LPGC WEB通信  Vol.80  2021.01.04発行 

九州・沖縄地方LPガス懇談会の概要

 本年度最終の地方懇談会となる九州・沖縄のLPガス懇談会(対象県:福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県)を、12月8日に開催しましたので概要を報告します。
 本年度の議事進行も、長期に亙り九州・沖縄地方LPガス懇談会で総括コメントをいただいている福岡大学商学部の笹川教授に併せてお願いしました。

LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  WEB会議
(3)テーマ ①料金透明化・取引適正化の現状について
       ②新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等について
       ③LPガスの災害対応能力について
(4)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       有識者委員…………知見を有するLPガス業界関係者等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部
       オブザーバー………LPガス業界関係者等
       報道関係……………業界紙等の記者


議事の概要
(1)開会挨拶
 九州経済産業局 資源エネルギー環境部 石丸 晃 次長
 九州では全世帯の約5割の326万世帯がLPガスを身近なエネルギーとして使用している。LPガスは供給体制が整備され、可搬性に優れ、貯蔵が容易であることから、災害発生時などの緊急時にも貢献できる分散型のクリーンなエネルギーである。他方、電力及びガスの小売り自由化により、消費者のエネルギー選択の幅が広がりLPガスをとりまく環境は大きく変化している。こうした中、LPガスが重要なエネルギーとして消費者から選ばれ続けるためには、保安はもとより価格の透明化の確保、新型コロナウイルス感染(以下「コロナ感染」という。)下においても消費者にとって魅力的なサービスを提供することが重要である。本懇談会では消費者、学識経験者、LPガス事業者(以下「事業者」という。)、行政が意見交換を行い、消費者ニーズを十分にくみ取ってLPガスの需要拡大に繋げていただきたい、と挨拶がありました。


(2)懇談
 議事進行:福岡大学商学部 笹川 洋平 教授
テーマⅠ.「LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について」
 消費者委員から以下のような発言がありました。ここ数年でLPガス価格(以下「料金」という。)の公表が進み、消費者には分かり易くなった。しかし、2点問題がある。ひとつは賃貸マンションの料金が非常に高いということを消費者から聞く。生活関連機器設備(以下「生活設備」という。)費用がガス代に上乗せされているとのことだ。これはおかしいシステムで、生活設備は家賃でカバーされるべきものと思う。もうひとつは、家がオール電化に変わる際、LPガス設備の撤収費用についてトラブルが発生していることだ。撤収の際の費用についてもきちんとした説明が必要だ。また、県内事業者の7割がホームページ(以下「HP」という。)を有していないが、若年消費者層のためにもぜひともHPによる料金公表率の向上を目指して欲しい。(福岡県 柴富委員)。県のLPガス世帯率は71%、全国12位と供給実績は上位で、LPガスへの理解度は高いと思う。事業者の情報提供や消費者への協力がこの結果につながっていると思う。資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)の事前プレゼンは、家庭用エネルギーの実態がよく分かり良かったと思う。料金透明化の問題については、相談事例を分析すると相変わらず消費者と事業者間での理解のズレがあり課題は残っている。(大分県 小野委員)。店頭表示やHPの活用で料金公表率が上がったというが、これには消費者が能動的に料金を見なければならない。問題は検針票や請求書での料金表示が徹底されているかという点である。また、生活設備費用の料金への転嫁は「優位的地位の乱用」ではないか、またそういった点を行政、自治体が監視、指導できていないという点も問題である。(沖縄県 東江委員)。2社の事業者からLPガスを買っているが、その2社の料金公表手段はそれぞれHPと店頭表示で異なっている。店頭まで料金を見に行くことはないので、料金の請求書に料金体系を明示して欲しい。またHPの表示の社では基本料金が1,250円~1,800円と幅があり、自分がもらった請求書では1,400円である。この辺のばらつきはどういう意味なのか分からない。(熊本県 田川委員)。
 これらの発言に対し事業者委員からは次のような回答がありました。事業者は料金表、検針票には基本料金、従量料金、場合によっては生活設備費用負担分を記載しており、概ね料金体系は分かるようになっていると思う。(沖縄県 島袋委員)。過去から県のLPガス協会(以下「県協」という。)として事業者に基本料金の算定根拠の構成(供給設備費用の負担分や保安費用等)について説明、指導してきた経緯がある。(宮崎県 森委員)。料金公表は全事業者がHPを利用することが理想だが、県内は小規模事業者が多く対応が難しい。県協としてもHPを立ち上げるよう依頼はしているがなかなか実現化しない。料金の内訳は検針伝票に明示するよう県協として徹底しているが、もし実施できていない事業者がいるようなら強く要請する。基本料金に幅があることについては、県協としては理解しがたい。ついては、消費者が直接基本料金の差の持つ意味を事業者に確認した上で、事業者を選択したらいいと思う。自由料金が原則なので県協として個別の料金問題に立入ることは遠慮したい。(熊本県 佐藤委員)。
 熊本県事業者佐藤委員の回答に対しては同県消費者田川委員から、基本料金の幅については先ず自ら事業者に直接問い合わせてみて、納得がいかないようであれば、改めて県協に相談するのでよろしくお願いしたい、とのコメントがありました。

