LPGC WEB通信  Vol.90  2021.11.10発行 

中部地方LPガス懇談会の概要
 去る10月7日に「中部地方LPガス懇談会」を開催しましたので、懇談会の概要を報告します。
本年度のテーマとして予め設定した、
①料金透明化・取引適正化の現状と対応
②災害対応の現状と課題
の各テーマについてそれぞれ資源エネルギー庁からのプレゼンテーションの後、テーマ毎に活発な意見交換が行われました。
本年度も、テーマに基づき自県を超えたエリア全域の共通課題に対し、他県の事例も参考としながら、従前にも増して議論が深まりました。
昨年度同様に新型コロナウイルスの感染防止策としてWEB会議による開催とし、資源エネルギー庁石油流通課および振興センター事務局のプレゼン内容を動画化し、事前に視聴頂きました。


LPガス懇談会について
(1)目的  LPガス取引適正化の観点から、LPガスの諸問題について、消費者団体、
       事業者団体、自治体、学識経験者等が一堂に会して意見交換・議論を行い、
       関係者相互間の理解を深めると共に、LPガス産業の健全な発展に資する。
(2)方法  全国9ヵ所の各経産局管内を対象にWEB会議にて開催する。
(3)参加者 消費者委員…………各都道府県消費者団体の幹部等
                調査・広報委員会消費者委員
       事業者委員…………各都道府県LPガス協会の幹部等
       学識経験者委員……知見を有する大学教授等
       自治体………………各都道府県のLPガス担当部署及び消費生活担当部署
       経済産業省…………経済産業省、地方経済産業局及び産業保安監督部


議事の概要
(1)開会挨拶
中部経済産業局 資源エネルギー環境部 燃料課課長補佐  石川 浩二
 現在経済産業省(以下「経産省」という。)で取りまとめ中の第6次エネルギー基本計画案では平時のみならず、緊急時においてもLPガスの供給体制の維持が必要とされている。またLPガス取引適正化のため、ホームページ(以下「HP」という。)等を利用したLPガスの標準料金の公表が求められている。これらは本懇談会のテーマに通ずるものがある。また近年の大型化、多発する災害への対応は行政喫緊の課題である。本懇談会での議論を課題対応への参考としたい。エネルギー自由化にともない、エネルギー間の競争が激化しているなか、今年6月にはLPガス業界団体向けに集合住宅のLPガス料金(以下「料金」という。)に関する取引適正化の要請がなされた。これらを踏まえ本懇談会では活発な意見交換をいただきたい。

(2)懇談
議事進行:名古屋工業大学大学院 社会工学専攻 教授 渡辺 研司

テーマⅠ:LPガスの料金透明化・取引適正化の現状について

 議事進行の渡辺教授から資源エネルギー庁(以下「エネ庁」という。)、エルピーガス振興センター(以下「振興センター」という。)の事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会林委員から次のような発言があった。
 2017年に料金透明化・適正化に向けてのガイドラインが制定された際、積み残しになっていた集合住宅の料金に関し、6月1日に経産省、国交省から関係団体に向け入居前の料金開示の要請が出されたことは誠に喜ばしい。消費者としてのLPガス事業者(以下「事業者」という。)の選択への道筋がついたと評価したい。他方、不動産業界は複雑で一筋縄ではいかない面があり、行政にはしっかり見守るだけではなく、一歩踏み込んだ対応が必要だと感じている。また事業者間での連携も必要だ。賃貸住宅入居後は料金選択ができないので、入居前の料金提示という制度は大切にしたい。また三部料金制による透明性の確保もお願いしたい。標準料金公表は進んでいるが複雑な料金体系をなんとかしないと公表している意味がなく、改善を求めたい。ブローカーを使った一時的に安価な料金提示、だれが供給事業者か分からないような勧誘は謹んで欲しい。料金には物流、保安等の費用も含まれており、この点を事業者は消費者に丁寧に説明することが必要だ。また競争の少ない地域での料金の高止まりにも注意願いたい。LPガス事業のデジタル化は時代の流れであるがWebに取り残された高齢者には優しい対応が望まれる。

