用環境を整えたい、と挨拶がありました。


(2)懇談
議事進行:香川大学経済学部 古川 尚幸 教授
テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」
 愛媛県の消費者遠山委員から次のような事前質問がありました。
(質問-1)LPガス機器に関してはガス石油機器PLセンターという相談窓口があるが、LPガスの販売事業者とのトラブルの際LPガス売買契約に特化した相談機関、あるいはADR機関はあるか。
(質問-2)LPガス設備の所有権が販売事業者にある場合、宅建業者がLPガス契約時に解約時の違約金について説明する義務があると聞いているが、建売住宅の場合その説明義務が徹底しているかどうか。液化石油ガス法14条の書面(以下「14条書面」という。)の交付と説明はどのタイミングで実施されるのか。
(質問‐3)LPガス設備の無償貸与をめぐる裁判の最近の傾向についてはどうか。消費者契約法第9条に反するような違約金条項が売買契約内に見られるのか。
 これに対し事業者委員から以下の回答がありました。
(質問-1)国の事業として「LPガスお客様相談所」を全国のLPガス協会内に設けている。相談のなかで明らかに法律に違反している事例は行政に連絡している。LPガス料金(以下「料金」という。)は自由料金なので、基本は事業者と消費者間の話し合いで解決するよう働きかけている。LPガスに関連するADRはないと認識している。
(質問‐2)開栓時に14条書面を交付し説明しており、全事業者が守っていると認識している。
(質問‐3)裁判事例は全国的には散見されると聞いているが、知る限り県内での事例はない。14条書面でガス器具の使用に関する取り決めは明記されている。県のLPガス協会(以下「県協」という。)では事業者向けに販売指針の冊子を作成し県協支部を回って周知徹底している。(愛媛県 髙須加委員)。県の機関として生活センターがあり相談を受けている。また、行政書士ADRセンターもあるので紛争時の利用が可能だ。(香川県 赤松委員)。

 さらに消費者委員から次のような発言がありました。県協にお客様相談の窓口がある。県の消費生活センターに持ち込まれた問題はきちんとお客様相談窓口につなげられており、年2回相談事例の検討会も実施している。料金問題、集合住宅での機器設備負担の問題、解約時のトラブル等は県協の相談窓口で解決が図られており今のところ訴訟にいたるような問題はない。(徳島県 安田委員)。ホームページ(以下「HP」という。)による料金公表が少ないようだ。コロナという状況も踏まえ、消費者にとってはHPの利便性が高いので、事業者はHPを活用する方向に進んで欲しい。(高知県 下元委員)。LPガスの利用者ではない一般消費者に対する相談窓口のあり方も課題である。(香川県 野田委員)。
 関連して事業者委員から以下のような説明がありました。香川県の場合、料金問題は消費者生活センター、お客様相談室で対応している。当県の場合都市ガス世帯も多いが、都市ガスからLPガスに代わった消費者のトラブルにもお客様相談室で対応し、訴訟に至ったような事例はない。(香川県 赤松委員)。数年前から県協支部を回って料金透明化・取引適正化(以下「透明化・適正化」という。)の説明を繰り返し実施している。個別の料金問題に踏み込むのは難しいが、先ずは各事業者の標準料金の設定を要請しているところ。(愛媛県 髙須賀委員)。状況は他県と似ている。トラブルは消費者生活センター、お客様相談所で解決しており、裁判にはいたっていない。透明化・適正化に関する説明は県協支部を回って実施しているが、郡部の事業者によるHPでの料金公表が進んでいないのが課題だ。(高知県 公文委員)。県の消費者協会と連携してトラブル対応しており年間10件ほどのLPガス関連の相談があったがいずれも訴訟には至っていない。料金公表は96.9%ができており、できていない7事業者に指導を継続している。(徳島県 中川委員)。

 次に、一昨年から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、四国経済産業局(資源エネルギー環境部 資源・燃料課 宮川課長)から以下のような発表がありました。各県への対応はコロナ感染で十分ではないが、消費者からの苦情に対しては各県、県協、事業者等と共有し状況把握に努めている。お客様相談室への苦情があれば速やかに経済産業局と共有できる体制になっている。昨年は経済産業局にあがる苦情はなかったと把握している。事業者への立ち入り検査もコロナ感染下で立ち遅れている。テレワーク、出張抑制等で例年のような活動ができない状況にあるのが実情だ。
 経済産業局に対しては愛媛県事業者髙須賀委員から、不動産業界から事業者に色々な要求が来る場合があるが、国交省との連携で不動産業界を指導する体制を国側でとっていただきたい、との要請がありました。また不動産事業者が重要事項を説明する際、LPガスに関連する機器やそれ以外の機器の貸付の有無等を具体的、積極的に説明しないと問題解決につながらないと述べました。
 関連して、資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)家田課長補佐からは、宅建法上の目的からすると同法にLPガス関連機器設備の扱いを盛り込むことは難しいとの説明を国交省から受けているが、それならどういったことができるのか、国交省と話し合っているところであり、具体的なことが分かれば全国LPガス協会を通じ共有する、とのコメントがありました。