 また、エネ庁橋爪企画官から消費者委員の発言を踏まえ、取引適正化に関し次のような説明がありました。生活設備費用をガス料金で負担するのは、かつて事業者側が営業行為の一環で始めた商慣行と聞いている。しかし、今は立場が逆転して集合住宅のオーナーや管理会社から要請されており、受けなければガスの納入を断られるので不本意ながら要請にしたがっているという状況だ。この商慣行は消費者のためにもならないので、先般国交省、公正取引委員会にも相談したところ。公正取引委員会は一般論での善悪の判断は行わず、あくまで個別具体的案件についてしか判断を下さない。したがって公正取引委員会が料金問題での方向づけを下すようなことはしない。国交省とは不動産業界がこのような商慣行を止められないかという議論を続けているが、他方LPガス業界もこの状況を終わりにする努力が必要で、不動産業界だけにこの商慣行を取りやめることを押し付けるのは無理があると思う。家主側が住宅賃貸契約時に家賃説明と共にLPガス料金も消費者に説明してくれればよいが、今そのような仕組みにはなっていない。この点は今の宅建法では強制はできないため、国交省は不動産業界と協力ベースでどこまでやれるか協議中である。また生活設備費用負担においても色々なケースがあるように、LPガス料金は一社ごとに違うということを消費者団体は消費者に発信していただきたい。

 次に、一昨年から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、九州経済産業局(資源エネルギー環境部 石油課 松枝課長補佐)から以下のような発表がありました。平成31年2月に九州・沖縄各県LPガス担当課と液石法規定の運用、立入検査の状況等について意見交換を行った。また、令和元年8月に各県協と液石法規定の運用、消費者相談等について意見交換を実施した。今年度はコロナ感染防止の観点からこれら連携活動をどうするか様子を見ているところである。また立入検査については、①液石法第14条書面にて料金の算定方法、供給設備の所有関係等について十分説明がなされているか、②液石法第16条に基づく販売方法の基準、契約解除後の設備撤去等の説明がされているか、③取引適正化ガイドラインに基づく標準的料金の公表、料金変更の際の事前通知等、の項目に関し対応に問題ないか検査を実施している。平成29年度から検査を開始し、対象26事業者のうち14事業への検査を実施、今年度は4事業者への検査を計画し2事業者への検査を終えた。指摘事項としては設備の所有関係や費用の精算が不明確な点が最も多い。


テーマⅡ.「新型コロナウイルス感染拡大下の状況、対応等について」
 コロナ感染下の状況に関し、事業者委員から次のような発言がありました。業務用(飲食店等)需要はかなり減少しているが、一般家庭用需要は増加しているという事業者も多い。県協として会員事業者にマスク、消毒・手洗いの励行、事務所の換気を指導している。県協の会議はWeb会議としている。社員に現金給付し、経営の苦しい顧客である飲食店を家族で利用し支援するといった事業者もある。また社員の昼食を取引先飲食店のテイクアウトで賄って支援する事業者もある。(鹿児島県 市田委員)。他県と同じく、マスク着用等必要な対応は実施している。顧客飲食店のテイクアウトを利用する呼びかけなど支援を講じている。(福岡県 和田委員)。他県と同様の感染防止対策の他に、料金支払いの遅延、滞納については柔軟に対応するよう事業者に周知、お願いをしている。(佐賀県 大塚委員)。民生用需要に対するコロナ感染の影響は比較的小さいが、業務用需要は大幅減となった。経営の苦しい業務用顧客に対する料金の減免や支払いの免除により顧客を支援した事業者もあると聞いている。消費者宅へは消費者の了解が得られるまで訪問しない。また訪問せず「予測検針」で請求し、翌月精算するという事業者もある。病院、福祉施設への配送・訪問は特に気を使い、できるだけ敷地内に入らないよう心掛けている事業者も多い。会社負担で全員にインフルエンザ予防接種を受けさせた事業者もある。(長崎県 荒木委員)。
 事業者のコロナ感染対応に対し、消費者委員から以下のような発言がありました。事業者には検温の実施も徹底してもらいたい。事業者が安全対策をきちんと実施し、そのことをしっかり消費者に宣言していただけば消費者も安心するし、配送上の問題は解消される。(鹿児島県 伊佐委員)。ボンベは屋外にあるのであまりコロナ感染の心配はないと思う。県内では予測検針といった手段は見かけず、配送、検針はうまくいっていると思う。(宮崎県 黒木委員)。検針は屋外で実施されるので消費者として心配はしていない。器具の取替の際はマスク着用で訪問されたので心配することはなかった。(佐賀県 東島委員)。他分野の事業者ではマスク非着用での訪問等コロナ感染対応が不十分なところが散見されたが、県のLPガス事業者はきちんとした対応ができており安心できる。(長崎県 楠富委員)。