 消費者委員から以下のような発言があった。
 料金の不透明さは感じない。料金表、請求書の計算等も詳細にわたっており問題はない。(岐阜県 三輪委員)。料金の相談事例は少ないが、時折値上げ時に通知がないという相談がある。事業者から消費者(入居者)ではなく大家にしか通知がない点が問題だと思う。(三重県 山本委員)。個人的には料金は高いとは感じない。集合住宅の生活設備費用を事業者が負担するというのはおかしな話だ。事業者団体で相互に事業者を守ることも必要ではないか。(富山県 原委員)。無償貸与は構造的な問題だと思う。事業者が料金転嫁できないと板挟み状態で、事業者への構造的パワハラという印象だ。業者間の問題として見直して欲しい。契約時の説明が不十分という点がアンケートでも一定数あったが、これはトラブルの温床となりかねない。賃貸住宅入居時の重要事項説明で料金説明ができたら良いと思う。(石川県 青海委員)。高齢者への料金に関する分かりやすい説明が求められる。説明責任を果たすだけではなく、どのように説明するかという工夫が重要だ。集合住宅の生活設備費用の負担度合で事業者を選ぶ住宅オーナーがいる。事業者を守るため、事業者間の連携や、事業者団体の対応が必要と思う。(愛知県 吉田委員)。

 事業者委員からは次のような発言があった。
 料金公表は県内では92.9%が実行できており、事業者側としてはほとんど全てが料金公表に努力している。経費の多くを占める物流費、人件費、最近では顧客サービスのためのIT関連費用を安易に料金に上乗せできず、企業努力に依存していることを理解して欲しいし、事業者は料金が適正であることをしっかり説明しなくてはならない。また、事業者はデジタル化によってコロナ下でも消費者の在庫状況、検針、料金徴収等利便性の向上に努めている。ただし、業務のデジタル化は望ましいが、企業体力のない事業者には負担となるため、行政からの補助とか適切な支援を検討願いたい。(愛知県 後藤委員)。
 HPによる料金公表が進んでいない。また他業者の侵略を怖がって料金公表に消極的な事業者もある。世帯数が減るなか、事業者の安定経営のための顧客の取り合いや過大投資が出てくるのが実態だ。しかし集合住宅の料金入居前事前公表が進めば過大投資は抑制されるだろう。だだし今年のように料金が二度三度と上がる度に料金表を変えていくと不動産業者もついて行けない。したがって集合住宅料金はHPに記載し消費者自ら確認できる形が望ましい。また、将来は三部料金制で分かりやすくしないと消費者は納得しないだろう。(岐阜県 澤田委員)。
 無償貸与問題では何ケースかある。即ち、新築の戸建てと集合住宅の問題、ブローカーによる切替えの問題、新築後の集合住宅の切替え問題等であり、これらに関し生活設備費用負担が行われる。無償貸与には事業者が提案する場合と、住宅オーナー側が事業者に無理強いする場合がある。最近は住宅管理会社が無償貸与を餌に管理業務を取りにくるケースもある。消費者は集合住宅入居時は料金形態を無償貸与の部分も含め必ず確認すべきだ。事業者が無償貸与をテコに顧客を取りあうのは業界モラルの問題だ。実態としては地方の事業者に無償貸与を乱発する力はなく、そうするのは県外の事業者でブローカーが使われるケースが多い。集合住宅の料金適正化については、極論かもしれないが、一定規模以上の事業者には一定条件で無償貸与の実情に関し報告義務を課すことが必要ではないかと国に提案したい。料金については原料費調整制度による輸入価格や、石油情報センターの発表する料金にリンクした価格提示で料金透明化を図る事業者もある。(三重県 中井委員)。
 県内の事業者の料金公表はほぼ全事業者で実施しているがHP の活用は27%と進んでいない。都市ガスとLPガスで料金が違うという消費者の声があったが、カロリーが違うこと配送形態の違いがあること等の相違がある点を消費者にしっかり説明しなければならない。残念ながらLPガスは都市ガスより高いが、それに見合うサービスを含んでいることを理解願いたい。集合住宅問題では不動産業界側に決定権があるため、事業者は弱く過剰投資に陥りがちである。不動産業界とLPガス業界が対等な立場で落としどころを見出す必要がある。(富山県 東狐委員)。
 顧客数300軒未満の中小事業者が半分近くあり、HP の活用が進んでいない。IT化には消費者目線で業界として努力する必要がある。無償貸与は全事業者がそれを止めればなくなる問題だが、中々それができず悩んでいる状況だ。料金が下がらないと他のエネルギーとの競争には勝てず、業界としても真剣に取り組むべき。(石川県 山本委員)。

 続いて、3年前から全国展開されている総務省行政評価局のLPガス取引適正化調査による、経済産業局と自治体、事業者の連携の必要性に関し、中部経済産業局(資源・エネルギー環境部 燃料課 伊藤係長)から以下のような発表があった。
直近コロナの影響で立入検査等諸活動が行いづらい環境である。今年度下期には3件の立入検査を予定、料金透明化等の指導を行いたい。6月1日にあった集合住宅の料金問題に関する国からの要請も随時説明し一歩ずつ透明化、適正化を進めたい。直近消費者からのLPガスに関する問合せ、相談等はほとんどなく事業者の対応努力が窺われる。