テーマⅡ.「新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等」
 徳島県の消費者安田委員から、コロナ感染防止に関する県条例のポイントのひとつに事業者感染防止が挙げられているが、各県協は事業者を具体的にどのように指導しているか質問があった。また、LPガス業界、事業者が安全宣言の下に消費者の安全・安心に応えて欲しいと述べました。
 これに対し事業者委員から以下の回答がありました。県協として物流面で支障があったとは聞いていない。県条例の主旨を県協会員にも周知徹底し、現在155事業者から「安全宣言ガイドライン実施店」としての応募を受けている。(徳島県 中川委員)。コロナ対応は県が発する注意事項を県の指導に基づき毎月発行している情報紙で会員に周知した。各事業者はマスク着用、消毒徹底は当然だが営業活動を控え、顧客との面談を最小限とする努力を続けている。また事業者が例年行う展示会、感謝祭は全て自粛している。(愛媛県 髙須賀委員)。県協としてBCP(事業継続計画)のサンプルを会員に配布している。コロナ対策は各事業者の自己責任としており、ステッカーを貼るような運動は今のところ実施していない。従業員に感染者が発生したところが1社あり、同社に対応等ヒアリングし情報を会員で共有している。検針、保安点検は顧客と相談の上実施している(香川県 赤松委員)。県のコロナ対策の指針を会員と共有している。配送が滞らないよう、細心の注意を払っている。幸い事業者側での感染者は出ていない。(高知県 公文委員)。

 消費者委員からは次のような発言がありました。配送の職員は皆マスクをするなど、必要な対応をとっていると思う。(愛媛県 遠山委員)。山間部はLPガスが重要なライフラインのひとつである。コロナ感染下でも配送が滞らないよう事業者間で連携していただきたい。(高知県 下元委員)。コロナ感染下でも消費者と事業者の関係を崩さないような対応が必要だ。(香川県 野田委員)。


テーマⅢ.「LPガスの災害対応能力について」
 徳島県消費者安田委員から次のような発言がありました。災害時の避難所におけるコロナ感染対策が新たな課題である。特に学校、体育館等の空調設備は重要だ。教室に空調設備があっても電気の場合が多い。徳島県では鳴門渦潮高校をモデルとして県下の小中学校体育館へ避難所としてのLPガスの空調設備の導入を進めている。災害バルクの設置には国の補助金が使えると聞いているが、国からは手厚い支援がいただきたい。
 これに対しエネ庁家田課長補佐から次のような回答がありました。東日本大震災を契機に国としてLPガスの災害バルク容器、発電機、GHP(ガスヒートポンプ)等の導入に補助金制度を定めている。令和2年度は40億円強の予算を準備したが、昨今頻発する災害を踏まえ自治体、社会福祉施設関係者の問題意識も高まり予算はほぼ満額消化されている状況だ。次年度も概算要求の段階だが39億円を確保する予定で財務省と調整中である。