テーマⅢ.「LPガスの災害対応能力について」
 事業者委員から次のような発言がありました。県内では近年水害、地震と大きな災害を経験した。直近の水害においては、浸水の激しい世帯ではLPガス供給体制の復旧には時間を要した。他方、床下浸水程度では現地事業者の安全点検の下、復旧は迅速に行われており、やはりLPガスは災害に強いと言える。熊本地震後はボンベチェーンの二重掛け、放出防止型高圧ホースの設置等進めているが、まだ100%行き渡っていない。チェーン二重掛けができておらず水害で流失したボンベもある。一般住宅へのチェーン二重掛けは今後県協として指導徹底する。また県協は卸売り業界と放出防止型高圧ホースしか使わないという協定も結んでおり、100%設置が見えてきている。(熊本県 佐藤委員)。県内7か所の中核充填所で順番に情報伝達訓練、稼働訓練を実施している。県内で初めて補助金による災害バルク及び関連するGHP、LPガス発電機の導入が実現した。今後さらなる導入を進めたい。(沖縄県
島袋委員)。5年ほど前から避難所となりうる小中学校に災害バルク及び関連する、GHP、発電機等の導入を進めている。今年の水害では5名が亡くなり、被災地も復旧途上ではあるが、各市町村で設置された避難所に空調設備を導入した。今年はコロナ感染のため県協としての防災訓練は中止したが、代わりに全事業者を対象に電話による連絡網の確認を2回実施した。次回は市町村も一緒になって官民一体の訓練ができればと思っている。(大分県 山田委員)。近年小中学校にかなり空調設備が導入されたが、電気仕様がほとんどである。LPガスの空調設備はイニシャルコストが高いが長期的には電気より割安だ。行政が設備の価格だけを問題視せず、ランニングコストも含めた総合的判断をしてくれればLPガスの空調設備はもっと増える。(長崎県 荒木委員)。
 これに対して消費者委員からは次のような発言がありました。災害時には、学校、避難所、医療現場、炊き出し等への充填所の対応能力強化が求められる。(大分 小野委員)。避難所では暑さがきつかったようで、LPガスによる空調設備の設置を働き掛けたい。(熊本県 田川委員)。災害バルクを評価しており、もっと多くの場所に導入して欲しい。そのためには設備価格がもっと安くなるよう改善を望みたい。(鹿児島県 伊佐委員)。


(3)総括コメント
資源エネルギー庁 資源燃料部 石油流通課 橋爪 優文 企画官
 本懇談会で今年度9地方全てが終了した。地方ごとにLPガスのとらえ方や受け止め方に温度差があると感じている。消費者とのコミュニケーションという点で、懇談会という”face to face”の場があることは良いことだ。議論のあったGHP等LPガス関連設備は受注生産と聞いており、価格が高い。もっと導入が進めば価格は安くなるのではないか。
 福岡大学 商学部 笹川 洋平 教授
 生活設備の費用負担やコロナ感染という問題に直面している状況下、業界内で多くを占める中小事業者の経営力の強化が求められる。LPガス業界が不良事業者の排除という形ではなく、優良事業者の業績を伸ばす方向に進めば、またそのための制度、施策が構築できれば、おのずから消費者の選択肢も好い方向に向かうのではないか。必要に応じた集約化等により、企業体質が強化されれば、不良事業者の付け入る余地はなくなると思う。また確信犯的な不良業者に対しては、行政からの監視、指導が望まれる。災害対応、例えば空調設備においてはGHPとEHPのお互いのメリットを引き出す、いわばエネルギー全体の中でのLPガスと他エネルギーとの「ベストミックス」を指向して欲しい


(広報室/中村 雅彦)