 テーマ1の議論に関しエネ庁吉野課長補佐から次のようなコメントがあった。地方ではLPガスを使うのが当たり前であり、料金問題への意識は少ない感じる。最近は検針や料金徴取のデジタル化について卸事業者等からの相談を受けるケースがある。その際、デジタル化への切替に関しては時期等も含め消費者目線での対応、周知が必要と説明している。集合住宅の問題は消費者委員ご指摘のとおり構造上の問題である。不動産業者・LPガス事業者がウイン・ウインの関係となるべく進んでいるようだが、ここに消費者の立場が蔑ろにされてはならない。事業者委員からは市場の生々しい状況を説明いただき非常に参考になった。無償貸与の状況に報告義務を課すという事業者の提案があった。現状ややハードルは高いと思うが、実態はどうかという調査は必要だと思う。振興センターアンケートにある集合住宅関連設問の回答状況も見ながら、また国交省とも継続協議しつつ検討を進めたい。経済産業局の立入検査においては、6月1日以降集合住宅の事前料金公表を具体的にどのように進めているか、ヒアリングいただき可能ならフィードバック願いたい。


テーマⅡ.「LPガスの災害対応能力について」

 渡辺教授からエネ庁、振興センターの事前プレゼンに関する要約説明があった後、調査・広報委員会消費者委員の林委員から以下コメントがあった。
自然災害が増えているが。都市ガス地域にもLPガスのボンベを置くことも必要で、事業者には消費者に対するLPガス災害対応に関する知識や有効性の啓蒙も求められる。災害訓練時にも消費者への情報共有を進めていただきたい。

本 テーマに関し参加委員から以下の発言があった。
 防災協定はほとんどの自治体で締結されている。防災訓練時にLPガスの災害対応能力を消費者に見せることは大きなPRとなる。コロナ下で訓練が出来ないときは画像やアニメで見せるなど工夫も必要だ。また災害バルク、学校の体育館へのGHPの導入を積極的にはたらきかけている。(愛知県事業者 後藤委員)。
 北陸は比較的災害が少ないとされているが、第4地区の中で太平洋側を含め災害が発生すればいつでも支援できる体制をとっている。北陸は雪に弱いという弱点があり、今年も中核充填所への供給不安が発生した。県には中核充填所につながる道路への優先除雪を要請しLPガスの供給確保に努めている。(富山県事業者 東狐委員)。
 災害時の避難所は学校が多い。教育委員会はなかなかハードルの高い組織だ。国からはたらきかけて学校への災害対応設備導入を進めてもらいたい。都市ガスエリアこそLPガス災害対応設備の導入というのは賛同できる。FRP容器が各家庭にあると災害時に安心なのでキャンプブームに乗せてPR願いたい。(石川県消費者 青海委員)。
 行政と事業者の連携による災害時の支援体制の充実が望まれる。他方、FRP容器の実用化推進が望まれる。容器と関連機器をセットにして災害時でも一週間程度使えるような体制を早急に整えて欲しい。またそのような姿をPRすればLPガスの理解につながる。(愛知県消費者 吉田委員)。キャンプの際に非常時災害時の料理の紹介等お願いしたい。(岐阜県消費者 三輪委員)。県LPガス協会として炊き出しセット等災害対応設備を貸与し、災害訓練時も含め利用している。今年は中核充填所のZOOMによる同時災害訓練を実施した。高齢者対策としては職員に認知症のサポーター教育を受け、安否確認や災害時対応に役立てるようにしている。これは都市ガス,電気事業ではできない対応だ。(三重県事業者 中井委員)。



 懇談会の議論全体を踏まえ渡部教授が以下総括し、懇談会をしめくくった。
料金透明化は進んでいると思うが、HP活用はまだ不十分のようだ。ただし、やみくもにHPを立ち上げるのではなく、分かりやすい説明、料金の正当性、料金の変更等が消費者に正しく伝わらなけばならない。6月1日の要請については関係者、団体の連携や前向きな取組みがなお必要と感じる。外部からのLPガス市場への乱入には消費者保護の観点から行政の指導、事業者の監視が求められる。
 LPガスの災害対応については、まだ消費者にLPガスの良さが理解されていなようなので訓練等で実際に使ってみる機会を作ることが重要だ。都市ガス、電気との違いを子供たちにも分かってもらい、将来LPガスを選んでもらえるような環境づくりが求められる。


              
(広報室/中村)