 続いて消費者委員から以下の発言や質問がありました。LPガスのもつ社会的役割として災害時に消費者のそばにあること、安定的に供給されていること、利用者が安全に関して認識していることが重要だ。安全を担保するような学習プログラムといったものも必要だと思う。コロナ感染下では避難所のあり方も変化している。避難方法も分散型が求められ、分散型エネルギーであるLPガスの利用価値は大きい。地域防災ネットワークの中で改めてLPガスの利用につき共有することが必要だ。(香川県 野田委員)。また質問として、災害バルクの補助金制度があるようだが、郡部まで導入が浸透していない。何か理由があるのか。(愛媛県 遠山委員)。
 質問への回答として、エネ庁家田課長補佐から以下の回答がありました。補助金制度は東日本大震災を契機に設立された。東日本は震災を経験したため導入数が多い。また、北海道も一昨年の胆振東部地震の被災があり意識が高くなって設置が進んでいる。西日本はこれら地域に比べると申請数は少ない。補助金は費用の1/2~2/3をカバーするが、残りの足りない部分が自治体、事業者の裏負担となり、その辺の負担をどうするかがポイントとなる。
 また、愛媛県の髙須賀委員からも事業者委員として次のような回答がありました。災害バルクの導入は進んでいないが、国の補助による中核充填所が県内に5か所ありLPガスによる発電設備も備えている。衛星電話で行政との連絡もとれる。今般、新たに新居浜、今治に中核充填所が認可された。LPガスメリットとしてどこの被災地にでもガスの供給が可能であることから、災害時にはこれら中核充填所から事業者で協力して災害バルクが設置されていない地域の供給をカバーする体制をとっている。これら中核充填所において毎年災害を想定した訓練も実施している。2年前の集中豪雨の際には5か所に仮設住宅がつくられたが、県協からそれら仮設住宅に計13台のLPガス衣類乾燥機を購入支給し、使用するガス代も県協基金から捻出、被災者の生活を支援した経緯がある。また、波方国家石油ガス備蓄基地の放出訓練の実施や、出荷能力の公表もお願いしたい。
 国家備蓄に関する意見については、エネ庁家田課長補佐から、放出訓練はJOGMEC((独)石油天然ガス金属鉱物資源機構)が実施しており、これが第7地域の中核充填所訓練とどのように連携するかは検討の余地がある。放出能力は把握している。国内には国家備蓄と民間備蓄が合計輸入量の約100日分あり、これをどのように放出するかLPガスの元売りと協議している。国家備蓄石油ガスは基本LPガスの元売り事業者への放出であり、元売りに放出した以降は通常のLPガスの商流に乗って市場に供給される、との説明がありました。

 続いてその他の事業者からも以下の発言がありました。南海トラフ大地震を想定し、災害対応には積極的に取り組んできた。中核充填所以外の充填所も災害時は垣根を越えて協力し合う体制となっている。コロナ感染下で事業者としての訓練はできないが、先般消費者が実施したコロナ対応を前提とした避難所訓練に要請に応じて参加し、消費者のLPガスの扱いに立ち会い、指導を行った経緯がある。市に寄贈したLPガス機器、器具等が有効利用されているかチェックすることも今後の課題である。確認事項だが、災害バルク、GHP等の取替も補助金の対象となるのか。電気に変えようとする需要家がおり、せっかくのLPガス需要を失うことになる。(高知県 公文委員)。この確認要請にはエネ庁家田課長補佐から、取替の場合も補助金対象となるので活用願いたいとの回答がありました。平成25年に県協と県内24市町村で防災協定を結んでいる。来年7月予定で鳴門渦潮高校にGHP設置の準備が進んでいるが、一番の関心事であるランニングコストについての各市町村からの県協への問合せには必要な情報を公開している。(徳島県 中川委員)。避難所となりうる学校の体育館へのGHP導入等について県、市に働きかけている。四国四県での災害時の総合支援協定を結んで四国の業界全体で対応する体制をとっている。大災害の懸念のある高知、徳島両県には被災の際は愛媛、香川両県も協力して支援にあたる体制である。中核充填所は四国に20か所あり、ある程度の災害には十分対応できる。また県内では消費者と一緒になり訓練や勉強会等を実施しLPガス災害対応を啓蒙している。(香川県 赤松委員)。


(3)総括コメント
資源エネルギー庁 石油流通課 家田 和幸 課長補佐
 都市ガス、オール電化が自由化され消費者のエネルギーが多様化するなか、LPガスが選ばれるエネルギーとなるためには、透明化・適正化が重要課題であり消費者、業界と行政が一体となって対応することが求められ、このような懇談会は有意義である。コロナ感染下においては業界が安定供給に対応していただいていることに感謝する。災害時において、LPガスを利用した発電や空調が有効であることを知らない方が多い。消費者委員をはじめ各位には一般消費者にLPガスのメリットを発信するよう努めていただきたい。
              香川大学経済学部 古川 尚幸 教授
 LPガスは商品としての品質がどこでも同じであるため、料金のありかたが問題となる。事業者には引き続き透明化・適正化に努めていただきたい。コロナ感染はしばらく続くことが予想されるが、事業者には今しばらく辛抱して安定供給に尽力願いたい。またLPガスが災害に強いエネルギーであることを一般市民に発信していただき、LPガスの良さをさらにアピールしていただきたい。


(広報室/中村 雅彦)